【体験談】ファクタリングで売掛先倒産トラブルから救われた事例集

「売掛先が突然、倒産してしまった――」

これは決して他人事ではありません。
むしろ、取引先の信用に頼ってビジネスを回している中小企業にとって、いつ起きてもおかしくない“現実”です。

資金繰りの命綱であるはずの売掛金が、ある日突然「回収不能」に変わる。
社員の給与はどうする？仕入先への支払いは？手元のキャッシュはもう限界……。

そんな土壇場の状況から、ある手段を使って会社を立て直した企業があります。
その手段こそが、ファクタリングです。

しかし、適切な方法と冷静な判断があれば、そこから這い上がることも可能です。
本記事では、実際に売掛先の倒産トラブルに直面しながらも、ファクタリングの活用によって窮地を脱した企業の事例をいくつか紹介します。

「もし同じことが起きたら、あなたはどうするか？」
そんな視点を持ちながら、読み進めていただければ幸いです。

🛡️この記事の監修者（運営会社・税理士による共同監修）

ファクタリングとは何か？基礎と仕組みを解説

ファクタリングの基本概念と種類

ファクタリングとは、売掛債権（請求書）をファクタリング会社に譲渡し、期日前に現金化する資金調達手法です。

現金化できるのは、通常1〜3営業日。
融資とは異なり、審査基準は「売掛先の信用力」が中心となるため、赤字企業でも利用しやすい点が特徴です。

ファクタリングには、以下の2つの形態があります。

• 2社間ファクタリング
  　売掛先に通知せず、利用企業とファクタリング会社の間だけで契約を結ぶタイプ。スピーディに資金化できる反面、手数料はやや高め。
• 3社間ファクタリング
  　売掛先も契約に加わり、支払いがファクタリング会社に直接行われる仕組み。透明性が高く、手数料も低めに抑えられる傾向。

また、契約には「償還請求権の有無」が関係します。

🔍 ノンリコース契約（償還請求権なし）の場合、売掛先が倒産しても返金義務はありません。

一方で、リコース契約では売掛先が支払不能になると、利用企業が債権の代金を返す必要があるため、契約内容は必ず確認しておく必要があります。

ファクタリングが役立つ主なケース

ファクタリングは、単なる“資金繰り対策”にとどまりません。
具体的には、次のようなケースで活用されています。

• 売掛先の与信不安がある場合
  　与信管理で赤信号が灯った相手の売掛金を早めに現金化し、回収不能リスクを回避。
• 資金繰りが厳しい月末・賞与月の給与対応
  　売上はあるのにキャッシュが足りない「黒字倒産リスク」への即効薬に。
• 急な設備投資・仕入資金が必要なとき
  　次の成長投資のため、将来入金予定の債権を前倒しで使うという考え方。
• 銀行融資が間に合わない、あるいは審査に落ちたとき
  　信用情報に影響しにくく、柔軟な審査が行われるため、銀行以外の選択肢として有効。

次章からは、実際にファクタリングによって資金ショックを乗り越えた企業のリアルな体験談をご紹介します。

売掛先倒産による資金ショックとは

売掛金未回収が企業にもたらす影響

売掛金が回収できない――これは、単なる「入金遅れ」の問題では済みません。
特に中小企業にとっては、資金繰りの根幹を揺るがす重大なダメージになります。

たとえば、以下のような悪循環が起きやすくなります。

• キャッシュフローの急激な悪化
  　固定費（人件費・家賃・外注費など）の支払いに支障が出る。
• 取引先や仕入先への支払遅延
  　信用低下による取引停止、仕入条件の悪化などを招く。
• 金融機関の融資態度の変化
  　資金繰り悪化が表面化すると、与信評価が下がり追加融資が難しくなる。
• 従業員の士気低下・離職リスク
  　給与遅配が発生すると、社内の信頼関係にも影響。

これらが重なると、「連鎖倒産」という最悪のシナリオに至る危険性があります。
つまり、売掛金未回収とは「数字上の損失」ではなく、「企業存続を脅かす現金の枯渇」なのです。

与信管理では防ぎきれない「予期せぬ倒産」の現実

「うちは与信調査をしっかりしているから大丈夫」
そう考えている経営者も多いかもしれません。

たしかに、帝国データバンクや東京商工リサーチなどを活用した与信管理は、倒産リスクの予防として有効です。
しかし、現実には“予兆のない倒産”が存在します。

以下は、筆者が過去に関与したケースで実際に起きた事例です。

東証プライム上場企業の一次下請けが、数日前まで通常通り支払いをしていたにもかかわらず、週明けに突然「破産手続き開始決定」の通知が届いた。

その企業は、内部で粉飾決算が発覚し、債務超過が一気に顕在化。
外部の与信情報だけでは読み取れなかったリスクが、突然表面化した形です。

このように、いくら注意していても「読み切れない倒産」は必ず起こり得ます。
だからこそ、万が一の備えとして「回収不能＝即資金ショック」に対応できる手段を用意しておくことが重要です。

その一つの選択肢が、次に紹介する「ファクタリングの活用」です。

【実例1】製造業：主要取引先の突然の法的整理

取引先倒産による受注ストップと資金難

千葉県内に拠点を構える、従業員30名ほどの精密部品メーカーA社。
同社の売上の約40％を占める大手自動車部品商社が、ある日突然「民事再生手続き開始」を発表しました。

納品済みの部品に対する売掛金は、合計1,200万円。
回収は事実上不可能になり、加えて今後の定期発注も完全ストップ。

社内は騒然とし、「このままでは来月の給与が支払えない」と役員会議は深夜まで続いたそうです。
資金繰り表に穴が空き、外注先への支払いも遅れが出始めていました。

ファクタリング導入で当座資金を確保

この緊急事態において、経理担当が導き出した選択肢が「ファクタリング」でした。

A社には、他にも定期的な取引先が複数あり、倒産先とは無関係の売掛債権がいくつか残っていました。
これらを対象に、都内のファクタリング専門会社と2社間ファクタリング契約を締結。

審査から資金化まで、わずか2営業日で約800万円を調達。
急場の給与支払いや材料費の手当てに充てることができました。

「最初は半信半疑でしたが、これほど早く資金が動いたのは初めてでした」
（A社 経理責任者のコメント）

結果として、A社は従業員を一人も解雇することなく再編プランを立て直し、半年後には新たな取引先を確保。
現在も堅実に事業を継続しています。

【実例2】ITベンチャー：信用調査では見抜けなかった資金ショート

クライアント企業の黒字倒産による契約不履行

次に紹介するのは、東京都内のIT系スタートアップ企業B社の事例です。
社員数は20名弱ながら、業界内ではAIソリューションを手がける注目企業として、急成長を遂げていました。

ある日、B社がメインプロジェクトとして受託していた業務システム開発案件で、思わぬ事態が起こります。
相手は中堅の小売チェーン。直近の財務諸表でも黒字継続中、信用調査も問題なし。
ところが、ある日突然「今月末で支払いができなくなる」と通告が入ります。

原因は、グループ会社の資金繰り悪化による連鎖的な資金ショート。
経営者が自己破産の意向を示したことで、B社にとっては受注済みの請負業務費用、約600万円の未回収が確定しました。

プロジェクトは既に7割以上進行しており、開発人員への外注費・人件費も重なっていた状況。
このままでは、他の取引先との案件にも支障が出かねませんでした。

ファクタリングを通じた支払い原資の確保

こうした中で、代表の判断により即座に「資金回収のバックアッププラン」を検討。
その選択肢のひとつが、ファクタリングの活用でした。

幸い、B社には他にも継続取引のある法人顧客が複数存在し、月末請求分の売掛金（約800万円）を保有していたため、これをファクタリング会社に相談。

3社間ファクタリングにて契約を進め、売掛先の同意もスムーズに得られたことで、契約から3営業日で700万円の資金化に成功しました。

この資金で、

• 開発メンバーの報酬支払い
• 進行中の別案件への人員振替
• 小口発注の仕入コストへの充当

といった、事業継続に必要な動きを止めることなく対応できたのです。

「“倒産リスクが低い＝安全”とは限らないと、痛感しました」
（B社 代表取締役）

B社はその後、問題の顧客との取引を精算し、より資金繰りに安定した顧客との契約拡大にシフト。
2025年春時点では、資本金を増強し、社員数も倍増しています。

【実例3】建設業：大型プロジェクト中断と連鎖倒産の危機

サブコンの倒産が元請けの支払いにも波及

続いてご紹介するのは、関東を中心に公共工事を多く手がける中堅建設会社C社の事例です。
C社はある県の公共インフラ整備事業にて、複数の協力会社と連携しながら大規模工事を担当していました。

しかし、工期の半ばを迎えた頃、重要な役割を担っていたサブコン（下請け業者）が倒産。
これにより、C社は二次的な影響として元請けからの入金も一時保留となる事態に直面しました。

倒産したサブコンが納品した部材や人件費に関する精算処理がストップし、C社側の売掛金も含め、計4,000万円の入金が宙に浮いた格好になってしまったのです。

公共事業という性質上、代替業者の選定や発注調整にも時間がかかり、工事も部分的に停止。
社員給与の支払いや、他の現場への資材手配にも深刻な影響が出始めていました。

フェーズ別に活用したファクタリングの戦略

C社では、顧問税理士の助言を受けて、ファクタリング活用を段階的に導入しました。
まず初動として、他現場で発生していた売掛債権（約1,500万円分）を2社間ファクタリングで即時資金化。

次に、公共発注分の売掛債権については、地方自治体の信用が高くファクタリング審査も通りやすいため、3社間ファクタリングに切り替え、再開後の請求分約3,000万円も段階的に現金化していきました。

これにより、

• 給与遅配を回避
• 他現場への影響最小限化
• 取引先との信用維持

といった、「事業継続に必要なライン」を死守することに成功したのです。

「複数の債権をうまく使い分けることで、選択肢が広がると実感しました」
（C社 経営企画室長）

C社は、倒産したサブコンの代替業者を確保し、遅延分の工程を約2ヶ月で回収。
現在も元請けからの信頼を維持し、新規案件への入札にも順調に参加しています。

ファクタリング利用時の注意点とトラブル回避法

信頼できる業者の選び方

ファクタリングは非常に有効な資金調達手段ですが、業者選びを間違えると、逆にトラブルを招くリスクもあります。
私がファクタリング専門会社に在籍していた頃にも、他社で契約した企業がトラブルに巻き込まれ、相談に駆け込んできたケースは少なくありませんでした。

以下のポイントをチェックすることで、信頼できる業者を見極める助けになります。

登録制度の有無・企業実体の確認

国の監督対象ではないファクタリング業者ですが、日本ファクタリング業協会など、業界団体への加盟状況は参考になります。
所在地、代表者名、設立年、業歴なども確認しましょう。

手数料の明示と内訳説明があるか

相場として、2社間で10〜20%、3社間で1〜5%程度ですが、これを曖昧にする業者は要注意です。
事前に「見積書」「契約書」を必ず提示してもらいましょう。

契約内容の明確さ（償還請求権の有無）

ノンリコースかリコースかは、経営に与える影響が大きいため、必ず確認を。

口コミ・評判のチェック

Googleレビューや比較サイトの評価も参考にはなりますが、「過剰な高評価」「評価が極端に少ない」場合は一歩引いて見極めましょう。

ファクタリングの「誤解」されがちな点とは？

ファクタリングに関する相談を受けていると、経営者の方から誤解に基づいた不安を耳にすることがあります。
ここでは代表的な“誤解あるある”をいくつかご紹介します。

❌ 「ファクタリングを使うと借金扱いになるのでは？」

→ ✅ 実際には“売掛債権の売却”であり、原則として借入とは見なされません。
会計上は「売掛債権減少」と「現金増加」が同時に記録されます。
ただし、リコース契約や契約内容によっては注意が必要です。

❌ 「ファクタリングを使うと信用情報に傷がつく？」

→ ✅ 信用情報（CICやJICC等）には、ファクタリングの利用は通常記録されません。
銀行融資と異なり、信用機関の照会対象外です。
ただし、金融機関からの融資審査で「資金繰りが苦しい」と見なされる可能性はあるため、使い方の説明は重要です。

❌ 「うちは中小だから審査に通らないのでは？」

→ ✅ ファクタリングは“売掛先の信用”を重視するため、赤字企業や創業間もない会社でも利用可能です。
「売掛先が誰か」が最も重視されるポイントとなります。

よくある質問（FAQ）

Q: ファクタリングはどの業種でも使えるのでしょうか？

A: 原則として、売掛債権（請求書）があればどの業種でも利用可能です。
ただし、継続的な契約関係や、売掛先の信用力があることが望ましいです。
実際、建設業・運送業・医療福祉・IT系など幅広い業種で導入されています。

Q: 売掛先に知られずにファクタリングを利用できますか？

A: はい、「2社間ファクタリング」であれば通知不要のケースが一般的です。
ただし、売掛先への通知がない分、手数料が高くなりがちで、債権回収不能リスクに備えて慎重な審査が行われます。

Q: 利用にはどれくらいの時間がかかりますか？

A: 初回はヒアリング・契約に時間を要するため、1〜3営業日程度が目安です。
書類が揃っていれば即日資金化も可能な業者もあります。
急ぎの場合は「スピード対応実績がある業者」を選ぶことが大切です。

Q: ファクタリングと銀行融資、どちらが得ですか？

A: 一概に比較はできませんが、

• 長期的・低コストな資金調達 → 銀行融資
• 急場の資金調達・赤字企業でも可能 → ファクタリング

といったように、目的に応じて使い分けるのが理想的です。
実際には両者を併用している企業も多数あります。

Q: 倒産リスクの高い取引先ばかりですが、利用できますか？

A: 一部のファクタリング会社では、債権内容に応じて対応可能な場合もあります。
ただし、売掛先の与信が厳しいと審査落ちのリスクもあるため、事前相談をおすすめします。
複数社に相見積もりを取ると、自社に合った条件が見つかることもあります。

まとめ

売掛先の突然の倒産――
それは、どれだけ業歴が長く、どれだけ堅実に経営してきた企業であっても、避けようのないリスクです。

ときに1,000万円単位の売掛金が一夜にして“紙くず”と化す現実。
本記事で紹介したような、製造業、ITベンチャー、建設業といった企業のように、まさに崖っぷちの状況に立たされることも少なくありません。

しかし、そこで「手立てがない」と諦めてしまうか、あるいは一手を講じて道を切り開くか。
この分かれ道において、ファクタリングは“もう一歩踏み出すための現実的な手段”になり得るのです。

繰り返しますが、ファクタリングは「魔法の杖」ではありません。
手数料がかかり、契約内容も慎重な確認が必要です。
ですが、正しく活用すれば、危機的状況から会社を守る“資金繰りの保険”として、極めて有効な選択肢になります。

私自身、都銀・ファクタリング業界の双方で、数百社の経営支援に携わってきました。
その中で痛感するのは、「リスクに備えておくこと」の重要性です。

“何かあったら”ではなく、“何かが起こる前提で”資金繰りを考える。

この視点を持っている企業は、どんなトラブルに直面しても、立ち直る確率が高くなります。

ぜひ今回の事例を、御社の危機管理の参考としてご活用いただければ幸いです。
そして、「ファクタリング」という手段を、頭の片隅に置いておくこと――それが未来の安心に繋がるかもしれません。