ファクタリングと信用情報の真実|元銀行員がCIC・JICCへの影響を徹底解説

「ファクタリングを利用すると、信用情報に傷がつくのではないか…」
「将来、銀行から融資を受けられなくなるかもしれない…」

資金繰りに悩む経営者の方々から、このような不安の声を伺うことがよくあります。元銀行員の私だからこそわかるのですが、資金繰りの相談は本当に勇気がいるものですよね。

山崎正典

私がファクタリング会社で見てきた多くの中小企業も、最初はあなたと同じ悩みを抱えていました。

私は大手都市銀行で14年間、法人営業として中小企業向け融資案件に携わり、その後ファクタリング専門会社で7年間、実務の最前線に立ってきました。

銀行と専門会社、両方の視点から断言できることがあります。

原則として、ファクタリングは信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に登録されることはなく、今後の融資審査に悪影響を及ぼすこともありません。

この記事では、なぜそう言い切れるのか、その法的根拠と実務の裏側を、私の経験を交えながら徹底的に解説します。

【この記事の結論】ファクタリングと信用情報の関係

項目結論
信用情報への影響は?正規のファクタリングであれば、信用情報機関(CIC・JICC等)に登録されることはなく、原則として影響しません
なぜ影響しないのか?ファクタリングは「融資(借入)」ではなく「債権譲渡(売買)」という契約形態のため、信用情報機関の登録対象外だからです。
銀行融資への影響は?信用情報に載らないため直接的な影響はありません。ただし「債権譲渡登記」を多用すると、信用調査会社経由で間接的に影響する可能性はあります。
ブラックリストでも使える?利用可能です。審査で重視されるのは利用者の信用情報ではなく「売掛先の信用力」だからです。

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目次

信用情報機関とは|CIC・JICC・KSCの役割と仕組み

まず、話の前提となる「信用情報機関」について正確に理解しておきましょう。

「信用情報に傷がつく」という言葉を耳にしますが、そもそも信用情報とは何で、どこが管理しているのでしょうか。日本には、個人の信用情報を専門に収集・管理する機関が3つ存在します。

それぞれ加盟している金融機関の種類や収集する情報に特徴があります。

日本の3つの信用情報機関の図

CIC(株式会社シー・アイ・シー)の特徴と加盟業者

CICは、主にクレジットカード会社や信販会社が加盟する信用情報機関です。あなたが持っているクレジットカードの申込情報、利用履歴、支払状況などが登録されています。

銀行員時代、融資審査の際には、このCICの情報を確認し、「個人のクレジットカードの支払いに遅れはないか」といった点をチェックしていました。個人の信用度を測る上で非常に重要な情報源です。

2024年11月28日からは、本人が自身の信用情報をスコアで確認できる「クレジット・ガイダンス」という新サービスも開始されており、より透明性が高まっています。

JICC(日本信用情報機構)の特徴と加盟業者

JICCは、主に消費者金融や信販会社が加盟しています。

消費者金融からの借り入れや返済の状況、債務整理の情報などが記録されており、特に小口のローンやキャッシングの審査で重視される情報です。

KSC(全国銀行個人信用情報センター)の特徴と加盟業者

KSCは、その名の通り、全国の銀行や信用金庫、農業協同組合などが加盟しています。住宅ローンや自動車ローンといった、銀行からの高額な借り入れに関する情報が主に記録されています。

私が銀行で企業の運転資金や設備資金の融資を担当していた際も、経営者個人のKSC情報は必ず確認していました。

信用情報機関主な加盟業者主な登録情報
CICクレジットカード会社、信販会社クレジットカードの利用・支払履歴、ローン契約情報
JICC消費者金融、信販会社消費者金融からの借入・返済履歴、債務整理情報
KSC銀行、信用金庫、信用組合銀行からのローン契約・返済履歴、当座取引情報

これら3つの機関は、「CRIN(Credit Information Network)」というネットワークで相互に情報を連携しており、いずれかの機関で延滞などのネガティブな情報(いわゆる「事故情報」)が登録されると、他の機関にも共有される仕組みになっています。

山崎正典

重要なのは、これらの信用情報機関が貸金業法という法律に基づき、「融資」や「信用取引」に関する情報のみを扱っているという点です。

これが、次の章で解説する「ファクタリングが信用情報に影響しない理由」の核心となります。

ファクタリングが信用情報に影響しない3つの理由|法的根拠と実務の視点

なぜ、ファクタリングの利用は信用情報に記録されないのでしょうか。それには明確な3つの理由があります。

法律の専門的な話も含まれますが、経営者として知っておくべき重要な知識ですので、私の銀行員時代の経験も交えながら分かりやすく解説します。

理由1:ファクタリングは「債権譲渡」であり「与信取引」ではない

これが最も根本的な理由です。ファクタリングは、あなたの会社が保有する「売掛債権(請求書)」をファクタリング会社に売却(譲渡)する取引です。

これは、民法第466条で定められた「債権譲渡」という正当な契約形態です。

民法第466条(債権の譲渡性)

  1. 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
  2. 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。

一方で、銀行融資は「金銭消費貸借契約」であり、お金を借りる取引です。信用情報機関が登録対象とするのは、この「借りる」取引、すなわち「与信取引」なのです。

銀行員時代、私が融資稟議書を作成する際は、必ずお客様の信用情報をCICやKSCで照会しました。それは、融資が「将来の返済能力を信用して」お金を貸す行為だからです。

しかし、ファクタリングは、既にお客様の手元にある資産(売掛債権)を買い取る行為。そこには「与信」という概念が存在しないため、信用情報機関への登録義務も照会義務もないのです。

理由2:審査の主な対象は「売掛先」であり「利用者」ではない

銀行融資の審査では、お金を借りに来た「あなた(の会社)」の返済能力が厳しく審査されます。赤字決算や税金の滞納があれば、審査の土台に乗ることすら難しいのが現実です。

しかし、ファクタリングの審査で最も重視されるのは、あなたではなく「売掛先(請求書の支払元企業)」の信用力です。ファクタリング会社にとってのリスクは、あなたがお金を返せないことではなく、「売掛先が期日通りに支払いをしてくれるか」という点にあります。

山崎正典

私がファクタリング会社に転職して驚いたことの一つが、この審査視点の違いでした。銀行では「貸したお金が返ってくるか」を心配しますが、ファクタリング会社では「買い取った請求書が無事に回収できるか」を心配するのです。

そのため、たとえあなたの会社の経営状況が苦しく、決算書が赤字であったとしても、売掛先が上場企業や官公庁など、信用の高い相手であれば、ファクタリングは十分に利用可能なのです。

理由3:ファクタリング会社は信用情報機関に加盟していない

そもそも論として、ほとんどのファクタリング会社は、CIC、JICC、KSCといった信用情報機関に加盟していません。前述の通り、これらの機関に加盟できるのは、主に貸金業を営む事業者だからです。信用情報を照会したり登録したりできるのは、加盟会員と本人だけです。

加盟していないファクタリング会社は、あなたの信用情報を物理的に見ることができませんし、利用履歴を登録することもできないのです。

注意すべき例外ケース|偽装ファクタリングと商業信用調査会社への影響

ここまで「ファクタリングは信用情報に影響しない」と断言してきましたが、注意すべき例外的なケースも存在します。特に、経営者を陥れる悪質な「偽装ファクタリング」と、信用情報機関とは異なる「商業信用調査会社」への影響については、必ず知っておいてください。

偽装ファクタリングとは|実質的に貸金業に該当するケース

近年、ファクタリングを装って高金利の貸し付けを行う「ヤミ金融業者」の存在が問題視されており、金融庁も公式に注意喚起を行っています。

金融庁の注意喚起
ファクタリングとして行われる取引であっても、経済的に貸付けと同様の機能を有していると思われるようなものは、貸金業に該当するおそれがあります。

これらの業者は、「ファクタリング」という言葉を使いながら、実質的には売掛債権を担保にお金を貸し付けているに過ぎません。このような取引は「偽装ファクタリング」と呼ばれ、貸金業法の適用対象となります。

もし業者が貸金業登録をしていなければ、それは完全な違法行為(ヤミ金融)です。

偽装ファクタリングの具体的な特徴と見分け方

では、どのようにして正規のファクタリングと偽装ファクタリングを見分ければよいのでしょうか。金融庁の見解や過去の裁判例から、以下の特徴が見られます。

項目正規のファクタリング(債権譲渡)偽装ファクタリング(貸金)の疑い
契約形態債権売買契約金銭消費貸借契約(実質的に)
手数料売買手数料(相場:1%~20%)法外な高金利(利息制限法・出資法違反)
償還請求権なし(ノンリコース)あり(リコース)
買戻し義務なしあり

特に注意すべきは「償還請求権(リコース)」の有無です。

償還請求権とは、もし売掛先が倒産して売掛金が回収不能になった場合に、ファクタリング会社があなた(利用者)に対して支払いを請求できる権利のことです。正規のファクタリングは、売掛先の倒産リスクも含めてファクタリング会社が買い取る「ノンリコース契約」が基本です。

もし契約書に「売掛先が支払不能の場合は、利用者が代わりに支払う」といった趣旨の条項があれば、それは実質的な「貸付け(保証付き融資)」であり、偽装ファクタリングの可能性が極めて高いと言えます。

関連記事: ファクタリングの償還請求権とは?をわかりやすく解説!「あり」と「なし」では大違い

帝国データバンクなど商業信用調査会社への影響

CICやJICCとは別に、企業の信用情報を扱う「商業信用調査会社」が存在します。代表的なのが、帝国データバンク(TDB)東京商工リサーチ(TSR)です。銀行員時代、融資先の与信管理のために、これらの会社の調査レポートは頻繁に利用していました。

彼らは、企業の財務内容だけでなく、資金調達の方法についても情報を収集しています。ファクタリングの利用が、これらの商業信用調査会社のデータベースに登録されることがあります。

特に、ファクタリング会社が債権保全のために「債権譲渡登記」を行った場合、その事実は公開情報として誰でも閲覧可能になり、調査会社もその情報を収集します。

一度や二度の利用で直ちに評価が下がるわけではありません。しかし、短期間に何度もファクタリングを利用し、そのたびに債権譲渡登記が行われていると、「この会社は資金繰りが相当厳しいのではないか」という印象を与え、調査レポート上の評点が下がる可能性があります。

銀行が融資審査の際にこのレポートを確認すれば、間接的にネガティブな影響を与える可能性はゼロではない、という点は覚えておくべきです。

債権譲渡登記は信用情報に影響するのか|登記と信用情報の関係を解説

商業信用調査会社への影響という点で、もう少し「債権譲渡登記」について深掘りします。

債権譲渡登記とは、ファクタリング会社が「この売掛債権は、確かに私が買い取りました」ということを法的に公示するための手続きです。これにより、元の債権者(あなた)が、同じ売掛債権を別の会社にも売却してしまう「二重譲渡」を防ぐことができます。

山崎正典

重要なのは、この登記情報は法務局が管理するものであり、CICなどの信用情報機関に登録されることは一切ないという点です。

したがって、債権譲渡登記が、あなたのクレジットカードやローンの審査に直接影響することはありません。しかし、前述の通り、登記情報は公開情報であるため、帝国データバンクなどの商業信用調査会社はこれをチェックしています。

東京商工リサーチの調査では、債権譲渡登記を行った企業のうち、1年以内に倒産した割合が43.71%にのぼるというデータもあり、金融機関がこの情報をネガティブに捉える可能性があることは否定できません。

ただし、これはあくまで相関関係であり、登記そのものが倒産の原因ではありません。本当に資金繰りが厳しい企業が登記を利用するケースが多いため、このような統計になっていると考えられます。

計画的な資金調達の一環として利用するのであれば、過度に恐れる必要はないでしょう。

よくある質問(FAQ)

最後に、経営者の皆様からよくいただく質問について、Q&A形式でお答えします。

Q: ファクタリングを利用したら、銀行融資の審査に影響しますか?

A: 原則として、銀行融資の審査に直接影響することはありません。ファクタリングの利用履歴は信用情報機関(CIC・JICC・KSC)には登録されないからです。

ただし、帝国データバンクなどの商業信用調査会社に多頻度の利用が記録された場合、資金繰りが厳しいと判断され、間接的に融資審査に影響する可能性はあります。

元銀行員の経験から言えば、ファクタリングの利用理由や今後の事業計画を明確に説明できれば、過度に心配する必要はありません。

Q: ブラックリスト状態でもファクタリングは利用できますか?

A: はい、利用可能です。ファクタリングの審査で重視されるのは売掛先の信用力であり、あなたの信用情報ではないからです。

過去に債務整理や自己破産の経験があり、いわゆる「ブラックリスト」状態であったとしても、信頼できる売掛先からの売掛債権があれば、審査を通過できる可能性は十分にあります。

実際に私がファクタリング会社で担当したお客様の中にも、銀行融資を断られ、最後の望みとして相談に来られた方が数多くいらっしゃいました。

Q: ファクタリングを利用すると、取引先に知られてしまいますか?

A: ファクタリングには「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類があります。「2社間ファクタリング」を利用すれば、取引先(売掛先)に知られることはありません。この方式では、あなたとファクタリング会社の2社間のみで契約が完結し、売掛先への通知や承諾は不要です。

ただし、ファクタリング会社のリスクが高まるため、手数料は3社間(5~10%程度)よりも高くなる傾向(8~18%程度)があります。

まとめ:信用を守りながら、賢く資金調達するために

改めて結論を申し上げます。

正規のファクタリングを利用する限りにおいて、あなたの信用情報に傷がつくことはありません。

ファクタリングは、民法で認められた「債権譲渡」という取引であり、信用情報機関が対象とする「貸付け」とは全くの別物です。銀行員として、そしてファクタリングのプロとして、数多くの企業の資金繰りを見てきた私が、自信を持って断言します。

しかし、その一方で、

  • 偽装ファクタリング(ヤミ金融)の存在
  • 商業信用調査会社への間接的な影響

といった注意すべき点も存在します。資金繰りに悩む経営者の弱みにつけ込む悪質な業者は、残念ながら後を絶ちません。

あなたの会社と信用を守るために、そして事業を前進させるために、以下の点を心に留めておいてください。

  1. 契約内容を徹底的に確認する(特に「償還請求権」の有無)
  2. 手数料が相場から逸脱していないか確認する
  3. 安易な利用に頼らず、計画的な資金繰りの一環として活用する

ファクタリングは、正しく使えば、銀行融資にはないスピードと柔軟性であなたの会社を救う、非常に有効な資金調達手段です。

この記事が、あなたが抱える不安を解消し、力強い一歩を踏み出すきっかけとなれば、これに勝る喜びはありません。

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この記事を書いた人

早稲田大学商学部で金融論を専攻後、2003年に都市銀行入社し法人営業で中小企業融資を担当。2017年にファクタリング専門会社へ転職し営業・企画業務に従事。2024年11月に「ファクタリング賛否両論事務局」を立ち上げ、銀行とファクタリング会社両方での経験を活かし、バランスの取れた視点でファクタリングに関する情報発信を行っている。

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著者:山崎 正典(当サイト管理人)
元銀行員 × ファクタリング専門家

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