「昨日1ドル157円だったのが、今朝は159円になっていた…」
最近、このような急激な円安の進行に、頭を悩ませている中小企業の経営者の方も多いのではないでしょうか。
私自身、銀行員時代から多くの経営者様の資金繰り相談に乗ってきましたが、これほど急激な為替変動は、まさに「静かなる経営危機」とも言える状況です。
佐々木 真帆特に、海外から原材料を仕入れている製造業や、輸入商品を扱う小売業の皆様からは、「利益が日に日に削られていく」という悲痛な声が聞こえてきます。
しかし、円安はコントロールできない外的要因ですが、決してなすすべがないわけではありません。
本記事では、資金繰りコンサルタントとしての私の経験に基づき、円安が中小企業の経営に与える具体的なインパクトを解説するとともに、今日からすぐに実践できる4つの対策を、具体的なアクションプランとしてご紹介します。
【この記事の結論】円安に勝つ中小企業の資金繰り対策4選
- 為替ヘッジの活用
銀行で「為替予約」を行い、将来の支払額を確定させて為替リスクを回避する。 - 戦略的な価格転嫁
「価格交渉ハンドブック」や客観的データを活用し、丁寧な交渉で適正な値上げを実現する。 - コスト構造の見直し
仕入れ先の分散や聖域なき経費削減を行い、利益体質を根本から改善する。 - 公的支援のフル活用
「セーフティネット保証5号」や補助金、商工会議所などの無料相談を積極的に利用する。


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円安が中小企業に与える「輸出」と「輸入」2つのインパクト
円安の影響は、企業の業態によって光と影、2つの側面があります。まずは、自社がどちらの側面にいるのかを正しく認識することが第一歩です。
輸出企業にとっての追い風(メリット)
円安は、海外に製品を販売する輸出企業にとっては、基本的に「追い風」となります。理由はシンプルで、海外で得た外貨(ドルなど)を円に換金する際に、手元に残る円が増えるからです。
例えば、1万ドルの製品を輸出した場合を考えてみましょう。
- 1ドル = 130円の場合:1万ドル × 130円 = 130万円の売上
- 1ドル = 150円の場合:1万ドル × 150円 = 150万円の売上
このように、同じ製品を同じ価格で販売しても、円安になるだけで売上が20万円も増加するのです。実際に、中小企業基盤整備機構の調査では、輸出企業の約34%が円安によって輸出額が増加したと回答しています。
ただし、手放しでは喜べません。海外の取引先から「円安で儲かっているのだから、ドル建ての価格を下げてほしい」という値下げ要求を受ける可能性や、そもそも原材料を輸入に頼っている場合は、そのコスト増で利益が相殺されてしまうケースもあるため、注意が必要です。
輸入企業にとっての向かい風(デメリット)
一方で、海外から原材料や商品を仕入れている輸入企業にとっては、円安は深刻な「向かい風」となります。仕入れコストが直接的に増大し、利益を圧迫するからです。
私がコンサルティングを担当しているあるアパレル企業は、海外の工場で製品を生産し、日本で販売しています。先日、その社長から悲痛な相談を受けました。
「佐々木さん、大変です。ドル建てで支払っている部品の価格が、この円安で実質2割も上がってしまいました。このままでは、利益がほとんどなくなってしまいます…」
これは、多くの輸入企業が直面している現実です。日本商工会議所の調査では、実に中小企業の54.8%が円安を「デメリットが大きい」と感じており、その理由として88.6%が「原材料などの仕入れ価格上昇」を挙げています。
この仕入れコストの増加は、企業のキャッシュフロー(現金の流れ)に直接的なダメージを与えます。売上は変わらないのに、出ていくお金だけが増えていく。これが、円安が引き起こす資金繰り悪化の正体です。
あなたの会社は大丈夫?円安時代の資金繰りセルフチェック
では、あなたの会社の資金繰りは、この円安の荒波に耐えられるでしょうか?不安を抱えたままでは、的確な経営判断はできません。まずは、自社の状況を客観的に把握するためのセルフチェックを行いましょう。
資金繰り表で確認すべき3つの重要指標
お手元に資金繰り表や試算表をご用意ください。そして、以下の3つの指標を計算してみましょう。これらは、会社の「現金の回収と支払いのサイクル」を示す重要な健康診断項目です。
| 重要指標 | 計算式 | 円安局面でのチェックポイント |
|---|---|---|
| 1. 売上債権回転期間 | 売上債権 ÷ 平均月商 | 回収が遅れていないか?長期化は資金繰り悪化のサイン。 |
| 2. 棚卸資産回転期間 | 棚卸資産 ÷ 平均月商 | 在庫が過剰になっていないか?売れない在庫は現金を生まない。 |
| 3. 買入債務回転期間 | 買入債務 ÷ 平均月商 | 支払いが早すぎないか?特にドル建ての支払いは円安で膨らむ。 |



特に、海外への支払いがドル建ての場合、買入債務回転期間には注意が必要です。この期間が短いほど、円安の影響を早く、そして大きく受けることになります。自社の支払いサイトが適正か、見直す良い機会かもしれません。
半年後のキャッシュフローを予測する
次に、「もし今の為替レート(例:1ドル157円)が半年続いたら、自社のキャッシュフローはどうなるか?」という簡易的なシミュレーションを行ってみましょう。
難しく考える必要はありません。Excelなどを使って、今後半年間の売上予測と、現在の為替レートを反映させた仕入れコスト(支払額)を計算し、手元資金がどのように推移するかを予測するのです。
この「備える経営」の姿勢こそが、先行き不透明な時代を乗り切るための第一歩です。予測される資金ショートの額が分かれば、今から対策を打つことができます。
今すぐできる!円安に負けない4つの資金繰り対策
自社の状況を把握できたら、いよいよ具体的な対策の実行です。ここでは、私がクライアントに常に提案している、即効性と実用性の高い4つの対策をご紹介します。
対策1:為替ヘッジで将来の為替レートを固定する
「為替ヘッジ」と聞くと、難しそうだと感じるかもしれません。しかし、中小企業でも簡単に利用できる代表的な手法が「為替予約」です。
これは、銀行などの金融機関と「将来の特定の日に、特定の為替レートで外貨を売買する」という契約を結ぶものです。銀行員だった頃の経験から言えば、これは決して難しい金融商品ではありません。
例えば、輸入企業が3か月後に支払う予定の1万ドルの仕入れ代金があるとします。その際に銀行で「3か月後に1万ドルを1ドル155円で買う」という予約をしておけば、たとえ3か月後に1ドル160円、170円と円安が進んでも、必ず155円でドルを買うことができます。 これにより、将来の支払額が確定し、安心して事業計画を立てられるのです。
もちろん、予約したレートより円高になった場合は機会損失が発生しますが、これは「将来の安心を買うための保険料」と考えるべきです。急激な円安で大きな損失を被るリスクと比較すれば、決して高いコストではないはずです。まずは取引銀行に相談してみましょう。
対策2:勇気ある「価格転嫁」を戦略的に実行する
コストが上がっているのに、販売価格を据え置いていては、利益が削られる一方です。今こそ、勇気を持って「価格転嫁(値上げ)」を検討すべき時です。
「そんなことをしたら、取引を打ち切られてしまう…」
その不安は、私も痛いほど分かります。だからこそ、一方的な「値上げ通告」ではなく、丁寧な「価格交渉」が不可欠なのです。
その際にぜひ参考にしていただきたいのが、中小企業庁が公開している「価格交渉ハンドブック」です。このハンドブックには、交渉の準備段階から具体的な進め方まで、実践的なノウハウが詰まっています。
私が法人営業を担当していた経験から言える成功の鍵は、以下の3つです。
- 客観的なデータの提示:原材料費や輸送費がどれだけ上昇したか、具体的なデータを示す。
- 自社の経営努力の説明:コスト削減など、自社でできる努力は尽くしていることを伝える。
- 前向きな理由の提示:「品質やサービスを維持し、今後も安定的に供給するため」という、双方にとってメリットのある理由を強調する。
誠実な交渉に対して、多くの取引先は理解を示してくれます。毎年3月と9月は政府が定める「価格交渉促進月間」でもあります。この機会を追い風に、一歩踏み出してみましょう。
対策3:コスト構造を見直し、聖域なき削減を
価格転嫁と同時に、社内のコスト構造にも改めてメスを入れる必要があります。円安は、自社の無駄を洗い出す良い機会でもあります。
仕入れ先の多様化
特定の輸入先に依存していませんか?国内のサプライヤーを探したり、円以外の通貨で取引できる国(例:東南アジア)を開拓したりすることで、為替リスクを分散できます。
共同仕入れ
同業者と協力して共同で仕入れることで、価格交渉力を高めることも有効です。
聖域なき経費削減
本当に必要な経費か、改めて全ての項目を洗い出してみましょう。ペーパーレス化、出張規定の見直し、広告宣伝費の費用対効果の検証など、できることは数多くあります。
対策4:公的支援や制度融資をフル活用する
国や地方自治体は、円安などの経済環境の変化で影響を受ける中小企業のために、様々な支援策を用意しています。これらを活用しない手はありません。
セーフティネット保証制度
業況が悪化した中小企業を支援するための信用保証制度です。特に「5号認定」は、幅広い業種が対象となり、通常の保証枠とは別枠で融資を受けやすくなります。
各種補助金・助成金
事業再構築補助金やIT導入補助金など、設備投資や販路開拓に使える補助金は多数あります。
専門家による無料相談
商工会議所や「よろず支援拠点」では、資金繰りに関する専門家の無料相談が受けられます。
まずは、顧問税理士やメインバンク、そして最寄りの商工会議所に「今、使える制度はありませんか?」と相談してみてください。政府も2025年11月には、中小企業向けに1兆円規模の支援を行うと発表しており、積極的に情報を集めることが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q: 円安はいつまで続くのでしょうか?
A: 為替相場の予測は専門家でも難しいのが現状ですが、主な変動要因として「日米の金利差」が挙げられます。米国の利上げが続けば円安傾向が、逆に利下げに転じれば円高方向へ動く可能性があります。
しかし、大切なのは、相場の予測に一喜一憂するのではなく、どちらに転んでも対応できる「強い財務体質」を今のうちから作っておくことです [9]。
Q: 為替ヘッジはコストがかかるので躊躇してしまいます。
A: 確かに為替予約には手数料がかかりますが、それは「将来の安心を買うための保険料」と考えることができます。急激な円安で大きな損失を被るリスクと比較すれば、決して高いコストではないはずです。まずは少額からでも試してみて、その効果を実感してみることをお勧めします。
Q: 価格転嫁をお願いしたら、取引を打ち切られないか心配です。
A: その不安は非常によく分かります。だからこそ、一方的な通告ではなく、丁寧な「交渉」が不可欠なのです。コスト上昇の客観的データ、自社の経営努力、そして何よりも「今後も安定的に高品質な製品・サービスを供給するため」という前向きな姿勢を伝えることが重要です。
私の経験上、誠実な交渉に対して、多くの取引先は理解を示してくれます。
Q: 輸出もしているので、円安はメリットもあるはずでは?
A: おっしゃる通り、輸出企業にとっては売上増加のチャンスです。しかし、原材料を輸入に頼っている場合、そのメリットが相殺されてしまうケースも少なくありません。自社の「輸出によるプラス」と「輸入によるマイナス」を正確に把握し、トータルで利益がどうなるのかを冷静に分析することが重要です。
Q: 資金繰りが本当に厳しくなったら、どこに相談すれば良いですか?
A: まずは、顧問税理士やメインバンクに相談するのが第一歩です。それに加えて、国の中小企業支援拠点である「よろず支援拠点」や、各地の「商工会議所」でも専門家による無料相談が受けられます。手遅れになる前に、早めに専門家の知恵を借りることを強くお勧めします。私のような独立系のコンサルタントも選択肢の一つです。
まとめ:円安は、経営体質を見直す「機会」である
本日は、円安が中小企業の資金繰りに与えるインパクトと、具体的な4つの対策について解説しました。
円安という荒波は、私たち中小企業にとって大きな試練ですが、見方を変えれば、自社の経営体質を見直し、より強固な事業基盤を築くための絶好の機会とも言えます。
重要なのは、
- キャッシュフローの見える化
- 為替ヘッジ
- 価格転嫁
- コスト削減と公的支援の活用
という4つの対策を、他人事ではなく「自分事」として、今日から一つでも実行に移すことです。この記事が、皆様の会社の資金繰り改善の一助となれば、これほど嬉しいことはありません。


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