ファクタリング契約書にサインする前、本当にその内容を理解できていますか?
元銀行員の私、山崎正典から見ると、多くの方が不利な契約とは知らずにサインしてしまい、かえって資金繰りを悪化させるケースが後を絶ちません。
本記事では、銀行で数々の中小企業融資を担当し、その後ファクタリング会社で商品開発まで手掛けたプロの視点から、契約書で絶対にチェックすべき「15のポイント」を徹底解説します。
手数料の内訳、償還請求権の隠れたリスク、そして悪質業者を見抜く法的知識まで、あなたの会社を守るための実践的なノウハウを、具体的な事例と共にお伝えします。
【この記事の結論】ファクタリング契約書で失敗しないための7つのチェックリスト
ファクタリング契約で不利な条件を押し付けられ、資金繰りを悪化させないためには、契約書にサインする前に以下の7つの重要ポイントを必ず確認してください。
- 契約形態は「債権譲渡契約」か?
「金銭消費貸借契約」という文言があれば、それは融資(貸付)であり、違法なヤミ金の可能性があります。 - 償還請求権は「なし(ノンリコース)」か?
売掛先が倒産しても返済義務がないことを確認します。「買戻し特約」は実質的な償還請求権ありとみなされるため要注意です。 - 手数料の内訳は明確か?
基本手数料の他に「登記費用」や「事務手数料」など、支払う費用の総額が具体的に記載されているか確認します。 - 債権譲渡登記は必須か?
2社間ファクタリングでは登記が必要な場合があります。登記費用(5万~15万円程度)の負担者と、契約終了後の「抹消手続き」についても確認しましょう。 - 担保・個人保証を求められていないか?
ファクタリングは債権の売買のため、原則として担保や個人保証は不要です。要求された場合は債権担保融資を疑いましょう。 - 遅延損害金は法外な利率ではないか?
支払いが遅れた場合の損害金が、年率20%を大幅に超えるような利率に設定されていないか確認します。 - 契約書の控えは必ずもらえるか?
契約内容の証明となるため、その場で控えを受け取るか、電子契約の場合はデータをダウンロードできるか必ず確認してください。
本文では、これらを含む15の全チェックポイントについて、元銀行員の視点から法的知識やトラブル回避策をさらに詳しく解説します。

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【基礎知識編】ファクタリング契約書とは?元銀行員が語る銀行融資との決定的な違い
ファクタリングは「債権譲渡契約」、融資は「金銭消費貸借契約」
ファクタリング契約を理解する上で最も重要なのは、その法的な位置づけです。
一言で言えば、ファクタリングは「債権の売買(債権譲渡契約)」であり、銀行融資は「お金の貸し借り(金銭消費貸借契約)」です。



私が銀行員だった頃、融資の稟議書で最も重視されたのは、その会社の返済能力、つまり「信用力」と「担保」でした。これは、万が一返済が滞った場合のリスクを銀行が負うからです。
一方、ファクタリングは、皆様がお持ちの「売掛金(請求書)」という資産をファクタリング会社に売却し、早期に現金化する取引です。そのため、審査で重視されるのは、皆様の会社ではなく、売掛金の支払い元である「売掛先」の信用力となります。
この根本的な違いが、審査のスピードや必要書類、そして契約書の内容に大きく影響してくるのです。
【元銀行員の視点】
銀行融資の審査では、過去数期分の決算書や事業計画書を精査し、何度も面談を重ねるため、どうしても1ヶ月以上の時間がかかります。しかし、ファクタリングは売掛先の信用力が中心となるため、最短即日で資金化できるスピード感が最大のメリットと言えるでしょう。資金繰りに窮する経営者にとって、このスピードの違いはまさに生命線となり得ます。
2社間・3社間で契約書の内容はどう変わる?
ファクタリングには、主に「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2つの契約形態があります。どちらを選ぶかによって、契約書の内容や注意すべき点が大きく異なります。
| 項目 | 2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング |
|---|---|---|
| 契約当事者 | 利用者、ファクタリング会社 | 利用者、ファクタリング会社、売掛先 |
| 売掛先への通知 | 不要 | 必要(債権譲渡の通知または承諾) |
| 手数料の相場 | 8%~18%程度 | 5%~10%程度 |
| 資金化スピード | 最短即日~数日 | 数日~数週間 |
| 債権譲渡登記 | 原則として必要 | 原則として不要 |
2社間ファクタリングは、売掛先に知られずに資金調達ができるため、多くの企業に利用されています。しかし、ファクタリング会社にとっては売掛金の存在確認が難しく、二重譲渡のリスクもあるため、手数料は高めに設定され、対抗要件を具備するために「債権譲渡登記」が求められることが一般的です。
一方、3社間ファクタリングは、売掛先から債権譲渡の承諾を得る必要があります。これにより、ファクタリング会社のリスクが大幅に低減されるため、手数料は安くなります。ただし、売掛先の協力が必要不可欠であり、資金化までに時間がかかる点がデメリットです。
【ファクタリング会社勤務時代の経験】
契約書を確認する際、2社間契約では特に「債権譲渡登記」に関する条項(ポイント5で詳述)と、万が一支払いが遅れた際の「債権譲渡通知」に関する条項(ポイント6で詳述)が重要になります。これらの条項が、利用者にとって一方的に不利な内容になっていないか、プロの目で厳しくチェックする必要があるのです。
【元銀行員の視点】契約書で最も重要な「リスク移転」の考え方
契約書を読み解く上で、法律の専門家でなくとも絶対に押さえておくべき本質的な考え方があります。それが「売掛金の回収リスクが、誰にあるのか」という点です。
真正なファクタリング(債権譲渡)では、売掛金の回収リスクは、債権を買い取ったファクタリング会社に移転します。つまり、万が一売掛先が倒産して売掛金が回収できなくなっても、その損失を被るのはファクタリング会社であり、利用者が責任を負う必要はありません。これを「償還請求権がない(ノンリコース)」状態と呼びます。
この「リスク移転」こそが、ファクタリングと貸付を法的に、そして実務的に分ける決定的な境界線なのです。



金融庁も、ファクタリングを装った貸付(偽装ファクタリング)に対して厳しい姿勢を示しており、その判断基準として「経済的に貸付けと同様の機能を有している」かどうかを重視しています。
【金融庁の注意喚起より】
譲渡した債権の回収(集金)がファクタリング業者から売主に委託されており、売主が集金できなかった場合に、
○ 売主が債権を買い戻すこととされている
○ 売主自身の資金によりファクタリング業者に支払をしなければならないこととされている
などといったようなものについては、貸金業に該当するおそれがあります。
私が銀行員として融資判断を行っていた際も、取引の実態がどうなっているのかは常に最重要の確認事項でした。契約書の表面的な文言だけでなく、実質的に誰がリスクを負っているのか。この視点を持つことが、不利な契約から自社を守るための最強の武器となるのです。
【実践チェック編】元銀行員が教える!ファクタリング契約書15のチェックポイント
ポイント1:契約形態は「債権譲渡契約」か?
まず、契約書の表題や目的条項を確認してください。
ここに「債権譲渡契約書」「売掛債権売買契約書」といった文言が明確に記載されていることが大前提です。もし「金銭消費貸借契約書」や「貸付契約書」といったタイトルになっている場合、それはファクタリングではなく、単なる融資です。
悪質な業者は、ファクタリングを装いながら実質的には高金利の貸付を行おうとします。契約書の名称は、その取引の性質を示す最も基本的な指標です。絶対に軽視しないでください。
【要注意ワード】
- 金銭消費貸借
- 貸付、融資
- 債権担保ローン
これらの言葉が契約書に含まれていたら、それは偽装ファクタリングの可能性が極めて高いと判断し、契約を見送るべきです。
ポイント2:譲渡する「売掛債権」は明確に特定されているか?
次に、どの売掛金を譲渡するのかが、誰の目にも明らかになる形で記載されているかを確認します。
具体的には、以下の項目が契約書(または添付の「譲渡債権リスト」など)に明記されている必要があります。
- 売掛先の名称・住所
- 債権の金額
- 支払期日
もし、「貴社が保有する一切の売掛債権」や「将来発生する債権を含む」といった曖昧な表現が使われている場合は注意が必要です。これは「包括根保証」に近い考え方で、意図しない債権まで譲渡の対象とされ、将来の資金調達の選択肢を狭めてしまうリスクがあります。
私がファクタリング会社にいた頃、優良な会社ほど、譲渡対象の債権を請求書単位で厳密に特定していました。これは、リスク管理を徹底している証拠でもあります。
ポイント3:手数料の「内訳」は具体的か?
手数料は、ファクタリングを利用する上で最も気になる点の一つでしょう。契約書では、手数料率だけでなく、その内訳が具体的かつ網羅的に記載されているかを確認してください。
単に「手数料20%」としか書かれていない契約書は非常に危険です。なぜなら、後から「登記費用」「印紙代」「事務手数料」「出張費」など、様々な名目で追加費用を請求される可能性があるからです。
優良なファクタリング会社は、見積書や契約書の段階で、手数料に含まれるものと、別途発生する可能性のある費用を明確に区分して提示します。
| 項目 | 内容 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| ファクタリング手数料 | 債権買取の対価 | 2社間:8~18%、3社間:5~10% |
| 債権譲渡登記費用 | 登記手続きの実費・司法書士報酬 | 5万円~15万円程度 |
| 印紙代 | 契約書に貼付する収入印紙 | 契約金額による |
| その他諸経費 | 交通費、出張費など | 実費 |
【元銀行員の視点】
銀行融資の場合、金利以外に保証料や事務手数料が発生しますが、その体系は非常に明確です。ファクタリングも同様に、費用の透明性が会社の信頼性を測るバロメーターとなります。「手数料はこれだけです」と言いながら、契約書の隅に小さく「諸経費は別途」と書かれているケースを何度も見てきました。必ず隅々まで目を通し、不明な点はその場で質問する姿勢が重要です。
ポイント4:償還請求権は「なし(ノンリコース)」になっているか?
これは15のポイントの中で最も重要な項目と言っても過言ではありません。
契約書に、「償還請求権なし」「ノンリコース」という文言、あるいは「債務者(売掛先)が支払不能に陥った場合でも、譲渡人(利用者)はその責任を負わない」といった趣旨の条文が明確に記載されていることを必ず確認してください。
これがなければ、ファクタリングを利用する最大のメリットである「売掛金の回収リスクからの解放」が実現されません。
逆に、以下のような条項は、実質的に償還請求権あり(リコース)とみなされる可能性があり、偽装ファクタリングの典型的な手口です。
- 買戻し特約:「売掛先が期日に支払わなかった場合、譲渡人は当該債権を買い戻さなければならない」
- 保証条項:「譲渡人は、債務者による債務の履行を保証する」
金融庁も、こうした実質的な貸付に対しては厳しい姿勢を示しています。償還請求権の有無は、そのファクタリングが合法的で健全な取引であるかを見極めるための、決定的なリトマス試験紙なのです。
ポイント5:「債権譲渡登記」の有無と費用負担は?
2社間ファクタリングを利用する場合、多くの場合で「債権譲渡登記」が求められます。
これは、ファクタリング会社が「この債権は確かに譲り受けました」ということを法的に公示し、第三者(他の債権者など)に対抗するための手続きです。特に、利用者が同じ債権を別のファクタリング会社にも売却する「二重譲渡」を防ぐ目的があります。
契約書で確認すべきは、以下の2点です。
- 登記の要否:債権譲渡登記を行うのか、行わないのか。
- 費用負担:登記にかかる費用(登録免許税や司法書士報酬)は誰が負担するのか。
登記費用は、一般的に5万円~15万円程度かかり、利用者負担となるケースが多いです。この費用が手数料とは別にかかることを事前に認識しておく必要があります。
【トラブル事例】
私が相談を受けたある企業は、契約終了後もファクタリング会社が登記を抹消してくれず、銀行から新規融資を受ける際に「この登記は何ですか?」と問われ、融資がストップしてしまったケースがありました。契約書には、契約終了後の登記抹消手続きについても明記されているか、必ず確認しましょう。
ポイント6:「債権譲渡通知」の条件はどうなっているか?
2社間ファクタリングは、売掛先に通知せずに進められるのがメリットですが、契約書には「いかなる場合に売掛先に通知できるか」という条件が定められていることがほとんどです。これを「通知留保の解除条項」や「対抗要件具備の特則」などと呼びます。
一般的には、利用者がファクタリング会社への支払いを遅延した場合などに、ファクタリング会社が債権を保全するために売掛先へ通知する権利を持つ、という内容です。



ここでチェックすべきは、その通知のトリガー(引き金)となる条件が、利用者にとって一方的に不利なものになっていないかという点です。
例えば、「ファクタリング会社がその必要を認めたとき」といった曖昧な条項は危険です。ファクタリング会社のさじ加減一つで、いつでも売掛先に通知されてしまうリスクを抱えることになります。
【交渉のポイント】
「利用者の支払いが〇日以上遅延した場合」や「利用者が破産手続きを開始した場合」など、通知できる条件を具体的かつ客観的な事実に限定するよう、交渉すべきです。誠実なファクタリング会社であれば、こうした交渉に応じてくれるはずです。
ポイント7:不当な「担保・保証人」を求められていないか?
冒頭で説明した通り、ファクタリングは債権の「売買」です。そのため、本来、代表者の個人保証や不動産担保などを要求されることはありません。
もしファクタリング会社から個人保証や担保を求められた場合、その取引は「債権担保融資」とみなされる可能性が非常に高く、貸金業法が適用されます。その会社が貸金業登録をしていなければ、それは違法なヤミ金融業者です。
私が銀行員だった頃でさえ、融資の際には必ずしも個人保証が必須ではありませんでした(経営者保証ガイドラインの普及によります)。ましてや、債権の売買であるファクタリングで個人保証を求めるのは、取引の性質上、極めて不自然です。
契約書に保証に関する条項があった場合は、その時点で契約を中止し、別のファクタリング会社を探すことを強くお勧めします。
ポイント8:支払いが遅れた場合の「遅延損害金」は法外ではないか?
ファクタリング契約では、利用者が売掛先から回収した売掛金をファクタリング会社へ支払う期日が定められています。もし、その支払いが遅れた場合に備えて、「遅延損害金」の条項が設けられているのが一般的です。
ここで確認すべきは、その利率が法外なものでないかという点です。
ファクタリングは貸金業ではありませんが、遅延損害金については、利息制限法や消費者契約法が類推適用されるべきと考えられています。したがって、年率20%を超えるような遅延損害金は、公序良俗に反し無効と判断される可能性が高いです。
悪質な業者は、年率換算すると数百%にもなるような、暴利的な遅延損害金を設定している場合があります。契約書に記載されている損害金の率を必ず確認し、少しでも高いと感じたら、年率に換算して計算してみることが重要です。
ポイント9:一方的な「契約解除条項」になっていないか?
契約書には、どのような場合に契約を解除できるかを定めた「解除条項」が必ず含まれています。
利用者に契約違反があった場合にファクタリング会社が契約を解除できるのは当然ですが、問題は、ファクタリング会社側の都合で、いつでも一方的に契約を解除できるような条項が含まれていないかです。
例えば、「ファクタリング会社が取引の継続を不適当と判断したとき」といった条項は、非常に曖昧で危険です。資金繰りのためにファクタリングを利用しているにもかかわらず、相手の都合で突然契約を打ち切られては、かえって経営が不安定になってしまいます。
契約解除の条件は、双方にとって公平で、客観的な事実に基づいている必要があります。利用者側に不利な内容になっていないか、注意深く確認しましょう。
ポイント10:「表明保証条項」に無理な内容はないか?
「表明保証条項」とは、契約を締結するにあたり、譲渡する債権や利用者自身に関する情報が真実かつ正確であることを表明し、保証する条項です。
例えば、以下のような内容が一般的です。
- 譲渡する売掛債権は、有効に存在し、相殺や差し押さえなどの問題がないこと。
- 利用者は、反社会的勢力ではないこと。
この条項自体は、取引の安全性を確保するために必要不可欠なものです。しかし、問題となるのは、その保証させられる内容が、過度に広範で無理なものになっていないかという点です。
【隠れリコース条項に注意!】
私がファクタリング会社で見た悪質な例では、「譲渡する債権に一切の瑕疵(かし)がないこと」を表明保証させる条項がありました。この「瑕疵」の解釈が非常に広く、例えば売掛先から商品に対するクレームが入っただけで「表明保証違反だ」と主張され、債権の買戻しを要求されるケースがありました。これは、実質的に償還請求権あり(リコース)と同じリスクを利用者に負わせる、非常に悪質な手口です。
表明保証条項の内容は専門的で難しい部分もありますが、「少しでも無理があるな」と感じたら、必ず専門家に相談するようにしてください。
ポイント11:「秘密保持義務」の範囲は適切か?
ファクタリングの利用、特に2社間ファクタリングの利用を他社に知られたくないと考える経営者は少なくありません。
そのため、契約書に「秘密保持義務」に関する条項が含まれているか、そしてその義務がファクタリング会社側にも課されているかを確認することが重要です。
通常、利用者側がファクタリング会社のノウハウや契約内容を漏洩しない義務を負うのは当然ですが、同時に、ファクタリング会社も利用者の情報やファクタリング取引の事実そのものを、正当な理由なく第三者に漏らしてはなりません。
この条項が利用者側にのみ課されている場合、ファクタリング会社があなたの会社の情報をどのように扱うかについて、法的な縛りがないことになってしまいます。双方の義務として明記されていることを確認しましょう。
ポイント12:「管轄裁判所」が遠隔地になっていないか?
契約書の末尾には、万が一、契約に関して紛争が生じた場合に、どの裁判所で裁判を行うかを定めた「合意管轄」条項があります。
ここでチェックすべきは、指定されている裁判所が、自社の本店所在地から著しく離れた場所になっていないかという点です。
例えば、東京に本社がある会社が、大阪のファクタリング会社と契約する際に、管轄裁判所が「大阪地方裁判所」となること自体は不自然ではありません。しかし、全く関係のない沖縄や北海道の裁判所が指定されている場合、それは悪質な業者の可能性があります。
万が一トラブルになった際、遠隔地の裁判所に出向くには多大な時間と費用(弁護士費用も高くなります)がかかります。それを見越して、利用者が泣き寝入りすることを狙った、悪質な手口の一つです。
ポイント13:契約書の「控え」は必ず受け取れるか?
これは非常に基本的なことですが、見落とされがちなポイントです。
契約を締結したら、必ずその場で契約書の「控え」を受け取ってください。
「後で郵送します」と言って、なかなか控えを送ってこない業者がいます。手元に契約書がなければ、後から不利な条件を突きつけられても、その内容を確認・反論することすらできません。
最近では電子契約も増えていますが、その場合も、署名済みの契約書データをダウンロードできるか、あるいはメールで受信できるかを必ず確認しましょう。



契約書の控えを渡さない、あるいは渋る業者は、ほぼ100%悪質業者だと考えて間違いありません。契約内容にやましい点がなければ、控えを渡さない理由がないからです。これは、その会社が信頼に値するかどうかを判断する、非常に分かりやすい指標となります。
ポイント14:【元銀行員の裏技】銀行融資の審査に影響する条項はないか?
これは、元銀行員である私ならではの視点です。ファクタリング契約の内容が、将来の銀行融資に思わぬ悪影響を及ぼす可能性があります。
特に注意すべきは、ポイント5で解説した「債権譲渡登記」です。
債権譲渡登記は、誰でも閲覧できる公的な記録です。銀行が融資審査の際に会社の登記情報を確認した際、この登記が残っていると、「この会社は、銀行融資を受けられないほど資金繰りが厳しいのではないか」「売掛債権を他に譲渡しているなら、当行の融資の返済原資は大丈夫か」といった疑念を抱かせる可能性があります。
もちろん、ファクタリングは正当な資金調達手段ですが、銀行によってはネガティブな印象を持つ担当者がいるのも事実です。
契約書で、取引終了後、速やかに債権譲渡登記を抹消する義務がファクタリング会社側にあることを確認し、実際に抹消されたことまでしっかり確認することが、将来のリスク管理に繋がります。
ポイント15:契約前の「交渉」は可能か?
最後のポイントは、契約書そのものではなく、契約に臨む「姿勢」です。
ファクタリング会社から提示された契約書は、絶対的なものではありません。不利だと感じる条項があれば、修正を求める「交渉」をすることが非常に重要です。
「こんなことを言ったら契約を切られるのではないか」と不安に思う必要はありません。むしろ、あなたの指摘に対して真摯に耳を傾け、条項修正に合理的な範囲で応じてくれる会社こそが、信頼できるパートナーとなり得るのです。
【私の交渉術】
私が企業のコンサルティングをする際は、「この条項は、〇〇という理由で当社のリスクが高すぎると考えます。例えば、△△のような表現に修正いただくことは可能でしょうか?」と、代替案を提示しながら交渉を進めます。一方的に「削除しろ」と言うのではなく、相手の立場も尊重しつつ、着地点を探る姿勢が、良好な関係を築く鍵となります。
悪質な業者は、交渉を一切受け付けず、「この契約書にサインできないなら取引はしない」と高圧的な態度に出ることが多いです。その場合は、縁がなかったと割り切り、きっぱりと断る勇気を持ちましょう。
【トラブル回避編】不利な契約を回避し、安全に取引するための法的知識
これは危険!偽装ファクタリング(ヤミ金)を見抜くポイント
健全なファクタリングと、ファクタリングを装ったヤミ金融(偽装ファクタリング)は全くの別物です。しかし、その手口は年々巧妙化しており、見分けるのが難しいケースも増えています。金融庁も注意喚起を行っている、危険な業者の特徴をまとめました。
偽装ファクタリングを見抜くチェックリスト
- □ 償還請求権あり(リコース)を要求される:売掛先が倒産したら、利用者が返済義務を負う契約は、実質的な貸付です。
- □ 手数料が法外に高い:年率換算で利息制限法の上限(20%)を大幅に超える手数料は、出資法違反の可能性があります。
- □ 個人保証や担保を要求される:債権の売買であるファクタリングで、個人保証や担保は原則不要です。
- □ 契約書の控えを渡さない:契約内容にやましい点がある証拠です。
- □ 貸金業登録をしていない:実質的な貸付を行っているにもかかわらず、貸金業登録がない業者はヤミ金です。
- □ 給与ファクタリングを謳っている:個人の給与を対象とする「給与ファクタリング」は、貸金業に該当すると最高裁判所が判断しており、貸金業登録のない業者が行えば違法です。
ヤミ金融業者は、経営者の「どこにも相談できない」という弱みに付け込んできます。「審査なし」「即日融資」といった甘い言葉に誘われ、一度でも手を出してしまうと、法外な利息で会社を乗っ取られかねません。上記の一つでも当てはまったら、その業者とは絶対に関わらないでください。
契約書で不明な点があればどうする?専門家への相談タイミング
契約書を読んでいて、少しでも「おかしいな」「これはどういう意味だろう?」と感じる点があれば、決して自分で判断せず、契約にサインする前に必ず専門家に相談してください。
相談する最適なタイミングは、ファクタリング会社から契約書を提示された段階です。
「契約してからでは遅い」のです。一度サインしてしまえば、たとえ不利な条項であっても、原則としてその内容に同意したとみなされてしまいます。
主な相談先
- 弁護士:法律のプロフェッショナルです。契約書のリーガルチェックを依頼するのが最も確実です。ファクタリングに詳しい弁護士を探しましょう。初回相談を無料で行っている事務所も多いです。
- 中小企業診断士:経営全般の専門家です。資金調達の方法としてファクタリングが適切かどうかも含めて、相談に乗ってくれます。
- 公的な相談窓口:金融庁の「金融サービス利用者相談室」や、全国の財務局、都道府県の貸金業担当課などでも、悪質な業者に関する情報提供や相談を受け付けています。
資金繰りに困っている時ほど、冷静な判断が難しくなり、「早くサインして資金を確保したい」という気持ちが焦りを生みます。しかし、その焦りが命取りになるのです。
私がこれまで見てきた経営者の中で、ファクタリングで失敗した方の多くが、「専門家に相談すればよかった」と後悔されていました。相談費用は、将来の大きな損失を防ぐための「保険」だと考えてください。
もしトラブルになったら?元銀行員が教える冷静な対処法
万が一、悪質な業者と契約してしまい、トラブルに巻き込まれてしまった場合でも、決して一人で抱え込まないでください。冷静に、そして毅然と対応することが重要です。
ステップ1:支払いを一旦停止し、専門家に相談
法外な手数料や違法な取り立てに苦しんでいる場合、まずは弁護士に相談し、その指示に従ってください。弁護士が介入することで、業者からの直接の連絡や取り立てを停止させることができます(受任通知)。
ステップ2:内容証明郵便で意思表示
弁護士を通じて、「当該契約は無効である」「不当な請求には応じない」といった内容を記載した内容証明郵便を送付します。これは、法的に「言った、言わない」の争いを防ぎ、こちらの意思を明確に記録として残すために非常に有効です。
ステップ3:関係各所への通報・相談
弁護士と連携し、以下の機関に通報・相談します。
- 警察:脅迫的な取り立てなど、身の危険を感じる場合は、迷わず警察に相談してください。
- 金融庁・財務局:貸金業法違反の疑いがある業者について、情報提供を行います。これが行政処分に繋がることもあります。
【銀行員時代の教訓】
銀行員時代、反社会的勢力との取引を排除する「反社チェック」は最も厳格な業務の一つでした。トラブルに巻き込まれた際、経営者がパニックに陥り、冷静な対応が取れなくなるケースを何度も見てきました。重要なのは、「証拠を残すこと」と「一人で戦わないこと」です。業者とのやり取りは全て記録し、すぐに専門家の力を借りる。これが、最悪の事態を回避するための鉄則です。
よくある質問(FAQ)
Q: ファクタリング契約に印紙は必要ですか?
A: はい、原則として必要です。ファクタリング契約書は、国税庁が定める課税文書のうち「第1号文書(消費貸借に関する契約書)」または「第15号文書(債権譲渡に関する契約書)」に該当する可能性があります。契約金額に応じて200円から数十万円の収入印紙を貼付する必要があります。ただし、電子契約の場合は印紙税が不要となります。
Q: 電子契約でも法的に有効ですか?
A: はい、有効です。電子署名法に基づき、当事者間の合意があれば、電子署名が付与された電子契約書は、紙の契約書と同様の法的効力を持ちます。近年、ファクタリング契約もオンラインで完結するサービスが増えており、電子契約が主流になりつつあります。電子契約は、印紙税が不要になる、手続きが迅速化するといったメリットがあります。
Q: 契約期間の途中で解約はできますか?
A: 契約内容によります。契約書に中途解約に関する条項があれば、その定めに従って解約できる可能性があります。ただし、違約金が発生するケースがほとんどです。特に、継続的な取引を前提とした契約の場合、解約のハードルは高くなる傾向があります。契約前に、中途解約の条件についても確認しておくことが重要です。
Q: 個人事業主でも契約書の注意点は同じですか?
A: 基本的に同じです。本記事で解説した15のチェックポイントは、法人・個人事業主を問わず、ファクタリング契約を結ぶ際に共通して注意すべき点です。ただし、個人事業主の場合、事業用の資金と個人の生活資金が密接に関連しているため、より慎重な判断が求められます。安易な契約が、事業だけでなく生活そのものを脅かすリスクがあることを認識してください。
Q: ファクタリング会社が倒産したらどうなりますか?
A: 非常に複雑な問題になりますが、主に2つのケースが考えられます。
2社間ファクタリングの場合
売掛先からの入金は、通常通りあなたの会社に入金されます。その後、倒産したファクタリング会社の破産管財人(弁護士)から、その資金を引き渡すよう指示があります。勝手に使ってしまうと、後で法的な問題に発展する可能性があるため、必ず管財人の指示に従ってください。
3社間ファクタリングの場合
売掛先は、債権譲渡の通知を受けているため、ファクタリング会社に支払う義務があります。ファクタリング会社が倒産した場合、売掛先は支払先が分からなくなり混乱する可能性があります。この場合も、破産管財人の指示を待つことになります。
まとめ
今回は、元銀行員という私の経験を基に、ファクタリング契約書で絶対にチェックすべき15のポイントを解説しました。
資金繰りに悩む経営者にとって、ファクタリングは非常に有効な選択肢の一つです。しかし、その契約書に潜むリスクを見抜けなければ、頼みの綱が、自らを縛る鎖に変わりかねません。



契約書は、単なる形式的な書類ではありません。それは、あなたとファクタリング会社との間の「約束事」であり、あなたの会社を守るための「盾」でもあります。
「債権譲渡契約か?」「ノンリコースか?」「手数料の内訳は明確か?」
この記事で挙げた15のポイントを、契約書を前にしたあなたの「指差し確認リスト」として活用してください。
そして、少しでも疑問や不安を感じたら、決して一人で悩まず、サインする前に専門家に相談する勇気を持ってください。その一歩が、あなたの会社を不利な契約から守り、健全な成長へと導く確かな礎となるはずです。


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