9月30日まで、あと18日です。この日を過ぎると、多くの金融機関で紙の手形と小切手が振り出せなくなります。ただし、あなたの取引銀行が9月30日とは限りません。
資金繰りコンサルタントの佐々木真帆です。みずほ銀行の法人営業で7年、中小企業の融資審査と資金繰り相談を担当し、2017年に独立しました。
残りの日数で終わらせるべきことを5つに絞ります。特に小切手で現金を引き出している会社は、今日動かないと間に合いません。
【この記事の結論】手形・小切手の利用終了に備える5つのポイント
- 最終振出期限は「2026年9月30日」とする金融機関が多いため、まず自社の取引銀行の期限を確認してください。
- 小切手で現金を引き出している会社は、「当座キャッシュカード」など代わりの出金手段を今すぐ手配してください。
- 未使用の手形帳・小切手帳は「買戻しの有無と受付期限」を確認し、対象なら期限内に申し込んでください。
- 電子交換所での交換は「2027年3月31日」で終了するため、手元の手形・小切手の期日と銀行の取立受付期限を確認してください。
- 「でんさい・銀行振込」への切替後の入出金日を資金繰り表に反映し、不足する月と金額を銀行に相談してください。

9月30日と2027年3月31日|混同されやすい2つの期限
最終振出期限とは?10月1日以降の手形が支払われない理由
9月30日は「最終振出期限」です。多くの金融機関が設定した、手形と小切手を振り出せる最後の日を指します。全国銀行協会の紙の手形・小切手利用廃止へには、「10月1日以降は、原則として手形・小切手を用いた当座勘定からの支払いができなくなります」とあります。
期限を過ぎて振り出すと、三菱UFJ銀行の説明では「振出期限超過又は交換廃止後の手形等」という事由で0号不渡として返却されます。取引停止処分にはなりません。ただ取引先には不渡りが返り、支払いも済んでいない。相手から見れば、約束の金が入らなかった事実だけが残ります。
佐々木 真帆先日付小切手には例外があります。券面の日付が10月以降でも、9月30日までに振り出したことが明らかなら支払う、という銀行があります。切ってある方は確認を。
2027年3月31日に廃止されるのは「電子交換所での交換」
もうひとつ、2027年3月31日という日付があります。こちらは振出の期限ではありません。全国銀行協会が2026年6月18日に公表した電子交換所の交換廃止時期の決定によると、電子交換所での交換は2027年3月31日の交換分で廃止されます。「手形交換所」という言い方を今も見かけますが、2022年11月に電子交換所へ移っています。
振り出せなくなるのが9月30日、振り出された手形を決済する仕組みが止まるのが2027年3月31日。だから最後に振り出す手形は、満期を2027年3月末までに収める必要があります。
「2027年4月に手形が使えなくなる」が不正確な理由
同じ発表に、もうひとつ大事な一文があります。「手形・小切手が使用できなくなるものではありません」。法律上、手形制度がなくなるわけではないのです。
ただ、銀行にいた立場から言えば、これを根拠に紙を使い続けるのは現実的ではありません。制度が残っていても、決済を引き受ける銀行がなければ回りませんから。2025年の手形・小切手の交換枚数は1,416万枚。その他の証券を含む数字ですが、1979年には4億3,486万枚というピークがありました。
確認1|取引銀行の最終振出期限は本当に9月30日か
取引銀行の期限を全国銀行協会の一覧で調べる手順
自分の銀行がいつまでかは、全国銀行協会の金融機関における手形・小切手の最終振出期限一覧で調べられます。2026年8月31日時点の版で、923の金融機関が統一金融機関番号順に並んでいます。



取引銀行を探して、期限の欄を見る。5分もかかりません。この一覧は定期的に更新されるので、確認した日付を控えておいてください。
期限が9月30日ではない銀行は、どこにどれだけあるか
一覧を数えてみました。9月30日としているのは445機関。923のうち半分弱です。
- 三井住友信託銀行は2027年3月31日
- 静岡県と愛知県のJAは2027年1月31日が多い
- 大阪信用金庫など関西の信用金庫は2026年11月30日
- 東京スター銀行は2026年3月31日で、すでに終わっています
期限の記載がない機関も377ありますが、「まだ決めていない」とは限りません。そもそも当座勘定を扱っていない銀行も含まれます。
影響の大きさで見れば話は変わります。全国銀行協会の調査報告書によると、最終振出期限を設ける予定の金融機関のうち72%が2026年9月末を選んでいます。交換枚数の84%という数字も出てきますが、こちらは期限の日付を問わず、期限を設ける予定の機関全体の割合です。いずれにせよ、自社の銀行がどちらなのかを確かめないことには始まりません。
自社の銀行が11月末でも、取引先の銀行が9月30日なら、その取引先から手形を受け取れるのは9月までです。なお、受け取った他行の手形を自社の銀行がいつまで扱ってくれるかは、これとは別の期限になります。
一覧の日付だけでは足りない|取引店への確認事項
一覧で当たりをつけたら、最後は取引店に電話してください。一覧には「各金融機関からの報告にもとづいて掲載をしています」と注記があり、反映には時間差があります。



銀行員だったから分かることを、ひとつ。支店の営業担当が当座勘定の運用を全部把握しているとは限りません。「当座勘定の担当部署に確認していただけますか」と頼むのが早いです。
電話するときは、この5つをまとめて聞いてしまってください。
- 当社の最終振出期限は何月何日か
- 未使用の手形帳・小切手帳の買戻しはいつまで受け付けているか
- 先日付小切手はどう扱われるか
- 他行を支払地とする手形・小切手の入金扱いはいつまでか
- 当座から現金を引き出す方法と、カード発行にかかる日数
確認2|未使用の手形帳・小切手帳の買戻し期限
買戻しは1枚単位。りそな銀行は1枚220円という実額
引き出しに眠っている未使用の用紙は、期限を過ぎたらただの紙です。ただ、銀行によっては買い戻してくれます。
りそな銀行の案内では、販売当時の定価で1枚220円(税込)。1枚単位で応じてくれます。50枚綴りの小切手帳が1冊まるごと残っていれば1万円を超えます。
銀行ごとに違う受付期間と、すでに終了した銀行
見落とされがちですが、買戻しの締切は振出期限とは別です。銀行ごとにばらばらで、すでに終わったところもあります。
| 銀行 | 買戻しの受付期間 |
|---|---|
| 三菱UFJ銀行 | 2026年2月2日〜2027年1月29日必着 |
| りそな銀行 | 2025年7月1日〜2027年3月31日 |



この2行は公式の案内で確認できたものです。一方で、2026年6月末で受付を終えた大手銀行もあります。振出期限が9月30日でも、買戻しが9月30日までとは限りません。
当座預金を解約する前に、買戻しを済ませる順番
手形をやめるなら当座も整理しよう、と考える方は多いはずです。順番を間違えないでください。買戻しの代金は当座預金に入金されるので、先に口座を閉じると受け取れません。
数千円から数万円の話なので、面倒に思われるかもしれません。ただ私は、これは在庫と同じだと思っています。未使用の用紙が何枚残っているか把握している会社は、ほとんどありませんから。
確認3|小切手で現金を引き出していた会社の出金手段
当座キャッシュカードの発行に必要な1〜2週間
5つのうち、いちばん急ぐのがこれです。
小切手を支払いではなく、現金を引き出すために使っている会社があります。経理担当が銀行へ行き、小切手で現金化して、現場の日払いや小口現金に充てる。銀行にいた頃、この使い方をしている中小企業を何社も見てきました。
厄介なのは、銀行の告知が「振り出す側」への案内として読まれることです。支払いに手形を使っていない会社は、自分には関係ないと思ってしまう。ところが小切手が切れなくなれば、現金の引き出し方そのものが変わります。
当座キャッシュカードは、申し込みから発行まで1〜2週間ほどかかります。三菱UFJ銀行なら手数料は1,100円(税込)で、「提示がいただけない場合は、払い戻しを行いません」と明記されています。9月30日に気づいても間に合いません。
払戻請求書での出金に切り替えるときの実務
当座預金そのものがなくなるわけではなく、出金の手段が変わるだけです。
全国銀行協会の資料には「金融機関によっては、小切手以外の方法(払戻請求書や法人キャッシュカード等)によって、出金を可能とする施策を実施」とあり、96%の金融機関が実施済みか実施予定です。納税で小切手を使っていた会社は、e-TaxやeLTAXでの電子納付に移せます。
9月中に済ませたい小口現金・日払いの組み替え
現金の引き出し方が変わるのは、社内のお金の回し方が変わるということです。引き出すまでのリードタイム、誰が銀行へ行くのか、承認のフロー。経理が1人の会社だと、手が回らないまま10月を迎えかねません。
現金が要る場面を書き出して、振込に替えられるものと、どうしても現金でなければ回らないものに分ける。振込に替えるなら、相手の口座情報を集めるところからです。
確認4|受け取る側に効いてくる入金日のずれと手数料
他行支払地の手形・小切手|預金入金扱いの終了と手数料
ここまでは振り出す側の話でした。受け取る側にも締切があります。
他行を支払地とする手形・小切手の「預金入金扱い」が、順次終わっています。りそな銀行は2026年3月31日で受付を終了しました。これまで預金入金扱いで処理できたものが代金取立になる。つまり資金になる日が後ろへずれます。三菱UFJ銀行の代金取立手数料は、電子交換で880円、個別取立で1,100円です。



資金繰り表を作る立場から言うと、入金日が数日ずれるだけで月末は危なくなります。審査をしていた頃、入金予定日の後ろ倒しで当座貸越の枠を超えた会社を見ました。決算では黒字の会社でした。
受け取った小切手の呈示期間|振出日の翌日から10日間
小切手の支払呈示期間は、振出日の翌日から10日間です。末日が銀行の休業日なら繰り越されるので、9月30日に振り出された小切手なら10月13日(火)が末日になります。ただしこれは銀行へ持ち込む期限ではありません。取立には処理の日数が要ります。月末に受け取って、引き出しに入れたまま忘れる。いちばん起きやすい事故です。
手形の呈示期間は支払期日を含む3営業日。2027年3月末が満期の手形は、交換の廃止と呈示期間が重なるので綱渡りになります。
10月以降に紙の手形や小切手を出されたら、その場で受け取らず、支払方法の変更をお願いしてください。すでに受け取ってしまった分の扱いは金融機関の判断によるので、取引店に相談を。
手形割引枠が消えたあと、資金調達をどう組み替えるか
手形割引で資金繰りを回してきた会社は、その手段を失います。実務では、ここがいちばん痛い部分だと思っています。
代わりになるのは電子記録債権、いわゆる「でんさい」です。割引もできますし、分割して譲渡できるので、必要な額だけ回せる点は紙の手形より柔軟です。ただ、受け取る側も利用者登録をしていないと使えません。取引先の登録状況は、でんさいネットのお取引先でんさい利用状況検索サービスである程度あたりがつきます。
ただし法人だけが対象で、掲載されていない先もあるので、最後は取引先に直接聞いてください。使えるようになるまでの日数は銀行によって違います。
そして銀行との交渉です。手形割引の枠を、当座貸越の枠か電子記録債権の割引枠へ振り替えられないか。「枠の付け替え」として稟議に乗せやすい話ですが、審査には時間がかかります。
確認5|切替後の資金ギャップの試算と、最後の手形の満期日
支払サイトが短くなると、いくら足りなくなるかの概算方法
手形をやめるのは、支払いが早まるということです。その分の現金を、先に用意しなければなりません。ざっくり出すなら、この式で足ります。
短縮する日数 ÷ 30 × 月間の仕入額
90日サイトの手形を月末締め翌月末払いの振込に替えると、支払いは60日前倒しになります。月の仕入が1,000万円なら、60 ÷ 30 × 1,000万円で2,000万円。これだけ余分に要る計算です。移行した月には、手形で先送りしていた支払いと新しい条件での支払いが重なります。
次は仕入先別・月別の資金繰り表です。年間の合計では足りていても、特定の月だけ足りない。そういうパターンがほとんどですから。
銀行に相談するなら、「手形が廃止されて困っています」ではなく「何月に、いくら足りません」という数字を持っていってください。話の進み方がまったく違います。稟議には時間がかかるので、10月からの移行に備えるなら9月中です。
最後に振り出す手形の満期日をどこに置くか
駆け込みで振り出すときの落とし穴です。2027年4月以降を満期とする手形は、多くの銀行が取立の受付をすでに止めています。三菱UFJ銀行もそのひとつです。最後に振り出す手形は、満期を2027年3月末までに収めてください。
期日ぎりぎりの設定も避けたほうがいいです。三菱UFJ銀行の場合、他行を支払地とするなら「支払期日まで4営業日以上の期間がある」ことが取立の条件で、店舗によっては6営業日以上を求められます。
すでに手形払いを禁じている取適法(2026年1月施行)
9月30日とは別に、もうひとつ期限があります。というより、すでに過ぎています。
2026年1月1日に施行された中小受託取引適正化法、通称「取適法」です。中小企業庁のミラサポplusに載った手形払い禁止など「取適法」がもたらす変化では、「支払手段として、手形払いを禁止」と明記されています。対象となる取引では、支払期日を給付の受領日から60日以内に定めることとされ、支払が遅れた場合は受領日から60日を経過した日以降について年14.6%の遅延利息がかかります。
ただし委託の内容や企業の規模で適用の有無が決まり、建設工事の下請負のように対象外の取引もあります。まず自社の取引が対象かどうかを確かめてください。対象なら、9月30日を待つまでもなく、すでに手形では払えません。
取引先へ条件の変更を切り出すとき、「資金繰りが苦しいのか」と思われたくない経営者は多いです。そういうときは法令を理由にしてください。手形の交付が支払遅延にあたる以上、条件の変更は相手を守るためでもあります。
よくある質問
Q: 9月30日を過ぎて手形を振り出してしまったらどうなりますか?
原則として当座勘定から支払われず、0号不渡として返却されます。取引停止処分にはなりませんが、支払いは完了していません。気づいた時点で取引先へ連絡し、振込など別の方法で払い直してください。
Q: すでに振り出した、期日が10月以降の手形はどうなりますか?
期限内に振り出していれば、期日が10月以降というだけで無効になるわけではありません。ただし満期が2027年4月以降の手形は、多くの銀行が取立の受付を止めています。満期が2027年3月末を超えていないか確認してください。
Q: 当座預金は解約したほうがいいですか?
当座預金自体はなくなりません。小切手での出金ができなくなるだけです。決済用預金として全額保護される点も、法人には残す理由になります。買戻しを申し込んでいるなら、代金が入金されるまで解約しないでください。
Q: でんさいは取引先が登録していなくても使えますか?
使えません。受け取る側も利用者登録が必要です。登録状況はでんさいネットの検索サービスで調べられます。これから登録を依頼する段取りだと10月に間に合わないことがあるので、その場合は振込へ切り替えるのが現実的です。
Q: 手形をやめると印紙代はどれくらい浮きますか?
手形は印紙税の課税文書です。国税庁の約束手形又は為替手形によると、手形金額500万円なら1枚1,000円。月10枚で年間12万円になります。電子記録債権は紙の文書を作らないので印紙税はかかりません。なお小切手はもともと課税文書ではないので、こちらは元から不要です。
Q: 取引先が手形でしか払ってくれない場合はどうすればいいですか?
その取引が取適法の対象なら手形の交付が禁じられているので、法令を根拠に切り出すのが角が立ちません。まず自社の取引が対象かどうかを確かめてください。相手の取引銀行の期限が9月30日なら、そもそも振り出せなくなります。全国銀行協会の一覧で相手の銀行を調べてから話すと、交渉が早く済みます。
まとめ
5つを振り返ります。取引銀行の期限を一覧で確かめる。未使用の用紙の買戻しを済ませる。現金の引き出し手段を手配する。受け取る側の入金日のずれを見込む。切替後にいくら足りなくなるかを試算する。
今日中に動いてほしいのは3つ目です。カードの発行に1〜2週間かかるので、ここだけは月末に気づいても間に合いません。
手形と小切手の廃止は、事務手続きの変更のように見えます。でも中身は、お金が出ていく日と入ってくる日が変わるという話です。10月以降の資金繰り表を一度作り直してください。足りない月が見つかったら、銀行へ相談するのは9月中です。






