「資金繰り賛否両論」が誕生した理由|500社以上の中小企業に向き合った財務コンサルが見た現場

「今回の追加融資は、難しいと思います」。銀行員だった20代の私は、この言葉を何度も口にしました。

佐々木 真帆

資金繰りコンサルタントの佐々木真帆です。大手銀行で7年、コンサルティング会社で7年、そして2017年に独立してから今日まで、500社以上の中小企業の資金繰りに向き合ってきました。

貸す側、支える側、伴走する側。3つの立場を経て確信したのは、資金繰りに唯一の正解はない、ということです。それがこのメディアを「賛否両論」と名付けた理由でもあります。

この記事では、現場で見てきた倒産の実態、名前に込めた3つの約束、そして今日から始めてほしいことを書きます。

【この記事の結論】資金繰りで後悔しないための5つのポイント

  • 資金繰りに「唯一の正解」はない。銀行借入・リスケ・ファクタリングは、事業ステージ・業種・経営者の性格で答えが逆になる。
  • 倒産した企業の35.7%は直近決算が赤字ではない(東京商工リサーチ/2025年)。利益が出ていても、現金が尽きた時点で終わる。
  • たとえば月商1,000万円・仕入700万円、入金90日/支払30日の会社は、常に2,300万円を立て替えている状態になる。
  • 相談のタイミングは「資金ショートの3か月前」が分かれ目。遅れると「融資実行までの時間」「商品の選択肢」「交渉の余地」を同時に失う。
  • 今日できることは一つ、資金繰り表を作ること。過去3か月の入出金を並べ、3〜6か月先の入金・支払予定まで書き込む。
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目次

銀行員時代に見た「融資を断る側」の現場|資金繰りの相談が遅すぎる理由

稟議書を書く側から見えた「あと3か月早ければ」の現実

2003年、発足翌年の某大手銀行に総合職として入りました。配属は法人営業部で、中小企業向け融資の稟議書を書き、審査を通そうとする側の仕事です。

稟議で見られるのは、目先の不足額だけでなく「返済の原資が見えるか」です。具体的に言うと、月末の支払いまで5日しかない段階で「500万円足りない」と駆け込まれても、私が担当した案件では、資料をそろえて審査を経て実行するまで数週間かかることが珍しくありませんでした。決算書はあっても資金繰り表がない。返済の絵が描けない。稟議書に書けることがないのです。

私の記憶では、「あと3か月早く来てくれていれば通せたのに」と思った案件が毎年ありました。相談が遅れると、失うものは融資そのものだけではありません。

  • 融資が実行されるまでの時間(融資の種類や審査状況によっては、実行まで数週間以上かかります)
  • 選べる商品の幅(プロパー融資、信用保証協会の保証付き融資、日本政策金融公庫との協調など)
  • 交渉の余地(返済条件の相談は、延滞する前だからこそ聞いてもらえます)

忘れられない経営者の表情と「貸す側」の限界

融資を断らざるを得なかったときの、経営者の悔しそうな表情。あれは今でも忘れられません。

当時は経営者保証が当たり前でした。融資を受けるときに経営者個人が連帯保証人になる仕組みで、「経営者保証に関するガイドライン」の適用が始まったのは2014年2月、私が銀行を離れた後のことです。融資を断ることは、経営者個人の人生に関わる判断でした。

それでも銀行員の私が語れるのは「貸す側の正解」だけです。あの経営者たちが本当に必要としていたのは、融資の前段階、つまり資金繰りの設計そのものでした。もっと直接的に経営者を支えたい。そう思って、2010年にコンサルティング会社へ移りました。

コンサル時代に痛感した「黒字でも会社は潰れる」現実|資金繰りの巧拙が寿命を決める

M&Aの現場で見た「利益は出ているのに現金がない」会社

2010年から2017年まで、都内のコンサルティング会社で資本調達やM&Aの資金戦略を担当しました。会社の売却を検討する経営者と向き合う中で、何度も同じ光景を見ました。損益計算書は黒字なのに、手元の現金が常に足りないのです。

例えば、毎月の売上が1,000万円、仕入れが700万円で、仕入れた商品をすぐ販売する会社があるとします。売上の入金は90日後、仕入代金の支払いは30日後。すると売掛金3,000万円から買掛金700万円を引いた2,300万円が、常に立て替え状態になります。給与や税金、借入の返済はこれとは別です。しかも売上が伸びるほど立て替え額も膨らみます。黒字なのに現金が減る会社の正体は、たいていこの入金と支払いの時間差でした。

佐々木 真帆

資金繰りの巧拙は、会社が生き残れるかどうかだけでなく、売却価格まで左右します。この現実を見て、資金繰りの基礎を経営者に届ける場を作ろうと決めました。

データが示す黒字倒産の割合と2025〜2026年の倒産動向

私の実感を、公開されている数字で確かめます。

指標数字出典
2025年の全国企業倒産10,300件(前年比2.9%増、2年連続で1万件超)東京商工リサーチ(2026年1月13日公表)
2026年上半期の倒産5,335件(前年同期比6.6%増、4年連続増加)帝国データバンク(2026年7月8日公表)
倒産の主因「販売不振」4,278件(2026年上半期、全体の80.2%)帝国データバンク
物価高倒産767件(2025年)東京商工リサーチ
人手不足関連倒産397件(2025年)東京商工リサーチ
直近決算が最終赤字ではなかった倒産企業35.7%、3社に1社超(分析対象794社、最終赤字は64.3%)東京商工リサーチ(2026年3月31日公表)

いずれも負債1,000万円以上の倒産が対象です。東京商工リサーチと帝国データバンクでは集計の定義が異なるため、件数を足したり単純に比べたりはできません。

私が衝撃を受けたのは最後の行です。東京商工リサーチが2025年に倒産した企業のうち3期分の財務データを持つ794社を分析したところ、最終赤字は64.3%でした。裏を返せば、残る35.7%、3社に1社超は直近の決算で赤字ではなかったのです。利益が出ていても、現金が尽きれば会社は止まります。

500社以上に向き合って気づいた「資金繰りに唯一の正解はない」理由|同じ手法が賛にも否にもなる

借入・リスケ・ファクタリング…賛否が分かれる代表的な手法

2017年の独立以来、私が関わってきた会社では、同じ手法に対して正反対の意見が並ぶことが何度もありました。現場で聞いた意見を簡略化して整理します。

手法賛成派の言い分反対派の言い分
銀行借入借りられるときに借りて手元資金を厚くする無借金が理想。利息は無駄
リスケジュール(返済条件の変更)再建のための時間を買う手段追加融資の審査が厳しくなることがある
ファクタリング(売掛金の早期資金化)融資が使えない局面のつなぎになる高額な手数料が負担になり、頼り続けると資金繰りを圧迫しかねない
経営者保証保証を付けてでも借りて事業を守る外せるなら外す。個人の生活を守る
補助金・助成金要件を満たせば原則返済不要支給までの立て替え資金が必要な制度もある

経営者保証については、金融庁の2025年6月のレポートによると、2024年度の新規融資件数のうち経営者保証に依存しない融資は民間金融機関全体で52.9%です。私の銀行員時代には想像できなかった数字です。

佐々木 真帆

リスケジュールの進め方はリスケの銀行交渉の記事、ファクタリングの注意点は下請法改正とファクタリングの記事で詳しく書いています。

会社によって答えが変わる3つの分かれ目(事業ステージ・業種・経営者の性格)

どちらが正しいかは、会社の状況で決まります。私が見ている分かれ目は次の3点です。

  1. 事業ステージ。私の経験では、創業期は売上が安定するまでの資金を厚めに、成熟期は投資や運転資金の必要額と返済原資を見極めてから借りる方がうまくいく
  2. 業種。建設業のように工事代金の回収まで立て替えが続く事業や、在庫を長く抱える事業と、現金回収が中心の事業では最適解が逆になる。帝国データバンクの集計では2026年上半期の物価高倒産は建設業151件、小売業118件が上位で、立て替えの負担に物価高が重なる会社は特に注意が要る
  3. 経営者の性格。数字を毎週見る経営者と、決算のときしか見ない経営者では、同じ借入額でもリスクがまるで違う

銀行時代の私は「銀行の正解」しか語れず、コンサル時代は「クライアントの正解」を作る側でした。独立して初めて、両方の言い分を並べ、経営者自身に選んでもらう立場になれたのです。

「資金繰り賛否両論」という名前に込めた3つの約束|メリットもデメリットも隠さない

約束1:両論を並べて、経営者が自分で選べる材料を出す

資金繰りの手法には、ほぼすべてに賛否があります。片方だけを語る情報は、経営者を誤らせます。だからこのメディアでは、メリットだけでなくデメリットやリスクも隠さず伝えます。名前を「賛否両論」にしたのは、この姿勢を看板に掲げたかったからです。

佐々木 真帆

ちなみに、同じ名前の日本料理店もあります。料理の話を期待して来られた方、ここでは会社のお金の話をしています。

約束2:数字と一次情報で語る

資金繰りの話は感覚論になりがちです。だからこそ、東京商工リサーチ、帝国データバンク、日本銀行、中小企業庁、日本政策金融公庫といった一次情報を出典付きで使います。

例えば、日本銀行の短観(2026年6月調査)では、中小企業の資金繰り判断DIは+8で、「楽である」と答えた企業が「苦しい」と答えた企業を上回っています。日本政策金融公庫の全国中小企業動向調査(2026年4〜6月期)では、原則従業者20人未満の小企業の資金繰りDIは▲19.9で、前期より悪化した企業が好転した企業を上回っています。

調査対象も質問も違うので、この差を企業規模の格差とは断定できません。それでも、どの数字が誰を見ているのかを確かめずに「中小企業の資金繰り」を語ると、読者を誤らせます。

中小企業庁の2026年版中小企業白書には、2024年度時点で債務超過に陥り、有利子負債が利益に対して重すぎる(EBITDA有利子負債倍率が10倍超またはマイナス)企業が約40万者に上るという推計も載っています。他人事ではないのです。

約束3:相談の「入口」を早める

銀行時代の「あと3か月早ければ」に戻ります。このメディアの最終的な目的は、相談のタイミングを早めることです。2026年版中小企業白書も、経営悪化の兆候が現れた時点で早期に身の周りの支援者に相談することが重要だとしています。

誰にも相談できずにいる方は「誰にも相談できない」経営者の孤独を解消する5つの方法を、すでに融資を断られた方は追加融資を断られた経営者へを先に読んでみてください。

このメディアで読者に届けたいもの|今日からすぐに始められる資金繰りの第一歩

扱うテーマと、まず読んでほしい記事

このメディアでは、次のテーマを扱っています。

  • 資金調達
  • キャッシュフロー管理
  • 危機管理・再生
  • 補助金・助成金活用
  • 経営計画・財務戦略
  • 税務・節税戦略
  • 成長投資・資金活用

借入のバランスに迷っている方には短期借入金と長期借入金の最適バランスから読むことを勧めます。

「これだけは押さえたいポイント」資金繰り表を今日作る

今日からすぐに始められる方法を1つだけ挙げるなら、資金繰り表です。損益計算書が「儲かっているか」を示すのに対し、資金繰り表は「現金がいつ入り、いつ出ていくか」を示します。

  • 月次試算表と預金通帳を用意し、過去3か月分の入金と出金を月ごとに書き出す
  • 3〜6か月先の入金予定と支払予定を書き込む
  • 月末だけでなく、大きな支払日の現金残高がマイナスにならないか確認する
  • 不足が見えたら、その時点で相談に行く。できれば3か月以上前から準備する

様式は自分で作らなくて構いません。日本政策金融公庫の各種書式ダウンロードに簡易版・詳細版の資金繰り表と記載例があります。考え方は中小機構のJ-Net21「資金繰り表を活用する」が参考になります。

相談先は一つに絞らなくていい

相談先は複数あり、それぞれ見ている場所が違います。

  • メインバンク(貸す側の視点で返済の可能性を見る)
  • 日本政策金融公庫(政府系の金融機関。民間と併用できる)
  • 顧問税理士(税務が中心。事務所や契約によっては資金繰り表の作成も支援)
  • 商工会議所・商工会、よろず支援拠点(原則無料の経営相談窓口)
  • 中小企業活性化協議会(返済条件の見直しや再生の相談先)
  • 資金繰りコンサルタント(3〜6か月先の資金の設計と、相談先選びの伴走)
佐々木 真帆

「相談していいレベルなのか」と迷ったら、迷った時点が相談のタイミングです。私はそう思っています。

よくある質問(FAQ)

Q: 「資金繰り賛否両論」はどんな人に向けたメディアですか?

資金繰りに不安を抱える中小企業オーナー、スタートアップ経営者、これから起業する方、金融の知識を高めたい個人の方に向けています。手法の賛否を両方並べ、読者自身が判断できる材料を提供します。

Q: 記事の情報は信頼できますか?誰が書いて誰が確認していますか?

私、佐々木真帆が統計データと現場経験をもとに執筆・監修し、公認会計士・税理士・弁護士など各分野の専門家が内容を確認する体制を編集ポリシーで公開しています。

Q: 資金繰りコンサルタントは銀行や税理士と何が違うのですか?

銀行は貸す側の視点で返済の可能性を見ます。税理士は税務が中心で、事務所や契約によっては資金繰り支援も担います。資金繰りコンサルタントは3〜6か月先の資金の入りと出を設計し、銀行への説明資料づくりまで伴走します。顧問税理士を変えずに併用できます。費用は事務所で幅があるので、契約前に料金体系を確認してください。

Q: 黒字なのに資金が足りなくなるのはなぜですか?

例えば売掛金の回収が数か月先で、仕入や給与の支払いが先に来ると、帳簿上は黒字でも手元の現金が不足するからです。東京商工リサーチが2025年の倒産企業794社を分析したところ、3社に1社超は直近決算で赤字ではありませんでした。対策は資金繰り表で入金と支払いの時期を見える化することです。

Q: 資金繰りの相談はどのタイミングでするべきですか?

「支払いに間に合わないかもしれない」と感じた時点です。銀行融資は申し込みから実行まで数週間かかるため、資金ショートの直前では選択肢が限られます。資金繰り表で3か月先に不足が見えた段階で相談に行くのが理想ですが、すでに3か月を切っていても、すぐに相談してください。

まとめ

銀行で断る側、コンサルで支える側、独立して伴走する側。3つの立場から見えたのは、資金繰りに唯一の正解はないということでした。だからこそ、このメディアは賛否両論を並べ、数字で語り、相談の入口を早めることを約束します。

今日やってほしいことは2つです。資金繰り表を1枚作ること。そして、迷った時点で誰かに相談すること。「あと3か月早ければ」と言われる経営者を、一人でも減らしたい。それが、私がこのメディアを立ち上げた理由です。初回相談は無料ですので、お問い合わせから気軽にご連絡ください。

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この記事を書いた人

佐々木真帆は、資金繰りコンサルタントとして活躍する金融のプロフェッショナルである。大手銀行での融資審査経験から独立コンサルタントとしての現在まで、一貫して「企業の生命線である資金繰り」に焦点を当て、その知見を惜しみなく共有している。

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