日本政策金融公庫で融資は厳しいと言われた?元銀行員が明かす、担当者が“本当に”見ている5つの審査ポイントと対策

「日本政策金融公庫の融資は厳しいと聞いて、申請をためらっていませんか?」
あるいは、一度審査に落ちてしまい「一体、何がいけなかったんだろう…」と一人で頭を抱えていませんか?

ご安心ください。その不安、私が解消します。

佐々木 真帆

はじめまして。元大手銀行で中小企業向けの貸付審査を7年間担当してきた、資金繰りコンサルタントの佐々木真帆です。

銀行員時代、素晴らしい技術や熱い想いがあるのに、ほんの少しの知識不足で夢を諦めざるを得なかった経営者の悔しそうな表情を、私は今も忘れることができません。

だからこそ、あなたには同じ思いをしてほしくないのです。

この記事では、巷の噂や一般論では決して語られない、日本政策金融公庫の融資担当者が“本当に”見ている5つの審査ポイントを、私の経験のすべてを込めて解説します。

【この記事の結論】日本政策金融公庫の融資で「厳しい」と言われないための5つの必須ポイント

日本政策金融公庫の融資審査で「厳しい」と言われたり、審査に落ちたりするのは、担当者が見ている「事業の確実性」を示せていないからです。元銀行員の視点から、担当者が本当に見ている5つの必須ポイントをまとめました。

  1. 自己資金の「質」
    「見せ金」ではなく、毎月コツコツ貯めてきた経緯がわかる通帳が、事業への本気度と計画性の証明になります。
  2. 経験との「一貫性」
    これから始める事業と、これまでのキャリアとの関連性は成功確率を示す上で重要です。異業種からの挑戦でも、熱意と行動でカバーできます。
  3. 事業計画書の「数字の根拠」
    売上計画は「客単価×席数」だけでなく、なぜその客単価なのかを市場調査データなどで具体的に示す必要があります。
  4. 個人信用情報の「クリーンさ」
    スマホ代の延滞など、ささいな支払い遅延が致命傷になります。CICやJICCで事前に必ず確認しましょう。
  5. 資金使途の「明確性」
    「何に」「いくら」使うのかを見積書などで明確に示します。特に運転資金は「なぜその金額が必要か」を合理的に説明することが求められます。

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目次

なぜ日本政策金融公庫の融資は「厳しい」と言われるのか?元銀行員が語る3つの真相

まず、なぜ公庫の融資は「厳しい」というイメージがあるのでしょうか。
銀行の”中の人”だった私から見て、これには3つの明確な理由があります。

真相①:原資が「税金」であるという特殊性

これが最も根本的な理由です。

民間銀行の融資の原資は、預金者から預かったお金です。
一方、日本政策金融公庫の原資は、主に国からの出資金や借入金、つまり私たちの「税金」で賄われています。

税金を扱う以上、民間銀行以上に「絶対に貸し倒れは起こせない」という強いプレッシャーがあります。
そのため、事業の将来性や夢だけでなく、「事業として確実に成功し、返済できるか」という確実性が、よりシビアに、より厳しく見られるのです。

真相②:「誰でも申し込める」からこその厳格なフィルタリング

公庫は、創業したばかりの方や、民間銀行では取引が難しい小規模事業者にも門戸を開いている、いわば「最後の砦」のような存在です。

その分、毎日ものすごい数の融資申込が寄せられます。
私が銀行員だった頃も、公庫の担当者と話す機会がありましたが、その案件数の多さにはいつも驚かされていました。

正直に言えば、その中には準備不足の計画も少なくありません。
だからこそ、担当者は一定の基準で厳格にフィルタリングを行い、本当に支援すべき事業を見極めなければならないのです。

「厳しい」と感じるのは、このフィルタリング機能がしっかりと働いている証拠とも言えます。

真相③:審査基準が非公開であることへの「不安」

「何を見られているか分からない」
これが、経営者の皆様が感じる不安の最大の原因でしょう。

公庫は、民間銀行のように「年商〇〇円以上」といった明確な基準を公表していません。
だからこそ、「担当者のサジ加減で決まるのでは?」「何か裏基準があるのでは?」といった憶測が広がり、「厳しい」というイメージが一人歩きしてしまうのです。

佐々木 真帆

しかし、安心してください。
見るべきポイントは、実は明確に存在します。

これから、その核心部分を一つずつ解き明かしていきます。

【最重要】元銀行員が明かす!日本政策金融公庫の担当者が“本当に”見ている5つの審査ポイント

お待たせしました。
ここからが本題です。
私が貸付審査の担当者として、毎日何十件もの事業計画書に目を通していた頃、必ずチェックしていた5つの最重要ポイントをお伝えします。

融資審査担当者が見ている5つのポイント

ポイント①:自己資金の「質」と「見せ方」

「自己資金は融資希望額の1/10以上あればいいんですよね?」

この質問をよく受けますが、私の答えは「半分正解で、半分不正解」です。

もちろん金額も大切ですが、担当者が本当に見ているのは、その金額の「質」、つまり「どうやって貯めてきたか」というプロセスです。

【佐々木真帆の核心ポイント】

私たち審査担当者は、通帳のコピーをただ眺めているわけではありません。毎月、給料からコツコツと一定額が貯蓄されているか、ボーナスがきちんと入金されているか、その「お金の流れ」を見て、あなたの事業への本気度と計画性を判断しているのです。

逆に、申込の直前に親族から借りたお金などがドカンと入金されている「見せ金」は、すぐに見抜かれてしまいます。
それは、あなたの計画性のなさを露呈するだけで、逆効果にしかなりません。

ポイント②:経営者の「経験」と事業の「一貫性」

次に担当者が見るのは、あなたのプロフィールです。
これから始めようとしている事業と、あなたがこれまで歩んできたキャリア(斯業経験)に「一貫性」があるか。

なぜなら、経験こそが事業の解像度を決め、成功確率を大きく左右するからです。

例えば、長年イタリアンレストランでシェフとして修行してきた方が、イタリアンレストランを開業するという計画には強い説得力があります。
一方で、全くの異業種から挑戦する場合、「なぜ、あなたはこの事業を成功させられるのですか?」という問いに、誰もが納得できる答えを用意する必要があります。

私が担当した案件で、ITエンジニアだった方が突然パン屋を開きたいと相談に来られたことがありました。
当初は厳しいと思いましたが、彼は「趣味で10年間パン作りを研究し、有名店のシェフに弟子入りして1年間修行した」という具体的な行動と資料を示してくれました。
結果、彼の熱意と行動が評価され、無事に融資は実行されました。
経験不足は、情熱と行動でカバーできるのです。

ポイント③:事業計画書の「数字の根拠」と「ストーリー」

事業計画書に書かれた売上計画。
担当者は、その数字の大きさそのものには、さほど興味がありません。

私たちが見ているのは、その数字に至った「算出根拠」です。

「客単価 × 座席数 × 回転数 × 営業日数 = 月間売上」

この式自体は誰でも書けます。
重要なのは、「なぜ、その客単価でいけると思ったのか?」「なぜ、1日その回転数を見込めるのか?」という部分です。

例えば、「近隣の競合店A、B、Cの価格帯を調査した結果、当店ではこの価格設定が妥当だと判断しました」といった具体的な市場調査データや、「SNSで既に〇〇人のフォロワーがおり、プレオープンで〇〇人の来店が見込めています」といった具体的な証拠が添えられていると、計画の信頼性は一気に高まります。

担当者が思わず唸る計画書は、数字にしっかりとした裏付けと、そこに至るまでのストーリーがあるものなのです。

ポイント④:個人信用情報の「クリーンさ」

これは非常にシビアなポイントです。
CICJICCといった個人信用情報に、傷(延滞や異動情報)がないか。

これは、担当者の裁量が入る余地はなく、機械的にチェックされます。

特に見落としがちなのが、

  • スマートフォン端末の分割払いの延滞
  • 奨学金の返済遅れ
  • クレジットカードの支払遅延

「これくらい大丈夫だろう」という自己判断が、最も危険です。

佐々木 真帆

銀行員時代、事業計画は完璧なのに、たった一度の携帯料金の延滞が原因で、融資をお断りせざるを得なかったケースを何度も見てきました。本当に悔しい瞬間です。

少しでも不安な方は、必ず事前にご自身の信用情報を情報開示して確認してください。

ポイント⑤:「資金使途」の明確性と妥当性

融資で得た資金を「何に」「いくら」使うのか。
これを明確に、かつ妥当性をもって示すことが極めて重要です。

資金の使い道は、大きく分けて2つあります。

資金の種類内容担当者の視点
設備資金店舗の改装費、機械の購入費など、資産として残るもの見積書があり、金額の妥当性が分かりやすい。計画性が示しやすい。
運転資金商品の仕入代金、人件費、家賃など、事業を回していくための費用金額の根拠が曖昧になりがち。「なぜ3ヶ月分?」など、妥当性を厳しく見られる。

特に注意すべきは「運転資金」です。
運転資金の割合が多すぎると、「売上計画が甘く、すぐに資金がショートするリスクを考えているのでは?」と、計画全体の甘さを疑われる可能性があります。
必要な運転資金は、売上計画と連動させて、なぜその金額が必要なのかを合理的に説明する必要があります。

日本政策金融公庫の審査通過率を劇的に上げる!明日からできる具体的な対策アクション

では、これらの審査ポイントを踏まえ、具体的に何をすれば良いのでしょうか。
明日からすぐに始められる3つのアクションをご紹介します。

対策①:「事業計画書」は“ラブレター”だと思え

事業計画書は、単なる事務的な書類ではありません。
あなたの事業への情熱と、「私はこの事業を必ず成功させられる」という想いを伝える“ラブレター”です。

佐々木 真帆

特に、公庫のフォーマットにある「創業の動機」の欄。
ここを「儲かりそうだから」といった一言で済ませてはいけません。

「なぜ、他の誰でもなく、あなたがこの事業をやるのか?」
あなた自身の原体験や、この事業を通じて社会にどう貢献したいのか、といった個人的な想いを、具体的な言葉で綴ってください。
その熱意は、必ず担当者に伝わります。

対策②:根拠資料を“これでもか”と用意する

事業計画書に書いた数字や言葉を裏付ける「証拠」を、これでもかというくらい用意しましょう。

  • 売上計画の根拠:市場調査データ、競合店の分析レポート、アンケート結果
  • 資金使途の根拠:店舗や機械の見積書(必ず複数社から取る)
  • 自己資金の証明:毎月コツコツ貯めてきたことが分かる通帳のコピー
  • 経験の証明:過去の実績が分かる資料、関連資格の証明書

「ここまで準備するのか」と担当者を驚かせるレベルの資料は、そのままあなたの事業への熱意と本気度の証明になります。

対策③:面談は“プレゼン”の場。想定問答集を作成する

面談は、あなたが事業への想いを直接伝えられる唯一のチャンスです。
これは審査される場ではなく、あなたの事業の魅力を伝える“プレゼンテーション”の場だと捉えましょう。

以下の質問は、ほぼ間違いなく聞かれます。
事前に自分なりの答えを準備し、スラスラと答えられるように練習しておきましょう。

  • なぜこの事業を始めようと思ったのですか?(創業動機)
  • これまでのご経験を、この事業にどう活かせますか?(経験の一貫性)
  • この売上計画の根拠を教えてください。(数字の根拠)
  • 融資した資金は、具体的に何に使いますか?(資金使途)
  • もし、計画通りに売上が上がらなかった場合、どうしますか?(リスク管理)

特に最後の「厳しい質問」にどう答えるかで、あなたの経営者としての覚悟が試されます。
具体的な対応策を冷静に語れるように準備しておくことが、担当者からの信頼に繋がります。

もし日本政策金融公庫から「厳しい」と言われたら?次に繋げるための正しいステップ

万が一、審査に通らなかったとしても、決して終わりではありません。
むしろ、それはあなたの事業計画をより強固にするための貴重な機会です。

まずは冷静に「理由」を担当者にヒアリングする

感情的になってはいけません。
「今回は残念でしたが、今後のために、どの点が不足していたか具体的に教えていただけますか?」
このように、真摯な姿勢でヒアリングすることが重要です。
担当者も人間です。あなたの前向きな姿勢を見て、具体的な改善点をアドバイスしてくれるはずです。

指摘された課題を改善し、事業を磨き上げる

自己資金不足を指摘されたなら、改めて貯蓄計画を立て直す。
事業計画の甘さを指摘されたなら、市場調査からやり直す。
指摘された課題は、あなたの事業の弱点そのものです。
これを克服することで、あなたの事業はより成功に近づきます。

再申請の適切なタイミングを見極める

指摘された課題を改善せずに、すぐに再申請しても結果は同じです。
一般的には、最低でも半年は期間を空けるべきとされています。
その間に、指摘された課題をクリアし、事業計画をブラッシュアップして、「ここまで改善してきました」と胸を張って言える状態にしてから、再度挑戦しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q: 自己資金がほぼゼロでも融資は可能ですか?

A: 制度上は自己資金要件が撤廃されたものもありますが、現実的には非常に厳しいです。元銀行員の視点から言うと、自己資金は事業への本気度を示す最も分かりやすい指標です。少なくとも融資希望額の10分の1、できれば3分の1を目標に準備することをお勧めします。なぜなら、それが事業開始後の不測の事態に備える体力にも直結するからです。

Q: 面談の時間はどれくらいですか?服装はスーツが良いですか?

A: 面談時間は通常30分~1時間程度です。時間の長さと審査結果に直接的な関係はありません。服装はスーツが無難ですが、事業内容に合わせた清潔感のある服装(例:美容師ならお洒落な私服)でも問題ありません。大切なのは見た目よりも、事業内容を自信を持ってハキハキと説明できることです。

Q: 赤字決算や税金の滞納があると絶対に無理ですか?

A: 税金の滞納は極めて厳しいです。公的機関であるため、納税義務を果たしていない事業者への融資は原則行われません。まずは完納することが絶対条件です。赤字決算の場合は、その理由(先行投資など)と、今後の黒字化に向けた具体的な計画を合理的に説明できれば、可能性はゼロではありません。

Q: 複数の融資制度がありますが、どれを選べば良いですか?

A: 事業のステージや内容によって最適な制度は異なります。創業者であれば「新規開業資金」が一般的です。(※2024年3月末で「新創業融資制度」は「新規開業資金」に統合されました)。まずは公庫の窓口で事業内容を相談し、担当者から最適な制度を提案してもらうのが最も確実です。その際、ご自身の事業計画をしっかり説明できるように準備しておくことが重要です。

Q: 専門家(税理士など)に相談した方が通過率は上がりますか?

A: はい、上がる可能性は高いです。特に公庫との取引実績が豊富な専門家は、審査のポイントを熟知しており、事業計画書の質を高めてくれます。私のような資金繰りコンサルタントも、銀行員目線でのアドバイスが可能です。ただし、丸投げではなく、あくまでご自身の事業として主体的に専門家と連携することが成功の鍵です。

まとめ

日本政策金融公庫の融資審査は、決してあなたを落とすための“意地悪”なものではありません。
それは、国民の大切な税金を預かる立場として、「確実性の高い事業を、責任を持って応援したい」という真摯な想いの表れなのです。

今回ご紹介した5つの審査ポイントは、見方を変えれば「あなたの事業を成功させるための必須条件」そのものです。

  1. 自己資金:事業への本気度と計画性
  2. 経営者の経験:事業の成功確率
  3. 事業計画書:事業の設計図の緻密さ
  4. 個人信用情報:経営者としての信頼性
  5. 資金使途:資金管理能力

これらを一つひとつ丁寧に見直し、担当者の視点を理解して準備すれば、融資への道は必ず開けます。

融資はゴールではありません。
あなたの素晴らしい事業を、社会へと羽ばたかせるためのスタートラインです。

この記事が、あなたの力強い第一歩に繋がることを、心から願っています。

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この記事を書いた人

佐々木真帆は、資金繰りコンサルタントとして活躍する金融のプロフェッショナルである。大手銀行での融資審査経験から独立コンサルタントとしての現在まで、一貫して「企業の生命線である資金繰り」に焦点を当て、その知見を惜しみなく共有している。

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