資金繰りに悩む経営者の皆様へ。元銀行員で、ファクタリングのプロでもある山崎正典です。
3社間ファクタリングを検討する際、「債権譲渡通知書を送ったら、売掛先との関係が悪化するのでは…」と不安で眠れない夜を過ごしていませんか? その気持ち、痛いほど分かります。

しかし、断言します。その不安は、ある「3つのステップ」を知るだけで、自信に変わります。
私はこれまで融資の最前線とファクタリング実務の両方で、数多くの経営者を見てきました。
その経験から断言できるのは、売掛先との関係を壊すのは「書類」ではなく、手続き前の「伝え方」に問題がある、という事実です。
この記事では、単なる書類の書き方だけでなく、売掛先との信頼関係を維持・強化するための「実践的なコミュニケーション術」を徹底解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたは不安なく手続きを進め、事業を力強く前進させる次の一歩を踏み出しているはずです。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違いについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
なぜ必要?債権譲渡通知と承諾の法的意味
まず、なぜこんな面倒に思える手続きが必要なのか、その本質からお話しさせてください。
これは、あなたとファクタリング会社、そして売掛先の三者を守るための、非常に重要な「ルール」なのです。
銀行員時代に見た「対抗要件」の重要性
私が銀行員だった頃、企業へ融資をする際に「売掛債権担保融資(ABL)」という商品を扱っていました。
この審査で最も重要視していたのが、これからお話しする「対抗要件(たいこうようけん)」がきちんと備えられているか、という点です。
はっきり言って、この対抗要件がなければ、契約書はただの紙切れも同然。
それくらい、金融の世界では絶対的なルールなのです。
この「対抗要件」とは、「この売掛債権の権利は、今や私が持っていますよ!」と、法的に第三者へ主張できる権利のことです。
ファクタリングは、あなたが持つ売掛債権(請求権)をファクタリング会社へ売却(譲渡)する取引です。
この債権譲却が法的に有効であることを証明するために、民法第467条で定められた手続き、それが「通知」または「承諾」なのです。
この手続きを踏むことで、ファクタリング会社は「確かにこの債権を買い取りました」と法的に主張でき、安心してあなたに資金を提供できるわけです。
「債務者対抗要件」と「第三者対抗要件」の違いとは?
少し専門的な話になりますが、非常に重要なので分かりやすく解説します。
対抗要件には2つのレベルがあります。
債務者対抗要件
- 誰に主張する?:債務者(=あなたの売掛先)
- どうやって?:あなたが売掛先に「債権を譲渡しましたよ」と通知するか、売掛先が「譲渡を承諾します」と認めること。
- 目的:売掛先が間違ってあなたに代金を支払ってしまうのを防ぐため。
第三者対抗要件
- 誰に主張する?:他の債権者など、全く関係のない第三者
- どうやって?:「確定日付のある証書」で通知または承諾を得ること。
- 目的:万が一、あなたが倒産してしまった場合などに、他の債権者から「その売掛金はこちらが差し押さえる!」と言われても、「いえ、この証書の日付の時点で、私が正当に譲り受けています」と主張するため。
簡単に言えば、「確定日付」とは、「その日に、その書類が確かに存在した」という公的な証明です。
この証明を得るための最も一般的な方法が「内容証明郵便」なのです。



ファクタリング会社が内容証明郵便にこだわるのは、自社を守るため、そして取引の安全性を確固たるものにするための、プロとして当然のリスク管理と言えます。
【雛形付】債権譲渡通知書の書き方と必須記載項目
ここからは、実際の書類について見ていきましょう。
まずは、あなた(譲渡人)から売掛先へ送る「債権譲渡通知書」です。
誰が作成し、誰が送るのか?
法律上、通知の義務は債権を譲渡した「譲渡人(あなた)」にあります。
ただし、実務上はファクタリング会社が雛形(テンプレート)を用意し、内容の作成を全面的にサポートしてくれるケースがほとんどです。
あなたは最終的な内容を確認し、自社の名前で送付する、という流れになります。
ファクタリング会社に作成を任せきりにせず、必ずご自身の目で記載内容、特に「どの債権か」を特定する情報(請求日、金額など)に間違いがないかを確認してください。
私が見たケースでは、請求書の番号が1桁違うだけで売掛先の経理担当者を混乱させ、入金が遅れるという小さな、しかし無駄なトラブルがありました。
必須記載項目と「なぜ必要か」の専門家解説
以下が、債権譲渡通知書の一般的な雛形と、各項目の解説です。
債権譲渡通知書
令和〇年〇月〇日
株式会社〇〇(売掛先の会社名)
代表取締役 〇〇 〇〇 様
〒〇〇〇-〇〇〇〇
東京都〇〇区〇〇一丁目〇番〇号
株式会社△△(あなたの会社名)
代表取締役 △△ △△ 印
拝啓
貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、早速ではございますが、弊社が貴社に対して有する下記の売掛債権を、令和〇年〇月〇日に、〇〇株式会社(ファクタリング会社名)に対し、譲渡いたしましたので、民法第467条第1項に基づき、本書面をもちましてご通知申し上げます。
つきましては、誠に恐縮ではございますが、下記債権のお支払いにつきましては、譲受人である〇〇株式会社の下記指定口座へお振込みいただきますよう、何卒お願い申し上げます。
敬具
記
1.譲渡対象債権の内容
- 請求年月日:令和〇年〇月〇日
- 請求金額:金〇〇〇,〇〇〇円
- 支払期日:令和〇年〇月〇日
2.債権譲受人
- 会社名:〇〇株式会社
- 所在地:〒〇〇〇-〇〇〇〇 東京都〇〇区〇〇…
- 連絡先:03-〇〇〇〇-〇〇〇〇
3.振込先指定口座
- 金融機関名:〇〇銀行 〇〇支店
- 口座種別:普通預金
- 口座番号:〇〇〇〇〇〇〇
- 口座名義:〇〇カブシキガイシャ
以上
必須項目 | なぜ必要か(専門家の解説) |
---|---|
譲渡の事実 | 「債権を譲渡しました」という明確な意思表示。曖昧な表現はトラブルの元です。 |
譲渡人・譲受人の情報 | 「誰が(あなたが)」「誰に(ファクタリング会社に)」譲渡したのかを特定します。 |
譲渡対象債権の特定 | 最重要項目です。請求日、金額、支払期日などを正確に記載し、「どの請求書のことか」を売掛先が一意に特定できるようにします。 |
譲渡日 | 債権譲渡がいつ行われたかを明確にする日付です。 |
振込先口座の変更 | 売掛先が誤ってあなたの口座に振り込んでしまうのを防ぐための、実務上極めて重要な指示です。 |
【雛形付】債権譲渡承諾書の書き方とチェックポイント
次に、売掛先に署名・捺印してもらう「債権譲渡承諾書」です。
これは、売掛先が「債権譲渡の事実を理解し、承諾しました」という意思表示をするための書類です。
承諾書が持つ「法的効力」と実務上の役割
売掛先から承諾書を取得することで、債権譲渡の事実がより確実なものになります。
これにより、ファクタリング会社は「売掛先が支払いを拒否するリスク」や「二重譲渡のリスク」を大幅に低減できます。
なぜ3社間ファクタリングの手数料は2社間より安いのか?
その最大の理由が、この「承諾書」の存在です。
ファクタリング会社にとって、売掛先の承諾は最大のリスクヘッジになります。
そのリスクが低減された分が、手数料としてあなたに還元されている、と考えてください。
承諾依頼時に渡す書類と記載項目のポイント
承諾書は、上記の「債権譲渡通知書」とセットで売掛先にお渡しするのが一般的です。
債権譲渡承諾書
令和〇年〇月〇日
〇〇株式会社(ファクタリング会社名) 御中
〒〇〇〇-〇〇〇〇
東京都〇〇区〇〇一丁目〇番〇号
株式会社〇〇(売掛先の会社名)
代表取締役 〇〇 〇〇 印
弊社は、株式会社△△(あなたの会社名)が貴社に対し、下記の債権を譲渡した件について承諾いたします。
つきましては、下記債権の弁済につきましては、株式会社△△ではなく、貴社の指定する銀行口座へ直接お支払いすることに異議がないことを、ここに証します。
記
1.対象債権の内容
- 請求年月日:令和〇年〇月〇日
- 請求金額:金〇〇〇,〇〇〇円
- 支払期日:令和〇年〇月〇日
以上
チェックポイント | なぜ必要か(専門家の解説) |
---|---|
承諾の意思表示 | 「承諾いたします」「異議がないことを証します」といった明確な文言で、売掛先の同意を確認します。 |
対象債権の確認 | 通知書と同様の内容を記載し、「この債権について承諾します」という対象を明確にします。内容に相違がないか、売掛先自身にも確認してもらう意味合いがあります。 |
債務者(売掛先)の情報 | 誰が承諾したのかを明確にするため、署名・捺印をいただきます。 |
承諾日 | いつ承諾の意思表示がなされたかを記録します。 |
【専門家が伝授】売掛先への通知と承諾依頼を円滑に進める3つのステップ
さて、ここからが本記事の核心部分です。
書類の準備はできても、「どうやって切り出せばいいのか…」という点が最大の悩みどころですよね。
元銀行員、そしてファクタリングのプロとして、関係性を壊さずに円滑に進めるための具体的な3ステップをお伝えします。
ステップ1:事前準備と「伝えるべきこと」の整理
銀行員時代、融資を申し込む経営者様を数多く見てきましたが、審査の結果を左右するのは、実は事業計画書の数字だけではありませんでした。



「なぜ今、資金が必要なのか」「その資金で会社をどうしたいのか」を、ご自身の言葉で熱意をもって語れるか。この「ストーリー」が、担当者の心証を大きく左右するのです。
これは、売掛先への説明でも全く同じです。準備が9割だと心得てください。
1. ファクタリング会社との連携
担当者と事前に打ち合わせ、「売掛先からこんな質問が来たら、どう答えるか」という問答集を一緒に作っておきましょう。プロの知見を借りない手はありません。
2. 伝える目的の明確化
なぜファクタリングを使うのか?その理由をポジティブな言葉で語れるように準備します。
- NG例: 「資金繰りが厳しくて…」「支払いが厳しくて…」
- OK例: 「大型案件の受注に伴い、仕入れ資金を先行確保するため」「取引を拡大し、さらなる成長を目指すための戦略的な資金調達です」「キャッシュフローを安定させ、より強固な経営基盤を築くため」
3. 必要書類の準備
「債権譲渡通知書」「債権譲渡承諾書」「返信用封筒」などをワンセットにして、すぐに渡せる(送れる)状態にしておきます。
ステップ2:関係性を壊さない「伝え方」の実践テクニック
伝える際は、メールや書類の送付だけで済ませるのではなく、必ず電話または対面で直接伝えるのが鉄則です。
誠意が伝わり、無用な憶測を防ぐことができます。
「〇〇様、いつも大変お世話になっております。株式会社△△の△△です。
本日は、今後の弊社とのお取引をより円滑に進めるため、ご相談がありお電話いたしました。
実は、今後の事業拡大を見据えまして、新たな資金調達の一環として、取引金融機関(※)の関連会社であるファクタリングサービスを利用することにいたしました。
(※ファクタリング会社が金融機関系の場合に有効な言い回し)
つきましては、誠に恐縮なのですが、貴社へご請求させていただいております〇月〇日支払予定の売掛金〇〇円を、そのファクタリング会社へ譲渡する手続きが必要となります。
後ほど、正式なご案内の書類を郵送させていただきますが、今後の振込先がファクタリング会社の口座に変更となる点だけ、ご承知おきいただけますでしょうか。
もちろん、貴社にご迷惑をおかけすることは一切ございませんし、弊社との取引関係もこれまでと何ら変わりはございませんので、ご安心ください。」
【ポイント】
- ポジティブな枕詞 → 「今後の取引を円滑にするため」「事業拡大のため」など、前向きな理由から入る。
- 簡潔に要点を → 難しい言葉は使わず、「振込先が変わります」という結論を分かりやすく伝える。
- 安心感の醸成 → 「ご迷惑はおかけしません」「取引関係は変わりません」という言葉を添え、相手の不安を先回りして解消する。
ステップ3:書類の送付と丁寧なフォローアップ
口頭での説明が終わったら、速やかに準備しておいた書類を送付します。
送付方法
原則として「内容証明郵便」を利用します。
これは、あなたとファクタリング会社を守るための重要な手続きです。売掛先には「公的な手続きですので、このような形式で失礼いたします」と一言添えておくと丁寧です。
フォローコール
書類を送りっぱなしは絶対にNGです。
私の経験上、これが最も重要です。
書類が届いた頃を見計らって、「先日はありがとうございました。書類はお手元に届きましたでしょうか?ご不明な点などございませんか?」という一本の電話を入れましょう。
この丁寧なフォローがあるだけで、売掛先の担当者も安心して手続きを進めてくれます。承諾書の返送率も格段に上がります。
通知・承諾プロセスにおける注意点とトラブル回避策
最後に、私が現場で見てきた失敗事例と、それを避けるためのポイントをお伝えします。
よくある失敗事例から学ぶリスク管理
失敗例①:説明不足による関係悪化
事前連絡なしに、いきなり内容証明郵便を送りつけたA社。売掛先は「何かトラブルがあったのか?」と不信感を抱き、その後の取引がぎくしゃくしてしまいました。
失敗例②:担当者への丸投げ
ファクタリング会社の担当者に説明を丸投げしたB社。売掛先から自社の経営状況について質問された際、ファクタリング会社の担当者は答えられず、かえって信用不安を招いてしまいました。
失敗例③:書類の不備による手続き遅延
複数の債権をまとめて通知したため、どの債権のことか分かりにくくなっていたC社。売掛先の経理担当者が確認に手間取り、承諾書の返送が大幅に遅れてしまいました。



これらの失敗は、すべて「丁寧なコミュニケーション」と「事前の準備」で防ぐことができます。
もし売掛先に承諾を拒否されたら?
法的には、債権譲渡そのものを売掛先が拒否することはできません。
しかし、長年の取引関係などから、事実上「承諾書にハンコは押したくない」と言われてしまうケースも稀にあります。
そんな時でも、決してパニックになる必要はありません。
1. まずは理由をヒアリング
なぜ承諾できないのか、理由を冷静に伺いましょう。「手続きが面倒」「前例がない」といった理由であれば、再度丁寧に説明することで解決できる場合もあります。
2. すぐに担当者に相談
状況をすぐにファクタリング会社の担当者に共有してください。我々プロには、次の手が必ずあります。
3. 代替案の検討
- その売掛債権を諦め、他の売掛先の債権でファクタリングを申し込む。
- どうしてもその債権でなければならない場合は、2社間ファクタリングへの切り替えを検討する。(手数料は上がりますが、資金調達は可能です)
大切なのは、一人で抱え込まず、すぐに専門家であるファクタリング会社に相談することです。
よくある質問(FAQ)
Q: 債権譲渡通知書は、内容証明郵便で送る必要がありますか?
A: はい、強く推奨します。
内容証明郵便で送ることで「確定日付」が得られ、万が一、他の債権者との間で権利関係が争われた場合に、法的に自社の権利を主張するための強力な証拠(第三者対抗要件)となります。あなたとファクタリング会社を守るための、いわば「保険」です。
Q: 売掛先にファクタリングの利用を知られると、信用不安につながりませんか?
A: 伝え方次第で、むしろ計画的な経営姿勢を示す機会にもなります。
元銀行員の視点からも、借入だけに頼らず資金調達手段を多様化することは、ポジティブな経営戦略と捉えられます。「取引拡大のための資金確保」など前向きな理由を丁寧に説明することで、多くの場合はご理解いただけます。
Q: 債権譲渡承諾書に押す印鑑は、実印である必要がありますか?
A: 法的な必須要件ではありませんが、ファクタリング会社によっては実印と印鑑証明書の提出を求められる場合があります。
これは取引の確実性を高め、なりすましなどを防ぐためです。事前にファクタリング会社に確認し、売掛先にもその旨を伝えておくとスムーズです。
Q: 通知や承諾のタイミングはいつがベストですか?
A: ファクタリング会社との契約締結後、速やかに行うのが一般的です。
理想は、本記事で解説した通り、事前に売掛先の担当者に口頭で説明し内諾を得た上で、正式な書類を送付する流れです。これにより、売掛先の心理的なハードルを大きく下げることができます。
Q: 債権譲渡登記とは違うのですか?
A: はい、全く異なります。
債権譲渡登記は、法務局に登録することで第三者対抗要件を備える方法で、主に売掛先に通知をしない2社間ファクタリングで利用されます。
債権譲渡通知・承諾は、売掛先に対して直接行い、対抗要件を備える手続きであり、3社間ファクタリングでは必須となります。
まとめ:手続きの先にある、未来のための対話
3社間ファクタリングにおける「債権譲渡通知」と「承諾」は、単なる事務手続きではありません。
それは、あなたの会社の未来を創るために、最も大切なパートナーである売掛先と行う、重要なコミュニケーションの機会です。



元銀行員、そしてファクタリングの専門家としての私の経験から断言できるのは、丁寧な事前準備と、誠実な言葉で語りかけることこそが、円滑な手続きを実現する唯一の道だということです。
書類の書き方や送り方は、この記事を参考にすれば万全です。
しかし、それ以上に大切なのは、あなたの口から「なぜこれが必要なのか」を、前向きなストーリーとして語ること。
この記事で解説した「伝え方」のポイントを実践し、売掛先との良好な関係を維持しながら、事業成長のための資金調達を成功させてください。
資金繰りの悩みは、孤独です。
しかし、決して一人で抱え込まないでください。
私たちのような専門家は、いつでもあなたの隣で、明日への一歩をサポートするために存在しています。


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