銀行融資が断られた社長の奮闘記～ファクタリングで切り抜けた体験談～

「まさか、うちが融資を断られるなんて…」
2023年春、私の携帯に一本の電話が入りました。
受話器の向こうで震える声を発していたのは、都内で製造業を営むA社長（52歳）です。

創業15年、従業員20名。
これまで堅実に経営を続けてきたA社でしたが、コロナ禍以降の需要減と原材料価格の高騰により、2期連続で赤字転落。
直近の決算では営業利益がマイナス1,200万円となり、自己資本比率もわずか8%。追い打ちをかけるように、税金の分納中という状況でした。

そのような中、A社長は資金繰りの立て直しを図るべく、メインバンクに追加融資を申し込んだのですが——結果は「否」。
銀行からの融資を前提に、すでに仕入れや給与支払いの手配を進めていたため、資金ショートの危機が目前に迫っていたのです。

🔍 ファクタリングとは？
売掛債権（まだ回収していない請求書）を第三者に譲渡して資金化する仕組み。
早ければ即日、現金化できるスピード感が特徴です。

今回ご紹介するのは、まさにその「ファクタリング」を駆使して、資金ショートの危機を乗り越え、見事に黒字転換を果たしたA社長の実話です。
ファクタリングというと「最後の手段」「危ない資金調達」といったネガティブな印象を持つ方も多いかもしれませんが、使い方次第では企業の命をつなぐ“合理的な選択肢”になり得ます。

この体験談では、以下のような点を具体的に解説していきます。

• 銀行が融資を断る「本当の理由」
• ファクタリングを選ぶ判断軸
• 審査通過のために準備すべき書類や注意点
• 資金調達後のキャッシュフロー改善プロセス
• ファクタリングからの「卒業」方法と金融機関への再チャレンジ

私はこの出来事を通じて、資金繰りに悩む中小企業経営者の皆さんに、「絶望的に見える状況にも、突破口は必ずある」ということを改めて確信しました。

どんなに資金繰りが厳しくとも、適切な選択と行動があれば道は開けます。
それでは、A社長の奮闘記を、コンサルタントの立場から追っていきましょう。

🛡️この記事の監修者（運営会社・税理士による共同監修）

融資を断られた日～社長の苦悩と決断～

なぜ銀行は融資を断ったのか

「御社へのご融資は、今回は見送りとさせていただきます」
メインバンクの担当者からのこの一言が、A社長の希望を打ち砕きました。

一見すると、売上もあり、業歴も長いA社がなぜ融資を断られたのか。不思議に思われるかもしれません。
しかし、元銀行員の私の目には、その理由がはっきりと見えていました。

🔍 銀行がA社への融資を断った主な理由は、以下の3点が複合していたためです。

• 2期連続の赤字決算
  ┗ 売上高は3億円→2.4億円へと減少。営業利益は▲1,200万円にまで悪化。
• 債務超過寸前の財務状況
  ┗ 自己資本比率は8%まで低下。銀行から見ると「体力不足」と判断される水準。
• 税金の分納中
  ┗ 法人税や消費税の支払いが滞り、税務署との分納協議を継続していた。

銀行の審査では、「総合的な判断」という曖昧な理由が用いられることがありますが、実際はこれらの数字が強く影響しています。

特に金融庁の監督下にある都市銀行では、「債務者区分（資産査定区分）」に基づいた厳格なルールがあり、2期赤字＋税金滞納の企業に対して追加融資を出すのは、自己査定上ほぼ不可能です。

「今まで付き合いがあったのに、どうして…」とA社長は嘆いていましたが、銀行側にも監査・検査のプレッシャーがあります。
冷たいようですが、融資が実行できる“ルールの枠内”でしか動けないのが現実なのです。

資金ショートまでのカウントダウン

融資が断られたとき、A社には支払い期限まであと10日しか残されていませんでした。

必要資金は800万円。
翌月末には売掛金1,500万円の入金が予定されていたものの、それでは間に合わない。

• 従業員20名の給与支払い：360万円
• 主要仕入先への支払い：440万円

A社長は、どちらを優先すべきか頭を抱えました。

給与を払えなければ従業員は離れてしまう。
仕入れが止まれば、翌月以降の売上が立たない。
いずれにせよ、資金ショートが現実となれば、会社の信頼は地に落ちてしまいます。

電話口の向こうでA社長はこう漏らしました。
「このままじゃ、うち潰れるかもしれない…でも、社員の生活を守らなきゃならないんです」

私はその言葉に、銀行時代に見てきた中小企業の経営者たちの姿が重なりました。
資金繰りに悩み、眠れぬ夜を過ごす経営者たちは、皆同じように「誰かを守る責任」に押しつぶされそうになっていました。

私の役目は、そんな経営者に“もう一度立ち上がる方法”を示すこと。
A社長に提案したのが、ファクタリングという資金調達手法でした。

ファクタリングという選択～最後の希望～

ファクタリングを提案した理由

資金繰りの打開策を模索する中で、私がA社長に真っ先に提案したのがファクタリングでした。

「ファクタリングって、何ですか？」と首を傾げるA社長に、私はこう伝えました。
「売掛金を早めに現金化する方法です。融資ではなく“資産の売却”なので、審査基準もまったく異なります」

A社には、翌月末に1,500万円の売掛金が入ってくる予定がありました。
しかもその取引先は、誰もが知る東証プライム上場企業。つまり、“売掛先の信用力”が非常に高いという強みを持っていたのです。

💡 私がファクタリングを勧めた3つの理由

• ① 売掛先の信用力重視なので、A社の赤字や分納中の税金は大きな障害にならない
  銀行と違い、ファクタリング会社は「回収できるかどうか」で判断します。
• ② 最短即日～3営業日で資金化可能
  今すぐ現金が必要だったA社にとって、スピードは最重要ポイントでした。
• ③ 売掛金全額でなく、一部（800万円分）だけの買取も可能
  必要な金額だけ現金化し、残りの債権はそのままにしておく柔軟な対応が可能でした。

「確かに、売掛金はあるけど、それを使えるとは思っていなかった…」と、A社長の顔に一筋の希望が差しました。

もちろん、ファクタリングには手数料というコストがかかります。2社間契約の場合は、相場で5〜20%。
しかし、倒産リスクを考えれば、10%程度の手数料で資金が確保できるなら、十分に価値はあると私は判断しました。

初めてのファクタリング申込み

A社長にとって、ファクタリングはまったく未知の世界でした。
「どの会社に頼めばいいんですか？」という質問に応えるべく、私は信頼できる数社をピックアップし、A社長とともにリストアップ・比較検討を行いました。

🔍 問い合わせを行った3社の比較（実際の事例に基づく／※プライバシー保護のため社名は伏せています）

会社名	手数料率	審査時間	特徴
A社	8%	即日対応	電話対応がやや雑。契約書の説明不足
B社	10%	翌営業日	対応が丁寧。2社間ファクタリングに強み
C社	12%	2営業日	担当者がやや押し売り気味。条件変更多し

また、Web検索の口コミをもとに、悪質業者の典型的な特徴もA社長に共有しました。

⚠️ 要注意なファクタリング業者の特徴

• 手数料が20%以上と極端に高い
• 重要事項説明や契約書の提示がない
• 登記簿上の所在地と実態が異なる
• 「絶対に審査通る」と断言する

「会社の命運がかかってるから、ちゃんとした会社に頼みたいです」
その想いを汲み取り、最終的に選んだのは、手数料10%で誠実な対応をしてくれたB社。
2社間ファクタリング形式を採用しており、売掛先への通知は不要な点も決め手となりました。

審査から入金まで～緊張の48時間～

必要書類の準備と提出

ファクタリング会社との契約に向けて、まずA社が取り組んだのは必要書類の準備でした。
銀行融資と違い、担保や保証人は不要ですが、その分「売掛債権の確実性」を証明する書類が必要になります。

📄 今回提出した主な書類一覧

• 該当の売掛金に関する請求書
• 取引先との基本契約書
• 過去3か月分の通帳コピー
• 直近2期分の決算書
• 納税証明書（その1）

A社長が特に苦労したのは、「基本契約書」の部分でした。
取引先との契約書が10年以上前の書式のままで、ファクタリング会社側から「有効性が判断しにくい」と指摘を受けたのです。

私は、「最低限、日付と取引条件が記載された最新版を締結しておいた方が今後も安心ですよ」と助言し、急遽、先方と連絡をとって覚書を取り交わしていただきました。

また、納税証明書の取得についても、税務署に直接足を運んでもらう必要があり、「すぐ発行されると思っていたが、即日対応してくれたのは運が良かった」とA社長。

💡 書類準備のポイント

• 「売掛金の発生が正当か」「支払い予定が現実的か」を証明するものが重視されます
• 書類の不備があると、審査が後ろ倒しになることが多いため、チェックリストを使って1つずつ確認しましょう
• 古い契約書は、相手方と連絡をとって内容確認・更新する姿勢が大切です

ファクタリングはスピード勝負とはいえ、適当に書類を揃えるとかえって時間をロスする。
だからこそ、「最初の段階で書類の質を担保する」ことが、審査通過の近道になるのです。

審査通過の瞬間

必要書類を提出してから24時間。
B社の担当者から、私とA社長に「審査通過」の連絡が入りました。

「やった…本当に、これで会社が救われるかもしれない」
A社長の声には、ほっとしたような、涙を堪えるような響きがありました。

審査通過後、すぐに契約書をオンライン上で締結。
その翌日、指定口座に720万円の入金があったのです。

🔢 今回の取引条件（2社間ファクタリング）

• 売掛金：800万円（東証プライム企業宛の請求書）
• 手数料：10%（80万円）
• 実入金額：720万円

「手数料10%って高くないですか？」と聞かれることもあります。

銀行は“信用の蓄積”が求められる一方、ファクタリングは“今ある資産（＝売掛金）を即座に現金化する手段”。
A社にとっては、選択肢が限られた中で最も合理的な方法だったと、私は今でも断言できます。

A社長はすぐに給与振込を済ませ、仕入先にも一部支払いを実行。
「取引先から“ちゃんとしてるね”って言われたんですよ」と、少し照れくさそうに笑っていたのが印象的でした。

ファクタリング活用後の変化

資金繰りの改善プロセス

ファクタリングで確保した720万円。
この資金によって、A社は目前の資金ショートを回避することができました。

資金の使途内訳（初回利用時）

• 給与支払い（20名分）：360万円
• 仕入先への一部支払い：360万円
  　┗ 取引継続のため、主要仕入先3社に分散して支払い

危機は脱したとはいえ、もちろんこれで終わりではありません。
A社長と私は、この先3か月のキャッシュフロー予測表を作成し、計画的な資金繰りの立て直しに取りかかりました。

取り組んだ改善策

• 既存顧客への深耕営業で追加受注を確保（+月300万円）
• 高コスト仕入れの見直しによる原価率3%削減
• 2回目以降のファクタリング利用は、手数料を交渉して9%→8%に低下

A社は、その後も2回目・3回目と、段階的にファクタリングを活用。
ただし、無計画な多用にならないよう、毎月の「必要資金」だけを見極めて売掛債権を一部売却する方針を徹底しました。

以下は、当時作成した資金繰り表の簡易版です。

📊 資金繰りサマリー（利用初月〜3か月後）

月次	売上高	ファクタリング利用額	資金繰り残高
1ヶ月目（4月）	2,400万円	800万円（10%手数料）	▲50万円
2ヶ月目（5月）	2,700万円	600万円（9%手数料）	＋120万円
3ヶ月目（6月）	3,000万円	400万円（8%手数料）	＋280万円

このように、月を追うごとにファクタリング依存度を下げつつ、売上増とコスト削減でキャッシュフローを改善することができたのです。

「最初は“資金繰り表って何？”という状態だったけど、今は数字を見るのが楽しくなってきました」
そう語るA社長の顔には、明らかに自信が戻っていました。

ファクタリング卒業への道のり

そして迎えたファクタリング利用開始から6か月後。
A社はついに単月黒字化を達成。その成果をもとに、日本政策金融公庫に対してセーフティネット貸付を申請し、500万円の低利融資（年利1.2%）を獲得することに成功しました。

💡 セーフティネット貸付を受けられた要因

• ファクタリングによって支払い遅延を回避し、「信用」を維持していたこと
• 売上増加と黒字化という、再建計画の実行結果を提示できたこと
• 私と一緒に作成した資金繰り計画書・損益予測の完成度が高かったこと

この低金利融資の実行により、A社はファクタリングから「卒業」し、再び正規の金融支援を受けるステージに戻ることができました。

💬 A社長の言葉
「高い手数料はたしかに負担でしたが、“会社をつぶさない”という目標を達成できた。何より、再び銀行と対等に話せるようになったのが嬉しいです」

ファクタリングは“つなぎ”であって“ゴール”ではありません。
ただし、その「つなぎ」をうまく使えるかどうかが、会社の命運を分けるのです。

よくある質問（FAQ）

ここでは、実際にA社長の事例を共有した際によく聞かれる質問と、それに対する私の回答をまとめました。
ファクタリングを検討している経営者の皆さまにとって、判断材料になれば幸いです。

Q: 銀行に融資を断られたら、すぐファクタリングを使うべきですか？

A: いいえ、「すぐファクタリングを使う」のではなく、まず融資を断られた理由を明確にすることが先決です。

例えば、税金や社会保険の滞納があった場合、それを分納計画で整理することで再申請が可能になるケースもあります。
また、赤字であっても、今後の事業計画を具体化し、改善見込みを示すことで公庫や保証協会付き融資が通る例も少なくありません。

ファクタリングは“緊急時の手段”として非常に有効ですが、手数料が高い分、計画的に使わなければ資金繰りを逆に悪化させる恐れがあります。
あくまでも他の選択肢を検討した上での「最終カード」として活用することをおすすめします。

Q: ファクタリングの手数料10%は妥当ですか？

A: 2社間ファクタリングの手数料としては、相場の中間程度（やや良心的）です。

🔍 参考：2024～2025年の手数料相場

• 2社間ファクタリング：5～20%
• 3社間ファクタリング：2～9%（売掛先への通知・承諾が必要）

ただし、年利換算すると120%に相当します。長期利用には向いていません。
A社長も「6か月で卒業する」計画を立て、結果的に日本政策金融公庫の融資へと移行しました。

重要なのは、「一時しのぎ」ではなく、出口戦略を描いたうえで利用することです。

Q: 売掛先にファクタリング利用がバレることはありませんか？

A: 2社間ファクタリングであれば、原則として売掛先への通知は不要です。

A社長の場合も、取引先との関係に影響を与えることなく、資金調達が可能でした。
ただし、3社間ファクタリング（売掛先から直接支払う方式）を選ぶと、通知および承諾が必要になりますが、その分手数料は低く抑えられます。

💡 取引先との関係を重視する場合は、2社間ファクタリングが基本。
手数料とのトレードオフをどう取るかがポイントです。

Q: ファクタリング会社はどう選べばいいですか？

A: 単に「手数料が安い」だけではなく、契約内容の透明性と担当者の信頼性が大きな判断材料になります。

🔍 良いファクタリング会社のチェックポイント

• 重要事項説明書や契約書の提示が明確である
• 登記簿に法人登記がある（住所・代表者名など）
• 担当者が“調子が良すぎない”説明をしてくれる
• Webサイトに会社概要・手数料体系・相談窓口が明記されている

A社長も、3社の担当者と直接やり取りした上で、「一番誠実だった会社」に依頼しました。
口コミは参考になりますが、最後は“自分で問い合わせて判断する”のが一番確実です。

Q: ファクタリング後、銀行との関係は大丈夫ですか？

A: はい、ファクタリングは合法的な資金調達手段なので、原則として銀行との関係に問題はありません。

ただし、決算書に「売掛金の減少」が表れた際、銀行側から説明を求められる可能性があります。
A社長の場合も、後日メインバンクに対し経緯を説明したところ、担当者から「それなら仕方ないですね。再建努力は評価します」と理解を得られました。

💬 ポイントは、「隠さず、正直に伝える」こと。
銀行はリスクを嫌いますが、“努力する姿勢”には理解を示すものです。

まとめ

銀行融資を断られた——。
それは中小企業の経営者にとって、大きなショックと不安をもたらします。
A社長も例外ではありませんでした。
2期連続の赤字決算、債務超過寸前の財務状況、税金の分納。
あらゆる要因が重なり、メインバンクから融資を断られたとき、目の前には「資金ショート」という崖が口を開けて待っていたのです。

しかし、そこで選んだのがファクタリングという道でした。

確かに、手数料10%（＝80万円）は決して安い金額ではありません。
それでも、わずか48時間で720万円を調達できたことにより、

• 従業員20名の給与を守ることができた
• 取引先への支払いを滞らせず、信頼を維持できた
• 企業としての信用を失わず、将来の融資再開につなげられた

という、何ものにも代えがたい価値を得ることができたのです。

その後、A社は地道に売上の回復と原価改善に取り組みながら、ファクタリング依存を減らし、6か月で黒字転換。
ついには、日本政策金融公庫から低利融資（年1.2%）を獲得し、ファクタリングを卒業しました。

資金繰りの危機は、決して「終わり」ではありません。
正しい情報をもとに、現実的な選択肢を見極め、計画的に実行すれば、そこから再起を図ることは必ず可能です。

ファクタリングは魔法ではありませんが、「時間を買う」手段として有効です。
そしてその“時間”をどう活かすかが、経営者としての真価を問われる瞬間だと、私は思います。

もし今、融資を断られてお困りの方がいらっしゃれば、
「まだ道はある」と自分に言い聞かせてください。
そして、できれば専門家に相談してください。