企業の資金調達手段としてファクタリングが注目されるなか、経理担当者の皆様は「仕訳や税務処理が難しいのではないか」と感じていらっしゃるかもしれません。
私自身、法人営業部門で融資業務に携わっていた頃、急激な受注増によりキャッシュフロー不足に悩む中小企業の方々を目の当たりにしました。
その際に、ファクタリングをうまく活用して無事に資金繰りを乗り越えた事例がきっかけで、このスキームの専門性を深めたいと考えるようになったのです。
とはいえ、会計上「売掛金の譲渡」として扱われるファクタリングは、融資とは仕訳が大きく異なります。
消費税・法人税との関係も複雑に思えるかもしれません。
そこで本記事では、ファクタリングの仕訳処理から税務上の注意点まで、実務に役立つポイントをわかりやすく解説いたします。
ファクタリング導入を検討している方はもちろん、すでに利用中の方でも「自社の処理は正しいのか」を再確認いただける内容です。
ぜひ最後までご覧いただき、ファクタリングを正しく活用しながら安全な経理処理を進めてみてはいかがでしょうか。

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ファクタリング仕訳の基礎
ファクタリングは、企業が保有する売掛金をファクタリング会社に譲渡し、支払期日前に資金化する手法です。
金融機関からの融資とは異なるため、経理処理も「負債計上」ではなく「売掛金の売却処理」を行う点が大きな特徴となります。
ファクタリングの基本概念と契約形態
ファクタリングには、主に下記の2形態が存在します。
2者間ファクタリング
- 売掛先(取引先)へ通知を行わず、ファクタリング会社と利用企業の2社間で完結する
- 資金化のスピードが比較的速い
- 債権譲渡登記を行うケースが多く、登記費用などのコストが発生
- 売掛先が支払ってきた代金は、一旦利用企業が受け取り、ファクタリング会社へ返済する流れ
3者間ファクタリング
- 売掛先に譲渡の事実を通知し、売掛先・ファクタリング会社・利用企業の3社間で契約
- 売掛先からの支払いはファクタリング会社へ直接行われる
- 手数料率は2者間より低いことが多いが、取引先の協力が必要
いずれの形態でも、契約時点で売掛金は「譲渡」されます。
2者間ファクタリングの場合は債権譲渡登記を行うことで、第三者に対する対抗要件を満たす仕組みになっているのです。
2者間ファクタリングと3者間ファクタリングの違い(仕訳の側面から比較)
観点 | 2者間ファクタリング (仕訳の観点) | 3者間ファクタリング (仕訳の観点) |
---|---|---|
契約当事者 | – 利用企業 – ファクタリング会社 | – 利用企業 – ファクタリング会社 – 売掛先(取引先) |
債権譲渡登記の必要性 | – 原則必須(対抗要件確保のため) – 登記費用や司法書士報酬が発生 | – 不要(売掛先への通知と承諾で対抗要件を確保) |
手数料率の傾向 | – やや高め(10~20%以上になる場合も) | – 低め(数%~10%前後) |
仕訳処理のフロー | 1. 売掛金→未収入金 に振り替え 2. ファクタリング会社から差引手数料後の金額が入金(売上債権売却損等を計上) 3. 取引先からの実際の支払い は一度「預り金」として処理し、ファクタリング会社へ返済 | 1. 売掛金→未収入金 に振り替え 2. ファクタリング会社から差引手数料後の金額が入金(売上債権売却損等を計上) 3. 取引先への通知 により売掛先がファクタリング会社へ直接支払いするため、預り金の仕訳が不要 |
メリット | – 取引先に知られずに資金化が可能(売掛先への通知不要) – 契約手続きが比較的簡単 | – 手数料率が低い傾向 – 売掛先からファクタリング会社へ直接入金されるため、預り金処理を省略できる |
デメリット・リスク | – 手数料率が高くなりやすい – 債権譲渡登記費用がかかる – 預り金仕訳などステップが増える | – 取引先への通知・承諾が必須 – 取引先がファクタリングに否定的だと難航する可能性 |

ファクタリングを利用するメリット・デメリット
ファクタリングには、資金繰りを大幅に改善できるメリットがある一方、リスクやコスト面でのデメリットも存在します。
企業経営においては、以下の点を踏まえて総合的に判断することが大切です。
① メリット
- 早期に売掛金を現金化することで、キャッシュフローを安定化できる
- 銀行融資とは異なり、決算書の負債が増えにくい(オフバランス化)
- 売掛先の倒産リスクをファクタリング会社が負う(※ノンリコース契約の場合)
② デメリット
- 手数料負担により利益が圧迫される可能性がある
- 2者間ファクタリングの場合は債権譲渡登記の費用が発生
- 悪質業者による不正手数料やトラブルに巻き込まれるリスクもある
私が法人営業をしていた頃は、「銀行融資の審査を待つ余裕がない」「取引先への信用を落としたくない」といった経営者の声をよく耳にしていました。
こうした背景から、ファクタリングは「素早く資金調達をしたい」「バランスシートを圧迫せずに現金を確保したい」企業にとって有効な選択肢になり得ます。
ただし、手数料率や契約形態に応じたリスク・コストもしっかりと認識しておくことが重要です。

ファクタリング仕訳の具体例
ここでは、実際の仕訳処理を例示します。
ファクタリングを行うタイミングや契約形態によって細部は変わりますが、「売掛金を帳簿から外して手数料を費用計上する」という点は共通です。
売掛金譲渡時の仕訳処理
たとえば、売掛金100万円をファクタリングし、手数料10万円が発生し、90万円が入金されたケースを想定してみましょう。
1.契約締結時:売掛金を未収入金に振り替える
借方:未収入金 1,000,000円
貸方:売掛金 1,000,000円
- この時点で「譲渡契約」により、通常の売掛金勘定から外します
2.ファクタリング会社から入金された時:手数料を費用計上
借方:普通預金 900,000円
借方:売上債権売却損 100,000円 ←ファクタリング手数料の費用
貸方:未収入金 1,000,000円
- 売掛金100万円のうち、90万円が振り込まれ、10万円を損失(費用)として計上します
- ファクタリング手数料を「売上債権売却損」や「雑損失」「支払手数料」などで処理するケースもあります
3.売掛先から入金がある場合(2者間ファクタリング)
- 取引先が支払ってきたお金は、一旦「預り金」で受け取り、ファクタリング会社へ返済する仕訳を行います
- 3者間ファクタリングの場合は、直接ファクタリング会社が回収するため、このステップは不要となります
特に2者間の場合、売掛先を巻き込まないメリットがある反面、登記費用など追加コストがかかる点も押さえておきたいところです。
回収不能リスクと貸倒引当金の扱い
ファクタリングで売掛金を譲渡した場合、売掛金は自社の資産から外れます。
よって、貸倒引当金を計上している売掛金をファクタリングするときは、その分の引当金を取り崩す必要があります。
ノンリコース契約(償還請求権なし)の場合
- 売掛金は完全に自社債権から消滅するため、貸倒リスクはファクタリング会社側に移転
- 自社で貸倒引当金を計上する必要はない
リコース契約(償還請求権あり)の場合
- 売掛先が倒産等で支払不能になった際、ファクタリング会社から返済を求められる可能性がある
- 実質的に「売掛金担保融資」に近く、貸倒引当金の扱いが複雑になるケースあり
💡 貸倒引当金の取り崩し例
借方:貸倒引当金 XXX円
貸方:売掛金 XXX円
(↑ファクタリング譲渡前に設定されていた引当金を相殺するイメージ)
- その後、ファクタリング譲渡にかかる仕訳を行う
償還請求権の有無は、契約書に明示されるケースがほとんどです。
経理担当者としては、ファクタリング会社と締結する段階で「ノンリコースかリコースか」をしっかり確認しておくと安心です。

税務上の留意点
ファクタリングは売掛金の譲渡であり、融資ではありません。
よって、「消費税がどうなるか」「法人税上の費用処理はどうなるか」など、他の資金調達手段とは異なる注意点があります。
消費税の課税取引と非課税取引
ファクタリング手数料
- 一般的に、金銭債権の譲渡は消費税法上の非課税取引とみなされる
- したがって、ファクタリングによる買取代金や手数料は消費税の課税対象外となる場合が多い
印紙税や登録免許税
- 契約書に貼付する印紙税や債権譲渡登記の登録免許税は非課税
- 一方、司法書士へ支払う報酬は課税取引となるため、仮払消費税として処理する必要がある
法人税・所得税への影響
ファクタリング手数料(売掛債権売却損など)
- 原則として損金算入が認められる
- 利息ではなく「債権売却損」や「支払手数料」に区分されるため、経費として処理可能
ファクタリング契約書の印紙税
- 債権譲渡契約に該当するため、所定の収入印紙を貼付しなければならない
- これも租税公課として損金計上が可能
源泉徴収の有無
- ファクタリング会社へ支払う「手数料」に対しては源泉徴収を行いません(通常は法人間取引)
- ただし、司法書士や弁護士に支払う報酬は源泉徴収が必要になる場合あり
経費処理のタイミング
- 発生主義に基づき、ファクタリング契約成立時または入金時点で計上する必要があります。
- 手数料を後からまとめて計上すると、期間損益のズレが生じて税務上のリスクがあります。
ファクタリング導入前に押さえておきたいこと
ファクタリングはあくまで「売掛金の早期資金化」手段であり、手数料負担が生じます。
導入にあたっては、以下のような点を整理しておくとスムーズです。
ファクタリング会社選び
- 手数料率が極端に高くないか
- 2者間・3者間のどちらに強みがあるか
- 法的書類や契約内容が明朗か
- 悪質業者ではないか(事前の口コミ・評判調査)
社内フローの整備
- 経理・財務・営業間で「どの売掛金をファクタリングするか」を共有
- 2者間の場合、取引先からの入金があった際に預り金処理を忘れないようにする
- 登記費用や印紙税、司法書士報酬などのチェックリスト化
リスク管理
- ノンリコース契約かリコース契約か
- ファクタリングを常態化しすぎると、利益を圧迫する恐れ
- 銀行融資など他の資金調達手段との比較検討も必要
よくある質問(FAQ)
- ファクタリングの契約形態が2者間と3者間で経理処理はどう変わりますか?
-
2者間ファクタリングでは、売掛先が払ってきたお金を一旦自社が受け取り、ファクタリング会社へ返済するため「預り金」の仕訳が発生します。
一方、3者間ファクタリングでは売掛先がファクタリング会社へ直接支払うので、預り金処理は不要です。
また、2者間では債権譲渡登記費用も考慮しましょう。 - 手数料をまとめて後から一括計上しても問題ないでしょうか?
-
原則として発生主義に基づき、ファクタリング契約の段階または資金受領時点で計上する必要があります。
一括計上すると、期間損益のズレや税務リスクが生じる可能性があります。 - 消費税の課税対象となる手数料と非課税となる手数料の線引きは?
-
ファクタリング手数料は通常、金融取引(債権譲渡)とされ非課税扱いが一般的です。
ただし、契約形態や実態によっては一部例外も考えられるため、疑問があれば税理士など専門家に確認すると良いでしょう。 - 貸倒引当金を過大に計上していた場合、後で修正が必要ですか?
-
ファクタリングで売掛金が消滅したタイミングで、引当金を取り崩す仕訳が必要です。
過年度分に遡る場合は修正申告が必要になるケースもあるため、慎重に確認してください。 - ファクタリング会社が倒産した場合、経理処理はどうなるのでしょうか?
-
ノンリコース契約であれば、売掛金は既に譲渡済みなので自社に直接的な影響は限定的です。
ただし、リコース契約の場合は返済義務が自社に戻ってくるリスクがあるため、契約書を確認して早めに対応する必要があります。
まとめ
ファクタリングは、売掛金を資金化できる便利なスキームですが、仕訳や税務対応を誤ると思わぬトラブルや追加コストが発生しかねません。
私がファクタリング専門会社で商品開発に携わっていた経験からも、経理担当者の方が正しい知識を持つことの大切さを強く感じています。
正確な仕訳処理(売掛金の譲渡と手数料の費用計上)、消費税の扱い、印紙税や源泉徴収などの周辺コストへの理解があれば、ファクタリングを安全に活用できるはずです。
┗ファクタリングを利用するときは、必ず契約書の内容を確認し、償還請求権の有無や手数料率を把握してください。
┗2者間の場合は、預り金処理の流れが抜け落ちないようチェックリストを用意すると安心です。
┗資金繰りが逼迫している場合でも、慌てて契約するのではなく複数社の比較や銀行融資との併用なども検討してみましょう。
最後に、ファクタリングが万能ではないことも忘れてはいけません。
キャッシュフローの改善や与信管理の視点も含め、長期的な経営戦略の中でファクタリングを「正しく知り、有効に使う」姿勢が大切です。
その一助として本記事の内容が少しでもお役に立てば幸いです。
ぜひファクタリングの仕組みを再確認し、経理・財務体制を万全に整えてみてはいかがでしょうか。

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