ファクタリングの「掛け目」とは?相場と査定額が変動する4つの要因

「なぜ、この売掛債権の買取額はこんなに低いんだ…?」

ファクタリングの見積書を手に、そう愕然とした経験はありませんか。
資金繰りに奔走する中で提示された予想外の金額に、不安や焦りを感じてしまいますよね。

はじめまして。「ファクタリング賛否両論」運営者の山崎正典と申します。私は大手銀行で融資を、ファクタリング会社で審査の最前線を経験してきました。

山崎正典

その経験から断言します。多くの経営者が損をしてしまう原因は、買取額を左右する最重要指標『掛け目』を正しく理解していないからです。

ご安心ください。この記事では、私が現場で見てきた「査定の裏側」のすべてをお話しします。

  • なぜあなたの債権がその金額になるのか?という査定の核心
  • 掛け目を1%でも高くし、手元資金を最大化する交渉テクニック
  • 手数料との違いなど、今さら聞けない掛け目の基本

この記事を読み終える頃には、あなたはファクタリング会社の提示額に一喜一憂することなく、自信を持って「最高の条件」を引き出すための知識と交渉術を手にしているはずです。

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目次

ファクタリングの「掛け目」とは?買取率との違いをプロが解説

まず、最も基本的な「掛け目」の意味から押さえましょう。
ここを理解するだけで、ファクタリング会社の見積書が格段に読みやすくなります。

掛け目は売掛債権の「買取対象となる割合」のこと

掛け目とは、ファクタリング会社があなたの売掛債権を買い取る際に、その額面のうち何パーセントを「査定の対象」とするかを示す割合のことです。
「買取率」と呼ばれることもあります。

例えば、100万円の売掛債権があり、ファクタリング会社が提示した掛け目が80%だったとします。
この場合、査定の対象となる金額は「100万円 × 80% = 80万円」となります。

私が銀行員だった頃、融資の際に不動産を担保に取ることがよくありました。
その際、「担保評価額」というものを算出するのですが、掛け目はこれに非常に似ています。
土地の時価が3,000万円でも、融資の担保としては「時価の7割、つまり2,100万円までしか見れません」といった具合です。

ファクタリングにおける掛け目も、「あなたの売掛債権を、額面の何パーセントの価値として見ますか?」という、ファクタリング会社の評価そのものなのです。

手数料との関係性:計算の順番を間違えないで

ここで多くの方が混乱するのが、「掛け目」と「手数料」の関係です。
最終的にあなたの口座に振り込まれる金額は、掛け目で算出された金額から、さらにファクタリング手数料を差し引いて決まります。

計算式で示すと、以下のようになります。

(売掛債権の額面 × 掛け目) – 手数料 = 最終的な入金額

先ほどの例で見てみましょう。

  • 売掛債権:100万円
  • 掛け目:80%
  • 手数料:10%

この場合、まず掛け目を計算します。
100万円 × 80% = 80万円

次に、この80万円に対して手数料がかかるのではなく、元の売掛債権額面に対して手数料率を掛けるのが一般的です。(※会社によって計算基準が異なる場合があるので必ず確認してください)
100万円 × 10% = 10万円(手数料額)

最後に、掛け目で算出した金額から手数料額を引きます。
80万円 - 10万円 = 70万円

この70万円が、あなたが最終的に手にする金額(初回入金額)となります。

山崎からのワンポイントアドバイス

私がファクタリング会社にいた頃、見積書を見て「掛け目が80%だから、手数料は残りの20%ですね?」と勘違いされる経営者の方が時々いらっしゃいました。
「掛け目」と「手数料」は全くの別物です。この計算の順番を間違えると、資金繰り計画に大きな狂いが生じますので、必ず覚えておいてください。

ファクタリングの掛け目と手数料の計算方法

なぜ掛け目が必要?ファクタリング会社のリスクヘッジ

「なぜ100%満額で買い取ってくれないんだ?」
そう思われるのも当然です。

掛け目が100%にならない最大の理由は、ファクタリング会社が「売掛金が回収できないリスク」を負っているからです。

もし売掛先が倒産してしまい、売掛金が支払われなかった場合、その損失はファクタリング会社が被ることになります。
そのため、掛け目を設定して買取額を額面より低くすることで、万が一の貸し倒れに備える「保険」や「保証金」のような役割を持たせているのです。

山崎正典

私がファクタリング会社で商品開発に携わっていた際も、このリスクとリターンのバランスをどう取るか、つまり掛け目と手数料をどう設定するかが最も重要な議論の的でした。

掛け目は、ファクタリングというビジネスモデルを支える、根幹の仕組みと言えるでしょう。

【契約方式別】ファクタリングの掛け目の相場

掛け目の水準は、ファクタリングの契約方式によって大きく異なります。
ここでは「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の一般的な相場観について解説します。

2社間ファクタリングの相場:70%~80%

2社間ファクタリングは、あなたとファクタリング会社の2社間だけで契約が完結し、売掛先に通知する必要がないのが特徴です。

取引先に知られずに資金調達できる手軽さがある一方、ファクタリング会社にとってはリスクが高い取引となります。
なぜなら、売掛先に債権の存在確認ができないため、

  • 実は存在しない「架空の請求書」ではないか?
  • 売掛先から入金されたお金を、別の支払いに使い込んでしまわないか?

といった疑念が常に付きまとうからです。
私が担当した案件でも、残念ながら入金された資金を別の借入返済に充ててしまい、トラブルになったケースがありました。

こうしたリスクがあるため、ファクタリング会社は慎重にならざるを得ず、掛け目は70%~80%と低めに設定されるのが一般的です。

3社間ファクタリングの相場:80%~90%

3社間ファクタリングは、あなたとファクタリング会社に売掛先も加わって契約を進める方式です。

売掛先から「確かにその債権は存在し、期日にはファクタリング会社へ直接支払います」という承諾を得るため、ファクタリング会社のリスクは劇的に下がります。
架空債権や使い込みのリスクがなくなるからです。

私が銀行員として企業の取引関係を見てきた経験からも、売掛先が支払いを承諾したという事実は、その債権の信用度を非常に高めます。

リスクが低い分、ファクタリング会社はより良い条件を提示しやすくなり、掛け目は80%~90%、場合によってはそれ以上と高く設定される傾向にあります。

契約方式掛け目の相場特徴
2社間ファクタリング70%~80%売掛先に知られないが、リスクが高く掛け目は低め
3社間ファクタリング80%~90%売掛先の承諾が必要だが、リスクが低く掛け目は高め

査定額が変動する4つの重要要因|元担当者が語る査定の裏側

では、同じ2社間ファクタリングでも、なぜ掛け目が70%になったり80%になったりするのでしょうか。
ここでは、私が銀行とファクタリング会社の両方で見てきた「査定の現場」で、担当者が何を見ているのか、その裏側をお話しします。

1. 売掛先の信用力:最も重要な判断基準

ファクタリングの審査で最も重視されるのは、申込者であるあなたの経営状況ではなく、「売掛先の信用力(支払い能力)」です。

これは銀行融資との決定的な違いであり、ファクタリングの最大のメリットでもあります。
あなたの会社が赤字であっても、売掛先が国や地方公共団体、上場企業といった信用力の高い相手であれば、ファクタリング会社は「この売掛金はほぼ間違いなく回収できる」と判断します。
結果として、掛け目は高く設定されます。

私が銀行で与信判断をしていた際も、取引先の財務状況や過去の支払い履歴を徹底的に調査しましたが、ファクタリング会社も同様です。
帝国データバンクなどの信用調査会社の情報を活用したり、過去の取引実績を確認したりして、売掛先の支払い能力を厳密に評価しているのです。

2. 申込企業とファクタリング会社の取引実績

意外に思われるかもしれませんが、あなたとファクタリング会社との関係性も掛け目に影響します。

初めて取引する際は、ファクタリング会社もあなたのことをまだよく知りません。
そのため、最初は少し慎重な掛け目が提示されることがあります。

しかし、一度利用して、期日通りに売掛金の入金を完了させる(2社間の場合)といった実績を積むと、ファクタリング会社からの信用は格段に上がります。

私が営業担当だった頃も、2回目、3回目とご利用いただくリピーターの経営者様には、感謝の気持ちも込めて、より良い掛け目や手数料を提示できるよう努力したものです。

3. 売掛債権の支払いサイト(回収までの期間)

支払いサイト、つまり請求書を発行してから実際に入金されるまでの期間も重要な要素です。

支払いサイトが短い(例:30日後)

期間が短いほど、その間に売掛先が倒産するなどの不測の事態が起こる可能性は低いと判断され、掛け目は高くなる傾向があります。

支払いサイトが長い(例:90日後)

期間が長引くほど、将来の不確実性が増すため、ファクタリング会社のリスクも高まり、掛け目は低めに設定されがちです。

これは、シンプルながら非常に重要なリスクマネジメントの観点です。

山崎正典

支払いサイトが60日~90日の売掛債権はファクタリング可能?」という記事も合わせてご覧ください。

4. 債権譲渡登記の有無

少し専門的な話になりますが、2社間ファクタリングでは「債権譲渡登記」という手続きが関係することがあります。

これは、その売掛債権をファクタリング会社に譲渡したことを法的に証明する手続きです。
なぜこれが必要かというと、ファクタリング会社は「同じ売掛債権を、別のファクタリング会社にも売却する(二重譲渡)」というリスクを最も恐れているからです。

登記を行うことで、ファクタリング会社はそのリスクを防ぐことができます。
この登記に協力することは、ファクタリング会社に安心感を与え、結果として掛け目が有利になる可能性があるのです。

二重譲渡については「ファクタリングで二重譲渡がバレる場合とバレない場合、該当する刑事罰の種類」という記事も参考になると思います。

ファクタリングの掛け目を高くするための実践的テクニック

ここまで掛け目の仕組みや変動要因を解説してきました。
それを踏まえ、どうすれば少しでも有利な条件を引き出せるのか、具体的なテクニックを3つご紹介します。

信用力の高い売掛先の債権を選ぶ

もしあなたの手元に複数の売掛債権があるならば、どの債権をファクタリングの対象にするかを選ぶことが最も効果的です。

例えば、A社(中小企業・取引歴半年)への100万円の債権と、B社(上場企業・取引歴5年)への100万円の債権があるとします。
この場合、迷わずB社の債権を査定に出すべきです。
売掛先の信用力が高いため、A社の債権よりも高い掛け目が提示される可能性が非常に高いでしょう。

資金調達を計画する際は、まず手持ちの売掛債権をリストアップし、最も信用力の高い相手先のものから検討することをお勧めします。

3社間ファクタリングを検討する

もし売掛先との関係が良好で、ファクタリングの利用について相談できる状況であれば、3社間ファクタリングを検討する価値は十分にあります。

前述の通り、3社間は掛け目が高く、さらに手数料は低くなる傾向があるため、手元に残る資金が最も多くなる可能性が高いからです。

「取引先に資金繰りが苦しいと思われるのが不安だ…」というお気持ちは、私も銀行員時代に多くの経営者から伺いましたので、よく分かります。
しかし、例えば「取引拡大に伴う仕入資金の先行確保のため」といった前向きな理由を伝えたり、ファクタリング会社に相談して説明に同行してもらったりする方法もあります。
私が法人営業をしていた経験から言っても、誠実な説明は、意外と相手に受け入れられるものです。

山崎正典

3社間ファクタリングを検討する場合、「債権譲渡通知書(承諾書)の書き方と送り方|3社間ファクタリングを円滑に進める実践ガイド」という記事は必ず目を通しておいてください。

複数のファクタリング会社から相見積もりを取る

掛け目や手数料の審査基準は、ファクタリング会社によって本当に様々です。
ある会社では掛け目80%だったものが、別の会社では85%になるということも十分にあり得ます。

だからこそ、必ず複数の会社から見積もりを取り、条件を比較検討することが鉄則です。

その際は、手数料の安さだけに目を奪われず、必ず「掛け目」も確認し、最終的な「手取り額」がいくらになるのかを冷静に比較してください。
それが、あなたの会社にとって最も有利な条件を見つけ出す、確実な方法です。

よくある質問(FAQ)

最後に、経営者の皆様からよくいただく質問にお答えします。

Q: 掛け目が100%にならないのはなぜですか?

A: ファクタリング会社が、売掛金が万が一回収できなかった場合の「貸し倒れリスク」をヘッジするためです。掛け目で買い取り対象額を調整し、残りの部分(額面 – 買取対象額)をリスクに対する留保金(保証金)のような形で扱います。無事に売掛金の回収が完了すれば、この留保金から手数料などを差し引いた残額が、後日あなたに返金される(※)のが一般的です。
(※このような契約を「償還請求権なし(ノンリコース)」と呼び、多くのファクタリング契約がこれに該当します)

Q: 見積書で「掛け目」と「手数料」のどちらを重視すべきですか?

A: 両方を総合的に見て、最終的な「手取り額」で判断することが最も重要です。
例えば、「A社:掛け目90%・手数料15%」と「B社:掛け目80%・手数料5%」では、どちらが得か一見分かりにくいですよね。
100万円の債権なら、A社は手取り75万円、B社は手取り75万円となり、結果は同じです。
このように、必ず最終的な入金額を計算して比較する癖をつけましょう。私としては、両方のバランスを見て、自社の資金繰りに最も適した条件を選ぶべきだとアドバイスします。

Q: 債権譲渡登記は必ず必要ですか?

A: 3社間ファクタリングでは不要です。2社間ファクタリングでは求められることが多いですが、必須ではない会社もあります。登記はファクタリング会社のリスクを大きく下げるため、協力することで掛け目や手数料の条件が有利になる可能性があります。ただし、登記には司法書士への報酬などの実費がかかるため、その費用も含めたトータルコストで判断することが賢明です。

Q: 申込企業の経営状況が赤字でも掛け目に影響しますか?

A: 影響は限定的です。繰り返しになりますが、ファクタリングの審査で最も重要なのは「売掛先の信用力」だからです。あなたの会社が赤字であったり、税金を滞納していたり、銀行融資を断られた後であったりしても、売掛先が優良企業であれば、高い掛け目で買い取ってもらえる可能性は十分にあります。これこそが、銀行融資にはないファクタリングの大きな強みです。

まとめ

今回は、元銀行員・ファクタリング会社出身という私の経験を基に、「掛け目」について徹底的に解説しました。

【本日のまとめ】

  • 掛け目とは、売掛債権の買取対象となる割合のこと。
  • 入金額は「(額面 × 掛け目) – 手数料」で決まる。
  • 3社間ファクタリングの方が、掛け目は高くなる傾向がある。
  • 掛け目を決める最大の要因は「売掛先の信用力」である。
  • 有利な条件を引き出すには「優良債権の選択」「3社間の検討」「相見積もり」が有効。

掛け目は、単なる専門用語ではありません。
あなたの会社の未来を繋ぐ、大切な資金調達額を左右する、極めて重要な指標です。

その意味と、査定額が決まる背景を正しく理解することが、ファクタリングを賢く、そして有利に活用するための第一歩です。
資金繰りの悩みは、経営者を孤独にさせます。
しかし、正しい知識は、あなたを支える強力な武器になります。

この記事で得た知識が、あなたの会社の資金繰りを改善し、事業を前に進めるための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。

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この記事を書いた人

早稲田大学商学部で金融論を専攻後、2003年に都市銀行入社し法人営業で中小企業融資を担当。2017年にファクタリング専門会社へ転職し営業・企画業務に従事。2024年11月に「ファクタリング賛否両論事務局」を立ち上げ、銀行とファクタリング会社両方での経験を活かし、バランスの取れた視点でファクタリングに関する情報発信を行っている。

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