保証型ファクタリングとは？買取型との違いと中小企業が知るべきメリット・デメリット

「取引先の倒産で売掛金が回収できなくなったらどうしよう…」
「大口契約が決まったのは嬉しいが、万が一の貸し倒れリスクが心配だ」

中小企業の経営者なら、一度はこのような不安を感じたことがあるのではないでしょうか。

その経験から断言します。多くの経営者が知らない「保証型ファクタリング」こそが、売掛債権の貸し倒れリスクを根本的に解決する最強の手段です。

本記事では、一般的な買取型ファクタリングとは全く異なる「保証型ファクタリング」の仕組みを、業界インサイダーの視点から徹底解説します。

この記事を読み終える頃には、あなたは売掛債権の「保険」とも言える保証型ファクタリングを完全に理解し、自社のリスク管理を劇的に向上させる具体的な方法を手に入れているはずです。

そもそも保証型ファクタリングとは？～売掛債権にかける「保険」の仕組み～

保証型ファクタリングの基本的な仕組み

保証型ファクタリングとは、一言でいえば「売掛先の倒産リスクに備えるための金融サービス」です。

あなたが取引先（売掛先）に対して持っている売掛債権について、事前にファクタリング会社と保証契約を結びます。
そして、万が一その取引先が倒産や支払い不能といった事態に陥った際に、ファクタリング会社が保証限度額の範囲内で売掛金を支払ってくれる、という仕組みです。

私が銀行員時代、融資の相談に来られた経営者から「銀行の信用保証協会（信保）の保証とは何が違うんですか？」と聞かれることがよくありました。

銀行の信用保証は、あくまで「融資」に対する保証です。
つまり、あなたが銀行からお金を借りる際に、万が一返済できなくなった場合に信保が肩代わりしてくれる、というもの。

一方で保証型ファクタリングは、「あなたの売上（売掛債権）」そのものを守るための保証です。
この違いは非常に重要なので、ぜひ覚えておいてください。

対象となる「保証事故」とは？

では、具体的にどのような場合に保証金が支払われるのでしょうか。
これを「保証事故」と呼びます。

一般的には、以下のようなケースが対象となります。

• 法的整理: 破産、民事再生、会社更生、特別清算の申立てがあった場合
• 取引停止処分: 手形の不渡りを出し、銀行との取引が停止された場合
• 夜逃げなど: 事業活動が停止し、実質的に支払い不能と判断される場合

このようなグレーなケースはすぐには保証対象になりませんが、ファクタリング会社が状況を調査し、客観的に支払い不能と判断されれば保証が実行されます。
このあたりの判断基準は会社によって異なるため、契約前の確認が不可欠です。

【元銀行員が徹底比較】保証型と買取型ファクタリングの5つの決定的違い

「ファクタリング」と聞くと、多くの方が「売掛金を買い取ってもらって、すぐにお金にする」という買取型をイメージされるでしょう。
しかし、保証型と買取型は、似ているようで全く異なるサービスです。

ここでは、元銀行員の視点から、両者の決定的な違いを5つのポイントで比較します。

比較項目	保証型ファクタリング	買取型ファクタリング
① 目的	貸し倒れリスクの回避（保険）	売掛金の早期資金化（資金調達）
② 資金化のタイミング	保証事故発生時	契約後すぐ
③ 手数料	低い（保証料：1%～8%）	高い（買取手数料：2%～18%）
④ 契約形態	継続契約が中心	単発契約が中心
⑤ 取引先への通知	不要	2社間（不要）と3社間（必要）がある

違い①：目的（リスクヘッジ vs 資金調達）

これが最も根本的な違いです。

あなたの会社の課題が「キャッシュフローの改善」なのか、それとも「債権の保全」なのか。
この目的を明確にすることが、正しい選択への第一歩です。

違い②：資金化のタイミング

目的が違うため、当然お金が手に入るタイミングも異なります。

保証型は、あくまで取引先が倒産するなどの「事故」が起きて初めてお金が支払われます。
平時には何も起こりません。

一方、買取型は契約が完了すれば、最短即日で売掛金を現金化できます。

違い③：手数料（保証料 vs 買取手数料）

一般的に、保証型の方が手数料は低く抑えられています。

• 保証型（保証料）: 年間 1%～8%程度
• 買取型（買取手数料）: 1回あたり 2%～18%程度

なぜこの差が生まれるのか。
私がファクタリング会社で商品開発に携わっていた経験からお話しします。

買取型の場合、ファクタリング会社は「売掛金が期日通りに回収できるか」というリスクを負います。
さらに、2社間ファクタリングでは、利用者が売掛金を使い込んでしまうというリスクも考慮しなければなりません。
そのため、手数料は高めに設定されます。

一方、保証型は「倒産」という、発生確率が比較的低い事象に対してのリスクを負うため、保険料と同じ考え方で手数料を低く設定できるのです。

違い④：契約形態（継続契約 vs 単発契約）

継続契約が中心の保証型は、後述する「与信管理のアウトソーシング」という側面で大きなメリットを発揮します。

違い⑤：取引先への通知

経営者の方が最も気にされる点かもしれません。

保証型ファクタリングは、基本的に取引先に知られることなく利用できます。

利用者とファクタリング会社の2社間での契約となり、取引先への通知や承諾は一切不要です。

一方、買取型には、取引先に通知・承諾を得る「3社間ファクタリング」と、通知不要の「2社間ファクタリング」があります。
一般的に、取引先の協力が得られる3社間の方が手数料は安くなります。

中小企業が保証型ファクタリングを活用すべき4つの戦略的メリット

保証型ファクタリングは、単なる「保険」ではありません。
経営戦略に組み込むことで、会社の成長を加速させる強力なツールとなり得ます。

メリット①：低コストで連鎖倒産のリスクを回避できる

私が銀行員時代に最も心を痛めたのが、取引先の倒産に巻き込まれる「連鎖倒産」の現場でした。
特に、売上の大部分を1社に依存している中小企業にとって、大口取引先の倒産は死活問題です。

ある建設会社は、非常に真面目な経営をしていましたが、元請けの大手ゼネコンが倒産したことで、数千万円の売掛金が回収不能に。
銀行も追加融資に応じられず、なすすべなく事業継続を断念されました。

もし、あの時に保証型ファクタリングを利用していれば…。
買取型に比べて低い保証料で、このような最悪の事態に備えることができます。
月々数万円のコストで、会社の存続という最大の価値を守れるのです。

メリット②：与信管理業務を専門家にアウトソースできる

「取引先の経営状態をどうやって調べればいいのか分からない」
これは、専門の与信管理部署を置けない多くの中小企業が抱える悩みです。

保証型ファクタリングを契約すると、ファクタリング会社があなたの代わりに取引先の信用調査を行います。
彼らは、公開情報だけでなく、独自のデータベースや調査網を持つ与信管理のプロです。

定期的に取引先の信用情報をレポートしてくれるサービスもあり、自社の与信管理の負担を大幅に軽減できます。
これにより、危険な取引を未然に防ぎ、安全な取引先とのビジネスを拡大していくことが可能になります。

メリット③：強気の営業展開が可能になる

「面白そうな新規案件だが、相手が設立間もない会社だから不安だ…」
「この大口契約、受注したいが貸し倒れリスクが怖い…」

このような不安から、ビジネスチャンスを逃してしまった経験はありませんか？

保証型ファクタリングを利用すれば、万が一の貸し倒れリスクはファクタリング会社がカバーしてくれます。
つまり、あなたはリスクを気にすることなく、アクセル全開で営業活動に専念できるのです。

私が法人営業をしていた頃、「この保証があるから、思い切って取引額を増やせます」と喜んでくださった社長の顔が今でも忘れられません。
これは、売上拡大の機会損失を防ぐ、非常に戦略的な活用法と言えるでしょう。

メリット④：財務体質を悪化させずに済む

買取型ファクタリングは、会計処理上「債権の売却」となり、B/S（貸借対照表）に影響を与えます。
銀行融資はもちろん「負債」として計上されます。

しかし、保証型ファクタリングの保証料は、損害保険料などと同じく「経費（損金）」として処理できます。
負債を増やすことなく、将来のリスクに備えられるのです。

銀行からの評価を気にする経営者にとって、B/Sをスリムに保ちながら経営の安定性を高められる点は、金融の専門家として見ても大きなメリットだと断言できます。

導入前に必ず確認！3つのデメリットと専門家からの注意喚起

戦略的なメリットが多い保証型ファクタリングですが、もちろん万能ではありません。
導入後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、デメリットと注意点を正直にお伝えします。

デメリット①：直接的な資金調調達にはならない

これは最も重要な注意点です。
何度も繰り返しますが、保証型はあくまで「保険」です。

契約したからといって、すぐにキャッシュフローが改善するわけではありません。

「来月の支払いが厳しい」「急な設備投資で現金が必要」

このような、今すぐの資金需要には応えられません。
その場合は、買取型ファクタリングやビジネスローンなど、他の資金調達手段を検討すべきです。

デメリット②：掛け捨てのコストになる可能性がある

保険と同じで、保証事故が起こらなければ、支払った保証料は戻ってきません。
いわゆる「掛け捨て」になります。

「何もなくて良かった」と捉えるか、「無駄なコストだった」と捉えるか。
これを「安心を買うための必要経費」と割り切れるかどうかが、導入を判断する上での一つの基準になります。

経営が順調な時ほど、リスクへの備えは後回しになりがちです。
しかし、本当に大変な時になってからでは、誰も助けてはくれません。
このコストを、未来への投資と考えられるかどうかが問われます。

デメリット③：すべての売掛債権が保証されるわけではない

保証型ファクタリングを利用するには、ファクタリング会社による審査があります。
そして、審査の対象は「あなた」ではなく「あなたの取引先」です。

そのため、取引先の信用力が低いと判断された場合、

• 保証契約そのものを断られる
• 保証してもらえる限度額が非常に低く設定される
• 保証料が割高になる

といった可能性があります。

私が業界にいた頃の経験では、すでに業績悪化が報じられている企業や、設立から日が浅く実績のない企業などは、審査が厳しくなる傾向にありました。
すべてのリスクを丸投げできるわけではない、という点は理解しておく必要があります。

よくある質問（FAQ）

Q: 保証料の相場は具体的にどのくらいですか？

A: 売掛先の信用力によって大きく変動しますが、一般的には売掛金額の1%～8%程度が相場です。
例えば、信用度の高い上場企業が相手なら1%台、逆に設立間もないベンチャー企業などであれば5%以上になることもあります。
これはファクタリング会社が負うリスクの大きさに比例するとお考えください。

Q: 買取型と保証型、どちらを選ぶべきか迷っています。判断基準はありますか？

A: 貴社の課題が「今すぐの資金」か「将来のリスク」かで判断するのが基本です。
「来月の支払いが厳しい」なら買取型、「取引先の経営が不安」なら保証型です。
元銀行員としては、まずは資金繰り表を確認し、キャッシュフローにまだ余裕があるなら、低コストの保証型で守りを固めることを強くお勧めします。

Q: 銀行融資の審査に落ちたのですが、保証型ファクタリングは利用できますか？

A: 十分に可能性があります。
銀行融資は、申込企業であるあなたの会社の財務状況を最重要視します。
しかし、保証型ファクタリングの審査で最も重要なのは「売掛先の信用力」だからです。
自社の業績が赤字であっても、取引先が優良企業であれば、契約できるケースは多々あります。諦める必要はありません。

Q: 取引先にファクタリングの利用を知られて、関係が悪化しませんか？

A: ご安心ください。保証型ファクタリングは、取引先に知られることはありません。
契約はあなたとファクタリング会社の2社間で完結するため、取引先に通知がいくことは一切ありません。
ファクタリング会社が信用調査を行う際も、公開情報や独自のデータベースを用いるため、取引先に直接連絡がいくことはないので、関係性に影響が出る心配は無用です。

Q: 保証型ファクタリングと取引信用保険の違いは何ですか？

A: 目的は似ていますが、大きな違いは保証対象の柔軟性です。
取引信用保険は、原則としてすべての取引先をまとめて保証の対象とします。
一方、保証型ファクタリングは、リスクが高い特定の取引先だけを選んで保証をかけることができます。
中小企業にとっては、コストを抑えつつピンポイントでリスクヘッジできる保証型ファクタリングの方が、使い勝手が良い場合が多いでしょう。

まとめ

本記事では、元銀行員そしてファクタリング業界の経験者という立場から、「保証型ファクタリング」について解説しました。

買取型との最大の違いは「目的」にあります。
目先の資金繰りではなく、将来の不測の事態に備えることで、経営者は安心して事業拡大に専念できます。

上記に当てはまる経営者の方にとって、保証型ファクタリングは低コストで導入できる、極めて有効な防衛策と言えるでしょう。

この記事をきっかけに、あなたの会社にとって最適なリスクマネジメントとは何か、一度じっくりと考えてみてはいかがでしょうか。
その一歩が、会社の10年後、20年後の未来を創るはずです。