2025年度のIT導入補助金は、デジタル化を進める中小企業や個人事業主にとって大きなチャンスです。
しかし、申請手続きの複雑さや採択されるかどうかの不安から、踏み出せずにいる経営者も少なくありません。
私は銀行員として、またコンサルタントとして多くの中小企業の資金調達をサポートしてきました。
その経験から言えるのは、補助金申請は「戦略」が重要だということ。
本記事では、2025年版IT導入補助金の最新情報と、私が実際に支援してきた企業の事例を基に、採択率を高める具体的な3つの秘訣をお伝えします。
この記事を読めば、IT導入補助金の仕組みを理解し、自社に最適な申請戦略を立てられるようになるでしょう。
あなたの会社も、この機会を活用して業務効率化やデジタル競争力の強化を実現しませんか?

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IT導入補助金2025の概要と変更点
IT導入補助金とは何か
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等のITツール導入を支援するための国の制度です。
簡単に言えば、会計ソフトやCRM、ECサイト構築ツールなどのITツールを導入する際に、その費用の一部を国が負担してくれる制度です。
「デジタル化で生産性を上げたいけれど、コストが心配…」という経営者の背中を押してくれる心強い味方と言えるでしょう。
私が銀行時代に融資審査をしていた際、ITツールをうまく活用している企業とそうでない企業では、財務状況に明らかな差がありました。
特に資金繰りの可視化や業務効率化において、その差は歴然としていたのです。
2025年度の予算規模は前年度と同様に約500億円が見込まれており、多くの中小企業がこの制度を活用できるチャンスがあります。
2025年版の主な変更点
2025年版のIT導入補助金には、いくつかの重要な変更点があります。
これらの変更点を理解し、自社に有利な申請戦略を立てることが重要です。
2025年版IT導入補助金の主な変更点
- セキュリティ対策推進枠の補助上限額:100万円→150万円に引き上げ
- 小規模事業者の補助率:1/2→2/3に引き上げ
- 最低賃金+50円以内の従業員を30%以上雇用する事業者の補助率:1/2→2/3に引き上げ
特に注目すべきは、小規模事業者への補助率の引き上げです。
これは政府が小規模事業者のデジタル化を強く後押ししたいという意図の表れでしょう。
私がコンサルタントとして支援してきた小規模事業者の多くは、「ITツールは必要だと思うけれど、初期投資が重荷」と感じていました。
補助率が2/3になることで、例えば150万円のITツール導入なら自己負担は50万円で済むようになります。
これは大きな変化です。
また、セキュリティ対策推進枠の補助上限額が150万円に引き上げられたことも見逃せません。
昨今のサイバー攻撃の増加を考えると、セキュリティ対策は後回しにできない課題です。
この枠を活用して、セキュリティ強化と業務効率化を同時に実現できる可能性が広がりました。
あなたの会社は、これらの変更点をどのように活用できるでしょうか?
申請スケジュールと重要な期限
2025年のIT導入補助金申請スケジュールを把握し、計画的に準備を進めることが重要です。
項目 | 日程 | 備考 |
---|---|---|
申請受付開始 | 2025年3月31日(予定) | 公式発表を要確認 |
第1次締切 | 2025年5月中旬(予定) | 早期申請がおすすめ |
第2次締切 | 2025年7月下旬(予定) | 予算状況による |
第3次締切 | 2025年9月下旬(予定) | 最終締切の可能性あり |
交付決定 | 各締切から約1〜2ヶ月後 | 審査状況により変動 |
私の経験上、早めの申請が採択率アップにつながる傾向があります。
特に第1次締切での申請は、予算に余裕がある段階での審査となるため、比較的採択されやすいと言えるでしょう。

「でも準備が間に合わない…」と焦る必要はありません。しかし、今からできる準備はしておくべきです。
例えば、後述するgBizIDの取得は今すぐにでも始められます。
私が支援した飲食店経営者のAさんは、前年度の申請で「もう少し早く準備を始めていれば…」と悔やんでいました。
今年こそはと、1月から準備を始め、第1次締切に余裕を持って申請できる見込みです。
あなたも、今日から準備を始めてみませんか?
申請前の準備:採択率を高める下準備
自社の課題とITツール導入の目的を明確化
IT導入補助金の申請で最も重要なのは、「なぜそのITツールが必要なのか」を明確に説明できることです。
私が銀行時代に融資審査をしていた際、「他社も導入しているから」という理由でITツール導入を検討している企業の多くは、導入後に十分な効果を得られていませんでした。
一方、「この業務の非効率を解消したい」という明確な目的を持っていた企業は、導入後に大きな成果を上げていたのです。
自社の課題を明確化するための3つのステップ
- 現状の業務フローを図式化し、ボトルネックを特定する
- そのボトルネックが原因で発生している具体的な損失(時間・コスト)を数値化する
- ITツール導入によって改善される具体的な効果を予測し、数値目標を設定する
例えば、私がコンサルティングした製造業のB社では、受発注管理に月80時間を費やしていました。
これをクラウド型の受発注システムの導入により40時間に削減できると試算。
「月40時間の工数削減」という具体的な数値目標を申請書に記載したところ、見事に採択されました。
あなたの会社では、どのような業務課題がありますか?
その課題解決のために、どのようなITツールが必要ですか?
そして、導入によってどのような効果が期待できますか?
これらを具体的な数字で表現できると、申請書の説得力が大幅に高まります。
gBizIDの取得と事前準備
IT導入補助金の申請には、gBizID(ジービズアイディー)というアカウントが必須です。
これは、政府が提供する企業向けの共通認証システムで、様々な行政手続きに利用できます。
gBizIDには「プライム」「メンバー」「エントリー」の3種類がありますが、IT導入補助金の申請には「プライム」アカウントが必要です。



gBizIDプライムアカウントの取得には約2週間かかります。申請直前になって慌てないよう、今すぐに手続きを始めることをお勧めします。
gBizIDプライム取得の手順は以下の通りです。
- gBizIDのウェブサイトにアクセスし、「新規登録」をクリック
- 必要事項を入力し、利用規約に同意して仮登録
- 登録したメールアドレスに届く「仮登録完了のお知らせ」のリンクをクリック
- 本登録に必要な書類(印鑑証明書など)を準備
- 必要書類を郵送
- 審査完了後、アカウント情報が郵送で届く
私がサポートした小売業のC社では、gBizIDの取得に予想以上に時間がかかり、申請締切に間に合わなかったケースがありました。早めの準備が本当に重要です。
また、gBizID以外にも以下の書類を事前に準備しておくと安心です。
- 法人の場合:
- 確定申告書
- 法人事業概況説明書
- 法人番号確認書類
- 個人事業主の場合:
- 確定申告書
- 青色申告決算書または収支内訳書
- 身分証明書
- 納税証明書
あなたは、これらの書類をすぐに用意できますか?今一度確認してみてください。
最適なIT導入支援事業者の選び方
IT導入補助金の申請には、必ずIT導入支援事業者を通じて行う必要があります。
この事業者選びが、採択率を左右する重要なポイントとなります。
IT導入支援事業者とは、経済産業省に認定された事業者で、ITツールの提供と補助金申請のサポートを行います。
単なるITベンダーではなく、補助金申請のプロフェッショナルでもあるのです。
IT導入支援事業者を選ぶ際は、「安さ」だけで判断せず、「採択実績」と「サポート体制」を重視しましょう。安くても採択されなければ意味がありません。
IT導入支援事業者を選ぶ際のチェックポイントは以下の通りです。
🔍 過去の採択実績
- 前年度の採択件数と採択率
- 自社と同業種・同規模の企業の支援実績
🔍 サポート体制
- 申請書作成のサポート内容
- 導入後のフォロー体制
- 担当者の専門知識と対応の丁寧さ
🔍 提供するITツールの適合性
- 自社の課題解決に最適なツールか
- 操作性や拡張性は十分か
- 導入後のサポート体制は整っているか
私がコンサルタントとして関わった事例では、採択率の高いIT導入支援事業者を選んだ企業は、申請書の書き方や加点項目の活用法など、細かなアドバイスを受けられたことで採択につながったケースが多くありました。
一方、価格の安さだけで選んだ企業の中には、申請書の添削が不十分で不採択になったケースもあります。
IT導入支援事業者との最初の相談時には、以下の質問をしてみるとよいでしょう。
「御社の前年度の採択率はどのくらいですか?」
「私たちのような業種・規模の企業の支援実績はありますか?」
「申請書作成にどの程度関わってもらえますか?」
「加点項目の取得についてもサポートしてもらえますか?」
あなたの会社に最適なIT導入支援事業者を見つけるために、複数の事業者に相談してみることをお勧めします。
採択率を高める3つの秘訣
秘訣1:加点項目を最大限活用する
IT導入補助金の審査では、基本要件を満たしていることに加えて、「加点項目」を取得していると採択率が大幅に向上します。
私がこれまでサポートしてきた企業の中で、加点項目を3つ以上取得した企業の採択率は約85%に達しています。
一方、加点項目なしで申請した企業の採択率は約50%にとどまりました。この差は歴然としています。
2025年版IT導入補助金の主な加点項目は以下の通りです。
🔑 IT戦略ナビwith
- 2025年4月1日から開始予定の経済産業省提供ツール
- みらデジ経営チェックの後継として位置づけられる
- 自社のデジタル化状況を診断し、結果を申請時に提出することで加点
🔑 SECURITY ACTIONの宣言
- IPAが提供する中小企業向け情報セキュリティ対策自己宣言制度
- 「一つ星」と「二つ星」があり、「二つ星」の方が加点が高い
- オンラインで簡単に宣言可能
🔑 賃上げ計画
- 事業計画期間中に給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる計画
- 従業員への還元を前提とした経営姿勢が評価される
💯 成功事例
私がサポートした小売業D社では、「IT戦略ナビwith」「SECURITY ACTION二つ星」「賃上げ計画」の3つの加点項目を取得。
さらに、インボイス対応も行っていたため、インボイス枠で申請したところ、第1次締切で無事採択されました。
D社の社長は「加点項目の取得は少し手間がかかったが、その分採択の可能性が高まるなら十分価値がある」と話していました。
特に「IT戦略ナビwith」は、2025年4月1日から開始予定の新しい診断ツールです。
みらデジ経営チェックの後継として位置づけられており、自社のデジタル化状況を診断できます。
診断結果を申請時に提出することで加点されるため、4月1日以降に必ず診断を受けておきましょう。
「SECURITY ACTIONの宣言」は、情報処理推進機構(IPA)が提供する中小企業向け情報セキュリティ対策自己宣言制度です。
「一つ星」と「二つ星」があり、「二つ星」の方が加点が高くなります。
オンラインで比較的簡単に宣言できるので、ぜひ取得しておきましょう。
あなたの会社では、これらの加点項目をいくつ取得できそうですか?今から準備を始めれば、申請までに十分間に合います。
秘訣2:申請書の説得力を高める具体的な記載方法
申請書の書き方一つで、採択率は大きく変わります。
私がこれまでサポートしてきた企業の経験から、審査員の心を掴む申請書の書き方をお伝えします。
まず押さえておきたいのは、審査員は多くの申請書を短時間で審査しているということ。そのため、「一目で理解できる」「具体的で説得力がある」申請書が高評価を得やすいのです。
あなたが審査員だとしたら、次のどちらの記載に魅力を感じますか?
A:「業務効率化のためにITツールを導入したい」
B:「現在、請求書発行に月40時間かかっているが、クラウド請求書システムの導入により月25時間(約60%)の削減が見込める」
明らかにBの方が具体的で説得力がありますよね。
申請書の重要項目ごとの効果的な記載方法は以下の通りです。
「導入の目的」の書き方
❌ 避けるべき記載:
「業務効率化のため」「コスト削減のため」など抽象的な表現
✅ 効果的な記載:
「現在、手作業で行っている受発注業務(月80時間)をシステム化することで、作業時間を60%削減し、人的ミスも防止する」
「期待される効果」の書き方
❌ 避けるべき記載:
「業務が効率化される」「売上が増加する」など根拠のない期待
✅ 効果的な記載:
「受発注業務の時間削減(月80時間→32時間)により、営業活動に月48時間を追加投入できる。これにより、新規顧客訪問数を月20件から35件に増加させ、売上15%増を目指す」
「生産性向上の指標」の書き方
❌ 避けるべき記載:
「生産性が向上する」など曖昧な表現
✅ 効果的な記載:
「従業員1人あたりの月間売上高を現在の180万円から210万円(約17%増)に向上させる」
私がコンサルティングしたサービス業のE社では、最初の申請書ドラフトは「業務効率化のため」という抽象的な目的しか書かれていませんでした。
これを「月間100件の顧客対応のうち70%を占める定型的な問い合わせをチャットボットで自動化し、対応時間を月120時間削減する」と具体的に書き直したところ、採択されました。
あなたの申請書は、具体的な数字と明確な効果が示されていますか?もう一度見直してみてください。
秘訣3:数値で語る導入効果の見える化
IT導入補助金の審査では、ITツール導入による効果を具体的な数値で示すことが非常に重要です。
「なんとなく効率化される」ではなく、「どれだけ効率化されるのか」を明確に示すことで、審査員を納得させることができます。
私が銀行時代に融資審査をしていた経験からも言えますが、数字には説得力があります。
「売上が増える」よりも「売上が15%増加する」の方が、はるかに信頼性が高く感じられるのです。
📊 データポイント
私がサポートした企業の分析によると、導入効果を具体的な数値で示した申請の採択率は約75%。
一方、抽象的な表現にとどまった申請の採択率は約45%でした。
効果的な数値設定の例をいくつか紹介します。
業務効率化の数値化
- 作業時間:「請求書作成時間を月40時間から10時間に削減(75%減)」
- エラー率:「入力ミスによる再作業を月20件から2件以下に削減(90%減)」
- 工数削減:「3人で行っていた業務を1人で完結できるようになる(67%の工数削減)」
売上向上の数値化
- 客単価:「顧客データ分析により、クロスセルを促進し客単価を15%向上」
- リピート率:「顧客管理システム導入により、リピート率を現在の30%から45%に向上」
- 新規顧客:「営業活動の効率化により、新規顧客獲得数を月10社から15社に増加(50%増)」
コスト削減の数値化
- 在庫コスト:「在庫管理システム導入により、在庫保有コストを20%削減」
- 通信費:「Web会議システム導入により、出張費を年間100万円削減」
- 外注費:「自社対応可能な業務が増え、外注費を30%削減」
投資対効果(ROI)の計算例も示すと、さらに説得力が増します。
【ROI計算例】
ITツール導入費用:150万円(補助金適用後の自己負担額:50万円)
年間削減効果:人件費削減 120万円 + 在庫コスト削減 30万円 = 150万円/年
ROI = 150万円 ÷ 50万円 = 300%(投資回収期間:約4ヶ月)
私がコンサルティングした製造業のF社では、生産管理システム導入による効果を「生産リードタイム20%短縮、不良率5%削減、在庫回転率30%向上」と具体的に数値化。
さらに「これにより年間約200万円のコスト削減が見込める」と投資対効果も明示したところ、高評価で採択されました。
あなたの会社では、ITツール導入によってどのような数値効果が期待できますか?できるだけ具体的に考えてみましょう。
申請枠・類型別の戦略的アプローチ
通常枠の申請戦略
通常枠は、IT導入補助金の中で最も一般的な申請枠です。
会計ソフト、受発注システム、顧客管理システムなど、幅広いITツールが対象となります。
通常枠の基本情報
- 補助率:中小企業は1/2、小規模事業者は2/3(2025年の変更点)
- 補助上限額:450万円
- 補助下限額:30万円



通常枠で採択されるためのポイントは、「自社の経営課題とITツールの導入効果の関連性」を明確に示すことです。
通常枠では特に、「経営課題→ITツール導入→具体的な効果→経営改善」という一連のストーリーが重要です。
単に「便利だから導入したい」ではなく、「この経営課題を解決するために、このITツールが必要で、その結果としてこのような効果が見込める」という論理的な説明が求められます。
通常枠での採択事例を紹介します。
小売業G社の事例
- 課題:在庫管理が手作業で、過剰在庫と欠品が頻発
- 導入ツール:クラウド型在庫管理システム
- 効果:在庫回転率30%向上、欠品率5%削減、在庫管理工数60%削減
- 加点項目:IT戦略ナビwith、SECURITY ACTION二つ星、賃上げ計画
- 結果:第1次締切で採択
また、2025年版では最低賃金+50円以内の従業員を30%以上雇用する事業者に対する補助率の引き上げ(2/3)も注目ポイントです。該当する場合は、その旨を申請書に明記しましょう。
通常枠は競争率が比較的高いため、加点項目の取得と具体的な数値効果の提示が特に重要になります。
あなたの会社が通常枠で申請する場合、どのような経営課題の解決を目指しますか?
セキュリティ対策推進枠の活用法
セキュリティ対策推進枠は、サイバーセキュリティ対策の強化を目的としたITツール導入を支援する枠です。
2025年版では補助上限額が100万円から150万円に引き上げられ、小規模事業者の補助率も2/3に引き上げられました。
セキュリティ対策推進枠の基本情報
- 補助率:中小企業は1/2、小規模事業者は2/3(2025年の変更点)
- 補助上限額:150万円(2025年の変更点、従来は100万円)
- 補助下限額:5万円
- 特記事項:サイバーセキュリティお助け隊サービスの登録が必要
この枠の大きな特徴は、「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の登録が必要な点です。
これは、IPAが認定するセキュリティサービスで、中小企業向けに監視・検知・対応・復旧などの機能を提供します。
⚠️ 注意事項
セキュリティ対策推進枠を申請する場合、ITツール導入後にサイバーセキュリティお助け隊サービスの利用を開始する必要があります。
サービス利用料は補助対象外となるため、継続的なコストとして計画に入れておきましょう。
セキュリティ対策推進枠での採択事例を紹介します。
サービス業H社の事例
- 課題:テレワーク導入に伴うセキュリティリスクの増大
- 導入ツール:VPN・EDR・UTMなどのセキュリティ対策ツール
- 効果:セキュリティインシデントリスクの低減、テレワーク環境の安全性確保
- 加点項目:SECURITY ACTION二つ星
- 結果:第1次締切で採択
セキュリティ対策推進枠での採択率向上のポイントは、「セキュリティリスクの具体的な特定」と「対策による効果の明確化」です。
例えば、「なんとなく不安だから」ではなく、「取引先からの要請が増えている」「過去にインシデントを経験した」「機密情報の漏洩リスクがある」など、具体的なリスクと対策の必要性を示すことが重要です。
私がコンサルティングした医療関連のI社では、「患者情報という機密データを扱うため、セキュリティ対策は経営上の最重要課題」と明記し、「情報漏洩による信頼喪失リスクの低減」という効果を強調したところ、採択されました。
あなたの会社では、どのようなセキュリティリスクがありますか?その対策としてどのようなツールが必要ですか?
インボイス枠の特徴と申請のコツ
インボイス枠は、インボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応を支援するための申請枠です。
2023年10月からインボイス制度が開始されたことを受け、多くの事業者がこの枠を活用しています。
インボイス枠の基本情報
- 補助率:中小企業は1/2、小規模事業者は2/3(2025年の変更点)
- 補助上限額:150万円
- 補助下限額:5万円
- 特記事項:インボイス制度への対応が目的であることが必要
インボイス枠の大きな特徴は、比較的採択率が高い点です。
2024年のデータによると、インボイス枠(インボイス対応類型)の採択率は約71%と、通常枠の約66%よりも高くなっています。
インボイス枠を申請する場合、単に「インボイス対応のため」というだけでなく、「インボイス対応を機に業務全体の効率化を図る」という視点を盛り込むと、より評価が高まります。
インボイス枠での採択事例を紹介します。
小売業J社の事例
- 課題:インボイス対応と同時に、非効率な請求書業務の改善が必要
- 導入ツール:クラウド型会計・請求書システム
- 効果:インボイス対応完了、請求書作成時間70%削減、入力ミス90%削減
- 加点項目:IT戦略ナビwith、SECURITY ACTION一つ星
- 結果:第1次締切で採択



インボイス枠申請のコツは、「インボイス対応」という直接的な目的に加えて、「業務効率化」「ペーパーレス化」「データ活用」などの副次的効果も明確に示すことです。
例えば、「インボイス対応のためのシステム導入により、請求書作成時間が70%削減されるだけでなく、売上データの分析が容易になり、経営判断のスピードアップにもつながる」といった具体的な効果を示すと良いでしょう。
私がサポートした卸売業のK社では、「インボイス対応」「請求書のデジタル化」「取引データの分析活用」という3つの効果を明確に示したところ、高評価で採択されました。
あなたの会社では、インボイス対応と同時にどのような業務改善が期待できますか?
申請から交付までの具体的な流れ
申請に必要な書類と準備のチェックリスト
IT導入補助金の申請には、いくつかの書類が必要です。
法人と個人事業主で必要書類が異なりますので、注意しましょう。
法人の場合の必要書類
□ gBizIDプライムアカウント(必須)
□ 法人番号確認書類
□ 確定申告書(直近分)
□ 法人事業概況説明書(直近分)
□ 加点項目に関する証明書類(該当する場合)
□ 賃金引上げ計画の表明書(該当する場合)
□ 従業員数確認書類(該当する場合)
個人事業主の場合の必要書類
□ gBizIDプライムアカウント(必須)
□ 本人確認書類(以下の3種類すべて)
□ 身分証明書(運転免許証・運転経歴証明書・住民票のいずれか)
□ 納税証明書(申請時における直近分)
□ 確定申告書(青色申告決算書や収支内訳書を含む)
□ 加点項目に関する証明書類(該当する場合)
□ 賃金引上げ計画の表明書(該当する場合)
□ 従業員数確認書類(該当する場合)
⚠️ 注意事項
個人事業主の場合、身分証明書・納税証明書・確定申告書の3種類の本人確認書類がすべて必要です。
住民票を使用する場合は、発行日から3ヶ月以内のものが必要です。
書類準備の段階でよくある不備としては、以下のようなものがあります。
- 確定申告書に収受日付印がない
- 提出した確定申告書が最新年度のものでない
- 個人事業主の本人確認書類が不足している
- 加点項目の証明書類が添付されていない
私がサポートした企業の中には、書類の不備で審査が遅れ、結果的に不採択になったケースもあります。
書類は早めに準備し、不備がないか複数回チェックすることをお勧めします。
あなたは、これらの書類をすべて準備できていますか?今一度確認してみてください。
申請書作成の具体的な手順とポイント
IT導入補助金の申請書作成は、IT導入支援事業者のサポートを受けながら進めることになります。
ここでは、申請書作成の具体的な手順とポイントを解説します。
申請書作成の基本的な流れ
- IT導入支援事業者との初回相談
- 導入するITツールの選定
- 申請書の下書き作成
- IT導入支援事業者による添削・アドバイス
- 申請書の修正・ブラッシュアップ
- 必要書類の準備・添付
- 申請書の最終確認
- 申請書の提出
申請書の各項目における効果的な記載ポイントは以下の通りです:
「補助事業名」の書き方
- 単なるITツール名ではなく、目的を含めた名称にする
- 例:「クラウド型顧客管理システム導入による営業力強化事業」
「補助事業の具体的取組内容」の書き方
- 現状の課題→導入するITツール→期待される効果という流れで記載
- 具体的な数値を盛り込む
- 5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を意識する
「期待される効果」の書き方
- 定量的効果と定性的効果の両方を記載
- 可能な限り数値で表現する
- 短期的効果と中長期的効果を分けて記載するとより説得力が増す
「生産性向上の指標」の書き方
- 「売上高」「原価」「従業員数」などの基本情報を正確に記載
- 生産性の向上率は現実的かつ具体的な数値で示す
- 向上率の根拠を簡潔に説明する
私がコンサルティングしたサービス業のL社では、最初の申請書ドラフトは抽象的な表現が多く、審査員を納得させる内容ではありませんでした。
そこで、「現状の顧客対応時間(月200時間)の40%を占める定型業務をチャットボットで自動化し、顧客一人あたりの対応時間を30%削減する」と具体的に書き直したところ、採択されました。
審査員の目に留まる魅力的な申請書を作るためのコツは、「具体性」「一貫性」「説得力」の3つです。
抽象的な表現を避け、数値を用いて具体的に記載すること、申請書全体で一貫したストーリーを描くこと、そして導入効果の根拠を明確に示すことが重要です。
あなたの申請書は、これらのポイントを押さえていますか?
交付決定後の手続きと注意点
IT導入補助金の交付決定を受けた後も、いくつかの重要な手続きがあります。
これらの手続きを適切に行わないと、せっかく採択されても補助金が受け取れなくなる可能性があるので注意しましょう。
交付決定後の基本的な流れ
- 交付決定通知の受領
- ITツールの契約・発注
- ITツールの導入・支払い
- 実績報告書の提出
- 補助金の確定通知
- 補助金の受領
- 事業実施効果報告の提出(導入後1年後)
ITツールの契約・発注・支払いは、必ず交付決定後に行う必要があります。
交付決定前に契約・発注・支払いを行った場合、補助金の対象外となりますので注意してください。
交付決定後の手続きにおける重要なポイントと期限は以下の通りです。
ITツールの契約・導入・支払いの期限
- 交付決定から概ね6ヶ月以内(具体的な期限は交付決定通知に記載)
- 期限内に完了しない場合、補助金が受け取れなくなる可能性あり
実績報告書の提出
- ITツール導入・支払い完了後、速やかに提出
- 提出期限は交付決定通知に記載(通常は事業完了から30日以内)
- 必要書類:実績報告書、契約書、納品書、請求書、支払証明(振込明細など)
事業実施効果報告
- ITツール導入後1年後に提出
- 申請時に設定した生産性向上の指標に対する達成状況を報告
交付決定後によくあるトラブルとしては、以下のようなものがあります。
- 交付決定前に契約・発注・支払いを行ってしまい、補助対象外になる
- 導入・支払いが期限内に完了せず、補助金が受け取れなくなる
- 実績報告書の提出が遅れ、補助金の支払いが遅延する
- 事業実施効果報告で当初の目標を大きく下回り、次回の申請に影響する
私がサポートした製造業のM社では、交付決定後すぐにITツールの契約・発注を行い、導入・支払いまでのスケジュールを明確にしたことで、スムーズに補助金を受け取ることができました。
一方、建設業のN社では、ITツールの導入に予想以上に時間がかかり、期限内に完了しなかったため、補助金を受け取れなくなるというトラブルがありました。
交付決定後は、IT導入支援事業者と密に連携し、スケジュールを明確にして進めることが重要です。
あなたの会社では、交付決定後のスケジュールをどのように計画していますか?
よくある質問(FAQ)
Q: 過去にIT導入補助金を利用したことがある場合、2025年も申請できますか?
A: はい、過去にIT導入補助金を利用した事業者でも、2025年版に申請可能です。ただし、同一の申請枠では再度の申請はできません。
例えば、過去に通常枠で採択された場合は、セキュリティ対策推進枠やインボイス枠での申請は可能です。また、過去に導入したITツールとは異なる機能を持つツールであれば、同一枠での申請も検討できる場合があります。
私がコンサルティングした小売業のO社は、2023年に通常枠で在庫管理システムを導入し、2024年にはセキュリティ対策推進枠でセキュリティツールを導入しました。このように、異なる枠を活用することで、段階的にデジタル化を進めることができます。
詳細は最新の公募要領を確認するか、IT導入支援事業者に相談することをお勧めします。
Q: 採択率はどのくらいですか?採択されやすい申請枠はありますか?
A: 2024年のデータによると、全体の採択率は約66〜71%でした。枠別では、インボイス枠(インボイス対応類型)の採択率が約71%と最も高く、通常枠が約66%でした。
2025年も同様の傾向が予想されますが、要件変更の影響もあるでしょう。採択されやすさだけでなく、自社の課題解決に最適な枠を選ぶことが重要です。
📊 データポイント
2024年のIT導入補助金採択率(概算)
- インボイス枠:約71%
- セキュリティ対策推進枠:約68%
- 通常枠:約66%
私の経験上、加点項目を多く取得している企業ほど採択率が高い傾向にあります。3つ以上の加点項目を取得した企業の採択率は約85%に達しています。
本記事で紹介した3つの秘訣を実践することで、どの枠でも採択率を高めることが可能です。
Q: 小規模事業者でも申請は難しくないですか?
A: 小規模事業者向けに手続きの簡素化が進められており、2025年版では小規模事業者の補助率が引き上げられるなど優遇措置もあります。
確かに初めての申請は手続きが複雑に感じられるかもしれませんが、IT導入支援事業者のサポートを受けることで、スムーズに申請できます。また、本記事のチェックリストや手順を参考にすれば、初めての方でも着実に準備を進められるでしょう。
私がサポートした従業員5名の小規模小売店P社も、最初は「難しそう」と躊躇していましたが、IT導入支援事業者のサポートを受けながら申請したところ、無事に採択されました。P社の社長は「思ったより手続きはスムーズだった」と話していました。
小規模事業者こそITツール導入による業務効率化の恩恵が大きいため、ぜひチャレンジしてみてください。
Q: 「IT戦略ナビwith」とは何ですか?どのように対応すればよいですか?
A: 「IT戦略ナビwith」とは、2025年4月1日から開始予定の、経済産業省が提供する自社のデジタル化状況を診断するツールです。これは「みらデジ経営チェック」の後継ツールとなります(みらデジ事業は2025年3月末で終了)。
2025年版のIT導入補助金では、通常枠申請の加点項目となる予定です。オンラインで質問に回答することで、自社のデジタル化レベルと課題が可視化されます。診断結果は申請時に提出することで加点を受けられます。
🎯 実践ステップ
「IT戦略ナビwith」の利用手順(2025年4月1日以降)
- 「IT戦略ナビwith」のウェブサイトにアクセス
- アカウント登録(無料)
- 診断質問に回答(約15〜20分程度)
- 診断結果を確認・ダウンロード
- 診断結果を申請時に提出
診断自体は短時間で完了し、結果を基に自社のデジタル化戦略を検討できるメリットもあります。4月1日以降に診断を受け、結果を申請戦略に反映させることをお勧めします。
Q: IT導入支援事業者は必ず必要ですか?自分だけで申請できませんか?
A: IT導入補助金の申請には、必ずIT導入支援事業者を通じて行う必要があります。これは、適切なITツールの選定や導入後のサポートを確保するための仕組みです。
IT導入支援事業者は単なる申請代行だけでなく、自社の課題に合ったITツール選びや、申請書作成のアドバイス、導入後のフォローアップまで一貫してサポートしてくれます。
私がコンサルティングした企業の多くは、IT導入支援事業者のアドバイスにより、当初考えていたよりも自社に適したITツールを選ぶことができました。また、申請書の書き方のコツや加点項目の取得方法など、採択率を高めるためのノウハウも得られています。
適切な事業者を選ぶことが採択率向上の鍵となるため、本記事で紹介した選定ポイントを参考に、信頼できるパートナーを見つけることをお勧めします。
Q: 申請から補助金受給までどのくらいの期間がかかりますか?
A: 申請から補助金受給までの標準的な流れは、申請提出から交付決定まで約1〜2ヶ月、その後ITツール導入・支払い・実績報告を経て、補助金受給まで更に2〜3ヶ月程度かかります。
つまり、申請開始から補助金受給まで合計で約3〜5ヶ月程度を見込んでおくとよいでしょう。ただし、申請時期や審査状況によって変動する可能性があります。
🔄 よくある誤解
「申請すればすぐに補助金が受け取れる」と思っている方が多いですが、実際には交付決定後にITツールを導入・支払いし、実績報告を行った後に補助金が支払われます。
つまり、ITツール導入費用を一時的に全額負担する必要があることを理解しておきましょう。
私がサポートした企業の実例では、4月に申請して6月に交付決定、8月にITツール導入・支払い完了、9月に実績報告提出、10月に補助金受給というケースが多かったです。
資金計画を立てる際は、ITツール導入費用を一時的に全額負担する必要があることを考慮し、余裕を持ったスケジュールを組むことをお勧めします。
Q: 補助金申請が不採択になった場合、再申請はできますか?
A: はい、不採択になった場合でも、同一年度内で申請期間が残っていれば再申請が可能です。
ただし、単に同じ内容で再申請しても採択される可能性は低いため、不採択の理由を分析し、申請内容を改善することが重要です。特に、本記事で紹介した「採択率を高める3つの秘訣」を意識して申請書を見直すことをお勧めします。
私がコンサルティングした建設業のQ社は、最初の申請で不採択となりましたが、申請書の内容を見直し、特に「導入効果の数値化」と「加点項目の取得」に注力して再申請したところ、採択されました。
また、IT導入支援事業者を変更することで、新たな視点やアドバイスを得られる場合もあります。不採択を経験として、より強い申請内容で再チャレンジしましょう。
Q: 個人事業主でも申請できますか?必要な書類は何ですか?
A: はい、個人事業主も申請対象です。個人事業主の場合、法人とは異なる書類が必要になります。
具体的には、①身分証明書(運転免許証・運転経歴証明書・住民票のいずれか。住民票は発行日から3ヶ月以内のもの)、②納税証明書(申請時における直近分)、③確定申告書(青色申告決算書や収支内訳書を含む)の3種類が基本的に必要です。
これらの書類は事業実態の確認に使用されるため、不備のないよう準備することが重要です。特に、3種類すべての本人確認書類が必要である点に注意してください。
私がサポートした個人事業主のRさんは、最初は「書類が多くて大変そう」と感じていましたが、計画的に準備を進めることで、スムーズに申請することができました。
また、個人事業主向けに手続きの簡素化も進められているので、IT導入支援事業者のサポートを受けながら申請することをお勧めします。
まとめ
📝 ポイントまとめ
採択率を高める3つの秘訣
- 加点項目を最大限活用する
- 申請書に具体的な数値と明確な効果を記載する
- 導入効果を数値で見える化する
IT導入補助金は、中小企業や個人事業主がデジタル化を進める上で非常に有効な支援制度です。
2025年版では、セキュリティ対策推進枠の補助上限額の引き上げや小規模事業者の補助率の引き上げなど、いくつかの変更点がありますが、本記事で紹介した「採択率を高める3つの秘訣」を実践することで、採択確率を大きく高めることができます。
特に重要なのは、
①加点項目の最大限活用
②申請書の説得力を高める具体的な記載
③数値で語る導入効果の見える化
の3点です。
私がこれまでサポートしてきた企業の多くは、これらのポイントを押さえることで高い採択率を実現してきました。
銀行員時代、私は多くの中小企業の資金繰り状況を見てきました。
その経験から言えるのは、ITツールの導入は単なるコストではなく、将来の競争力を高めるための投資だということ。
IT導入補助金は、その投資のハードルを下げてくれる貴重な機会なのです。
IT導入補助金の申請は確かに手間がかかりますが、その見返りは大きいものです。
本記事を参考に、ぜひ積極的に申請にチャレンジし、御社のデジタル化を加速させてください。


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