短期借入金と長期借入金の最適バランスとは?財務コンサルが教える黄金比率

「なぜ、うちは利益が出ているのに銀行は融資してくれないんだ…」

財務コンサルタントとして、私はこの悲痛な叫びを何度も聞いてきました。元銀行員の経験から断言します。

佐々木 真帆

その原因の9割は、借入金の「短期」と「長期」のバランスの悪さにあります。

このバランスの崩れが、気づかぬうちに会社の資金繰りを蝕み、銀行からの信用を失わせているのです。しかし、ご安心ください。会社の財務には、長期的な安定性を示す「3つの黄金比率」が存在します。

本記事では、私が数多くの中小企業を救ってきた経験に基づき、自社の借入金バランスが健全かどうかを判断する「3つの黄金比率」の計算方法から、具体的な改善アクションまでを徹底解説します。

【この記事の結論】短期借入金と長期借入金の最適バランス「3つの黄金比率」

財務指標(チェック項目)目指すべき「黄金比率」
① 固定長期適合率100%以下を目指す(長期的な安定性の指標)
② 運転資金バランス運転資金 ≒ 短期借入金」の状態が理想
③ 借入金月商倍率3ヶ月〜6ヶ月以内」が健全な範囲の目安

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目次

なぜ借入金の「短期・長期バランス」が重要なのか?

まず、なぜ私がこれほどまでに「バランス」を重視するのか、その理由からお話しします。
これは会社の命運を分ける、極めて重要なポイントです。

そもそも短期借入金と長期借入金とは?

とてもシンプルです。
会計の世界には「1年基準(ワン・イヤー・ルール)」というルールがあります。

  • 短期借入金:決算日の翌日から1年以内に返済期限がくる借入金
  • 長期借入金:返済期限が1年を超えてからやってくる借入金

例えば、運転資金として300万円を6ヶ月で返済する約束で借りたら「短期」。
工場の機械を買うために2,000万円を10年で返済する約束で借りたら「長期」です。

この違い、単なる期間の差だけではないのです。

バランスが崩れると起こる「資金繰りショート」の恐怖

最も危険なのは、短期借入金で、長期的に使うべき設備投資などを行ってしまうケースです。

私が銀行員時代に担当した、ある印刷会社A社の話をさせてください。
A社は業績が好調で、最新の印刷機を導入することにしました。
しかし、社長は付き合いのあった信用金庫から「金利が安いから」という理由で、返済期間1年の短期借入で設備資金を調達してしまったのです。

どうなったと思いますか?

最新の機械のおかげで売上は伸び、利益も出ていました。
決算書上は「黒字」です。
しかし、機械が生み出す利益よりも、毎月の借入金返済額の方がはるかに大きかった。
あっという間に手元の現金が底をつき、仕入代金の支払いや給与の支払いができなくなってしまいました。
いわゆる「黒字倒産」の一歩手前です。

慌てて長期の借入に借り換えようとしましたが、一度資金繰りが悪化した会社への融資は、銀行も非常に慎重になります。
これが、バランスが崩れることの本当の怖さです。

銀行が見ているのは「返済能力」と「安定性」

銀行は融資審査の際、借入金の総額だけを見ているわけではありません。
むしろ、その内訳(バランス)を厳しくチェックしています。

なぜなら、借入金のバランスには、その会社の「計画性」が透けて見えるからです。

  • 短期と長期のバランスが取れている会社
    • →「資金の使いみちと返済計画をしっかり考えているな。この会社は安定的だ」
  • バランスが崩れている会社
    • →「場当たり的な資金調達をしているのではないか?将来の資金繰りは大丈夫か?」

このように、借入金のバランスは、銀行からの評価、つまり「会社の信用力」に直結するのです。

借入金の最適バランスを判断する3つの黄金比率

では、具体的にどのような状態が「最適なバランス」なのでしょうか。
ここでは、私がコンサルティングの現場で必ずチェックする、3つの「黄金比率」をご紹介します。
難しいものではありません。ぜひ、自社の決算書と見比べながら読んでみてください。

借入金バランスの黄金比率

黄金比率①:固定長期適合率「100%以下」で長期的な安定を

これは、財務の長期的な安定性を見るための最重要指標です。

  • 計算式固定資産 ÷ (自己資本 + 固定負債) × 100
    • ※固定負債とは、主に長期借入金のことです。

この指標は、「工場や機械といった長期的に使う資産(固定資産)を、返済不要の自己資本と、返済まで期間の長い長期借入金で、どれだけまかなえているか」を示します。

これが100%以下であることが、一つの大きな目安です。
もし100%を超えている場合、それは短期借入金という「すぐに返さなければいけないお金」で、長期的に使う資産を買ってしまっている可能性を示唆しており、非常に危険な状態と言えます。

黄金比率②:運転資金と短期借入金のバランス

次に、短期的な支払い能力を見るためのバランスです。
原則として、以下の状態が理想とされています。

  • 理想の形運転資金 ≒ 短期借入金
  • 運転資金の計算式売掛金 + 棚卸資産 - 買掛金

運転資金とは、商品を仕入れてから、それが売れて現金として入ってくるまでの間に必要となる「つなぎ資金」のことです。
この日々発生する運転資金は、短期借入金でまかなうのがセオリーです。
なぜなら、資金の性質(短期的)と返済期間(短期的)が一致しているからです。

このバランスが大きく崩れていないか、ぜひ確認してみてください。

黄金比率③:借入金月商倍率で返済負担をチェック

これは、会社の返済負担が過剰になっていないかを簡易的にチェックする指標です。

  • 計算式借入金総額 ÷ 平均月商

業種によって大きく異なりますが、一般的には3ヶ月〜6ヶ月以内が健全な範囲とされています。
例えば、月商1,000万円の会社であれば、借入金総額は3,000万円〜6,000万円がひとつの目安となります。
これを超えてくると、売上に対する返済負担が重くなっている可能性があり、注意が必要です。

財務指標計算式目安何がわかるか
固定長期適合率固定資産 ÷ (自己資本 + 固定負債)100%以下長期的な安定性
運転資金バランス運転資金 ≒ 短期借入金バランスが取れているか短期的な支払い能力
借入金月商倍率借入金総額 ÷ 平均月商3〜6ヶ月以内返済負担の重さ

【ケーススタディ】企業の成長ステージ別!借入金バランス戦略

会社の状況によって、最適な借入バランスは変化します。
ここでは、私が実際にコンサルティングで関わった事例を元に、企業の成長ステージ別の戦略を見ていきましょう。

創業期:まずは事業を軌道に乗せる長期借入を優先

売上も利益もまだ不安定な創業期。
この時期に最も避けたいのは、毎月の返済に追われて事業に集中できなくなることです。

私が支援したあるITスタートアップのB社は、当初、運転資金として短期の借入を検討していました。

佐々木 真帆

しかし、私は「今は売上予測も立てにくい時期。返済期間が短く、毎月の返済額が大きくなる短期借入はリスクが高すぎます」とアドバイスしました。

結果的に、B社は日本政策金融公庫の創業融資を活用し、返済期間7年の長期資金を調達。
おかげで目先の資金繰りに悩まされることなく、プロダクト開発に集中でき、無事に事業を軌道に乗せることができました。

創業期は、返済負担の軽い長期借入金を中心に資金調達を行うのが鉄則です。

成長期:増加する運転資金を短期借入で機動的に調達

事業が軌道に乗り、売上が急増する成長期。
ここで問題になるのが、仕入の増加や人件費の増加に伴う「運転資金の増加」です。

このステージでは、金利が比較的低く、審査もスピーディーな短期借入金を機動的に活用することが有効です。
売上が増えれば、その分、返済原資も増えるため、短期借入の返済も可能になります。

ただし、ここで注意したいのは、短期借入への依存度が高まりすぎること。
常に「黄金比率」を意識し、長期借入とのバランスを取ることが重要です。

安定期・成熟期:バランスの見直しと借り換えで財務体質を強化

利益が安定してくるこの時期は、財務体質を強化する絶好のチャンスです。

  • 金利の高い借入を、より有利な条件の長期借入金へ借り換える
  • 短期と長期のバランスを「黄金比率」に近づけるよう最適化する

こうして財務体質を強化しておくことで、予期せぬ経済状況の変化にも耐えうる強い会社になり、次の成長に向けた新たな投資余力も生まれるのです。

元銀行員が明かす!金融機関は企業の借入バランスをこう見ている

では、融資のプロである銀行員は、決算書のどこを見て、どのようにバランスを判断しているのでしょうか。
ここだけの話、ポイントは3つあります。

「資金使途」と「返済期間」の一致は絶対条件

これは銀行審査における絶対的な鉄則です。

  • 設備資金(工場、機械、車など)→ 長期借入で調達すべき
  • 運転資金(仕入、経費、賞与など)→ 短期借入で調達すべき

なぜなら、銀行は「何に使うお金(資金使途)」と「何から返すお金(返済原資)」を見ているからです。
設備投資は、その設備が生み出す長期的な「利益」から返済します。
運転資金は、日々の「売上」から返済します。
この使いみちと返済期間がズレていると、銀行からは「この経営者は計画性がないな」と判断され、評価が大きく下がってしまいます。

決算書のどこを見て判断しているのか?

私たちは、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)をセットで見て、以下のような点をチェックしていました。

  1. 貸借対照表の「流動負債」と「固定負債」の比率:短期借入金(流動負債)と長期借入金(固定負債)のバランスが、その会社の事業内容と比べて不自然ではないか?
  2. 損益計算書から生み出されるキャッシュフロー:長期借入金の年間返済額を、税引後利益と減価償각費を足した「簡易キャッシュフロー」でまかなえているか?

これらのポイントから、会社の財務の安定性と将来性を判断しているのです。

評価を上げるための交渉術:「なぜこのバランスなのか」を説明できますか?

融資の申し込みで最も評価が高いのは、「自社の事業計画に基づいて、なぜこの短期・長期の借入バランスが必要なのか」を、経営者自身の言葉で論理的に説明できる方です。

例えば、「今回は売上増加に伴う運転資金が必要なので、返済期間1年の短期で借りたいのです。弊社の売上サイクルから考えて、この期間で十分に返済可能です」と説明できる経営者には、絶大な信頼を寄せます。

逆に、「いくら借りられますか?」という質問だけでは、「この会社は大丈夫だろうか…」と不安にさせてしまいます。
自社の財務状況を理解し、計画性を語れること。
それが、銀行との信頼関係を築く上で何よりも大切なのです。

最適バランスを実現するための具体的なアクションプラン

「話は分かったけど、具体的に何から始めればいいの?」
そう思われた方のために、今日からできる3つのステップをご紹介します。

Step1:自社の貸借対照表で現状を把握する

まずは、お手元に直近の決算書(特に貸借対照表)をご用意ください。
そして、以下の4つの項目の金額を書き出してみましょう。

  • 短期借入金(流動負債の部)
  • 長期借入金(固定負債の部)
  • 固定資産合計
  • 運転資金(売掛金 + 棚卸資産 - 買掛金)

これが、自社の財務状況を客観的に知るための第一歩です。

Step2:3つの黄金比率を計算してみる

次に、Step1で書き出した数字を使って、先ほどご紹介した「3つの黄金比率」を計算してみましょう。

  1. 固定長期適合率 = 固定資産 ÷ (自己資本 + 長期借入金) × 100
  2. 運転資金バランス = 運転資金と短期借入金の金額を比較
  3. 借入金月商倍率 = (短期借入金 + 長期借入金) ÷ 平均月商

計算結果はいかがでしたか?
目安と比べて、自社の立ち位置が見えてきたはずです。

Step3:改善策を検討する(短期から長期への借り換えなど)

もし、計算結果が目安から大きく外れていた場合、改善策を検討しましょう。

例えば、短期借入金の割合が高く、固定長期適合率が100%を超えている場合。
最も有効な手段の一つが、銀行に相談して、短期借入金の一部を長期借入金へ借り換える(リファイナンス)ことです。
これにより、毎月の返済負担が軽減され、資金繰りは劇的に改善します。

「そんな相談、銀行にしていいのだろうか?」と不安に思う必要はありません。
計画性のある前向きな相談であれば、銀行も必ず親身になってくれるはずです。

よくある質問(FAQ)

最後に、経営者の皆様からよくいただく質問にお答えします。

Q: 赤字決算だと、借入金のバランスを見直すのは難しいですか?

A: 赤字だからと諦める必要はありません。一時的な赤字でも、事業の将来性や改善計画を具体的に示すことができれば、銀行も相談に乗ってくれるケースは多いです。重要なのは、現状を正直に伝え、今後の返済計画を論理的に説明することです。まずは取引銀行の担当者に相談してみましょう。

Q: 短期借入金と長期借入金、金利はどちらが低いのが一般的ですか?

A: 一般的には、返済期間が短く銀行のリスクが低い「短期借入金」の方が金利は低い傾向にあります。ただし、これはあくまで一般的な話で、会社の信用力や担保の有無、利用する融資制度によって変動します。目先の金利の低さだけで短期借入を選ぶと、返済計画が厳しくなる可能性があるので注意が必要です。

Q: 個人事業主やフリーランスでも、このバランスの考え方は同じですか?

A: はい、全く同じです。事業規模に関わらず、「資金の使いみち」と「返済期間」を一致させるという原則は普遍的です。個人事業主の場合、生活費と事業費が混同しがちですが、事業用の借入については、この短期・長期バランスを意識することで、資金繰りは格段に安定します。

Q: 銀行から短期借入金の借り換えを断られました。どうすれば良いですか?

A: まずは断られた理由を冷静に分析することが重要です。業績が悪化している、事業計画の説得力が低いなど、必ず理由があるはずです。その原因を改善した上で再度交渉するか、日本政策金融公庫や信用保証協会の保証付き融資など、他の金融機関や制度を検討するのも一つの手です。一人で悩まず、私のような専門家に相談することも選択肢に入れてください。

Q: 最適なバランスを保つために、日頃から気をつけるべきことは何ですか?

A: 最も重要なのは、定期的に「資金繰り表」を作成し、お金の流れを把握することです。最低でも月に一度は試算表を確認し、本記事で紹介した「3つの黄金比率」をチェックする習慣をつけましょう。これにより、バランスが崩れる予兆を早期に察知し、先手を打つことができます。

まとめ

本記事では、短期借入金と長期借入金の最適バランス、すなわち「黄金比率」について、具体的な財務指標や企業の成長ステージごとの考え方を解説しました。

もう一度、大切なポイントを振り返ります。

  • 借入金のバランスは、資金繰りの安定と銀行からの信頼に直結する。
  • 「固定長期適合率」「運転資金バランス」「借入金月商倍率」の3つの指標で自社を客観的に把握する。
  • 銀行は「資金使途」と「返済期間」の一致を絶対視している。
佐々木 真帆

資金繰りは、会社の心臓部です。
そして、借入金のバランスを意識的に管理することは、その心臓を健やかに保つための、経営者であるあなたにしかできない重要な仕事です。

難しく考える必要はありません。
まずは、ご自身の会社の決算書を手に取り、本日ご紹介した「3つの黄金比率」を計算してみてください。

そこから、あなたの会社の強い財務体質づくりが始まります。
あの日の社長のように、悔し涙を流す経営者を一人でも減らしたい。それが私の心からの願いです。

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この記事を書いた人

佐々木真帆は、資金繰りコンサルタントとして活躍する金融のプロフェッショナルである。大手銀行での融資審査経験から独立コンサルタントとしての現在まで、一貫して「企業の生命線である資金繰り」に焦点を当て、その知見を惜しみなく共有している。

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